【2015 International CES】
東芝ブースで見るiPhone用「TransferJet」アダプタ
(2015/1/8 17:22)
東芝はさまざまな製品・ソリューションを展示しているが、スマートフォン関連では、近距離無線通信技術「TransferJet」の製品をデモ展示している。
TransferJetは3cm程度という超至近距離で利用する通信技術。対応機器同士を近づけるだけで通信が開始されるという簡単な使い勝手が特徴。NFCにも似ているが、TransferJetは現行の規格でも最大375Mbpsという高速通信が可能となっていて、写真や動画といったメディアファイルの転送での利用が想定されている。これまでにもソニーのデジタルカメラなどで採用例がある。
規格としては新しいものではなく、東芝もこれまで、さまざまなイベントに出展し、製品も投入。たとえば2013年12月にはスマートフォンで使えるmicroUSBアダプタも発売しているが、普及には至らず、採用製品も限定的だった。しかし2015年は製品の拡充と洗練により、「今年こそ」という意気込みで本格的な普及を目指していくという。
ブースではCES会期の前々日に発表されたばかりの、iPhone/iPadで利用できるLightningアダプタ製品と、従来よりも小型化したmicroUSBアダプタ(スマートフォン向け)製品、従来より小型化したUSBアダプタ(パソコン向け)製品、さらに開発中のSDカードタイプの製品が実機で展示されていた。
TransferJetは、USBストレージとして認識させることも規格上は可能だが、現在のラインナップはすべて、指定ファイルを一つずつOBEX形式で転送する方式を採用している。ファイル転送の手順としては、まず転送元となるスマートフォンのアプリ上で送信したいファイルを選択し、そのファイルを転送待機状態とする。一方、受信する側、つまり転送先のスマートフォンのアプリ上では受信待機状態にする。この状態で転送元と転送先のTransferJetアダプタを接近させると、自動で通信が開始され、ファイルが転送されるという流れ。転送速度は非常に高速で、実機デモではフルサイズの写真や動画でもほぼ瞬時に転送できていた。初めて転送する機器同士では、初回のみ認証が必要だが、それ以降は送受信の待機状態で近づけるだけで転送が完了する。
SDカードタイプの製品の場合は、SDカード内に保存されているすべての写真・動画が転送待機状態となる。デジカメでの利用が想定されていて、電源の入ったデジカメに挿入した状態で、たとえばパソコンにTransferJetアダプタを取り付けて、受信待機状態にした上で近づけると、未転送の写真・動画が連続して転送されるという仕組み。Wi-Fi内蔵のSDカードやデジカメに比べると、アクセスポイントの切り替え操作などが不要で、とくにiOS機器では非常に簡単な写真転送方法となっている。
iPhone/iPad向けのLightningアダプタ製品はアップルによる周辺機器認証(MFi認証)を取得していて、3月までの発売を目指しているとのことだ。価格は3000~5000円程度を想定しているという。ファイルの送受信には専用アプリを利用するが、たとえば写真は標準のカメラロールに保存されるようになっている。
Androidスマートフォン向けのmicroUSBアダプタ製品やパソコン向けのUSBアダプタ製品は発売済みだが、さらに小型化した新モデルが今後発売される。日本と中国以外ではこの新モデルが初投入になる。
SDカードタイプの製品は6月までの発売を目指しているという。まずは16GBのモデルの発売を予定していて、通常のSDカードから少し高い程度の価格帯が想定されている。
また、ブースでは既存のスマートフォンをベースに改造し、TransferJetを内蔵させたプロトタイプモデルが参考展示されていた。いまのところ、TransferJet内蔵のスマートフォンは存在しないが、今年中に少なくとも1機種のスマートフォンがTransferJet内蔵で登場する見込みだという。TransferJetは、SDIOの標準規格にもなっていて、TransferJetの業界団体では、今後もさまざまなメーカーのスマートフォンやデジカメなどでの採用を働きかけていく。
このほかにも東芝ブースではCEATECでも展示されていた単眼・透過型のヘッドマウントディスプレイが展示されていた。現状では主に業務用途向けの製品化を目指している。仕組みとしてはシンプルで、レンズが正面からみると短冊状、断面を見るとぎざぎざになっていて、斜め横から照射された映像が直角に反射するようになっている。ヘッドマウント部分はディスプレイのみで、別途モバイルコンピュータを有線で接続して利用する。
このほかのウェアラブル製品としては、国内販売中のリストバンド型アクティビティトラッカー「Actiband」や貼り付け型のセンサー「Silmee」なども展示されていた。Silmeeは一般向けの製品ではないが、心電位や心拍、動き、体温の測定が可能で、現在のところ開発者向けに販売されている。主に医療ソリューションでの利用が想定されているという。
Windowsのノートパソコンやタブレットも展示されている。最新モデルとしては、日本国内で発売したばかりの10インチタブレットの「WT10PE-A」(日本モデル名「dynabook Tab S80」)と8インチタブレットの「WT8PE-B」(日本モデル名「dynabook Tab S68」)も展示されていた。
この2モデルは、ワコムと共同開発した「Wacom feel Active Electrostatics Pen technology」(アクティブ静電結合方式)という技術を使った「TruPen」というスタイラスペンに対応しているのが特徴。このTruPenは、指のタッチを検出する通常の静電容量式タッチパネルセンサを流用し、専用のコントローラーチップでペン先を検出する。ペン先が細く、一見するとGALAXY Noteシリーズなどが採用する電磁誘導式の近いように見えるが、電磁誘導式と違ってペン用のパネルセンサは追加が不要で、本体の薄型化・軽量化とコストの低減が可能だという。一方でペンと指の操作は区別されているようで、対応アプリでは指とペンで別の操作が割り当てられていた。ペンには電源が必要で、同梱されるペンは動作に単六乾電池が必要となる。この技術は今回が初採用で、汎用のペンなどは登場していない。