本日の一品

究極の安さを求めIP電話アプリ「SMARTalk」を使ってみた

フュージョン・コミュニケーションズの「SMARTalk」を使う

 もともと頻繁に長時間電話するようなことはあまりないのだが、だからこそ通話料金は可能な限り安く上げてゼロに近づけたい。基本料金に無料通話分が含まれなくなってしまったスマートフォン時代は、通話30秒あたり21円が3キャリアで共通する料金設定。1回あたりの通話料金はそれほど高く見えなくても、1カ月トータルでみたらびっくりするような料金が請求されることだってある。まさに“チリツモ”。この“チリ”をもっと細かくできないだろうか……といった時に“IP電話”という選択肢を考えることになる。

 IP電話の特徴は今さら言うまでもないかもしれないけれど、一般的には通常の電話回線ではなく、インターネットを介したデータ通信によって通話できるようにした電話サービスだ。IP電話同士であればデータ通信しか使わないので多くの場合通話料金はかからず(無料ではないIP電話もある。また、厳密に言えば無料IP電話でもパケット通信料が発生するが、基本的にパケット定額制のプランに加入していることがIP電話を利用する前提だ)、携帯電話や固定電話宛ての電話も通常より安価になるのがメリットとなっている。

 逆にデメリットとしては、インターネットを経由するので通信環境やインターネットの混雑状況で通話品質が左右されやすい点。050から始まる電話番号が新たに割り当てられ、本来の携帯電話番号から変わってしまうことも、考え方によっては「1つ番号が増える」という意味でメリットと捉えられなくもないが、いつもとは違う番号が相手に伝わることに不都合を感じることはあるかもしれない。しかし、絶対的な安さに結びつくのであれば、これくらいのデメリットは許容できる人も多いはずだ。

基本料金はタダ。「とりあえず」でゲットできるお手軽050番号

 そんなIP電話サービスは今や乱立状態にある。さまざまな料金体系やサービス内容のIP電話が各社から提供されていて、どれを選ぶかは判断に迷う。しかし、その中でもフュージョン・コミュニケーションズの「SMARTalk」は、基本料金が無料という点でかなり引きが強いサービスだろう。他のIP電話サービスでは数百円程度とはいえ月額基本料が必要になる場合が多く、通話しなくても支払わなければならないのは、できるだけ安くしたい人にとってはややネックになる。

「SMARTalk」アプリのダイヤル画面
ワンタッチで相手に電話をかけられる短縮ダイヤル機能もある
同じ日の同じ相手との通話はひとまとまりになって表示される履歴機能
録音機能も用意。万が一聴き取りにくかった時でも後で確認できる

 電話をガンガン使う人は数百円の基本料金の元を取れるかもしれないけれど、そうでないなら料金シミュレーションをしてから……というひと手間が必要になりそう。「SMARTalk」はその点何も考えず、「とりあえず050番号を1個持っておくか」みたいな軽い気持ちで申し込めるのがいいところだ。050番号は今後どんどん消費されていって足りなくなるのでは? という見方もあるようだから、今のうちにゲットしておくと何かいいことがあるかもしれない、と考えるのは行き過ぎだろうか。

通信回線の種類ごとに使用するコーデックを設定。“有効なコーデック”の一番上にあるコーデックが使われるようになっている

 さて、その「SMARTalk」を実際に試してみたのだけれども、何がいいって、回線の種類に応じて通話品質を変更できるところがいい。いきなりちょっと面倒そうな設定方法の話になってしまうが、設定画面の「SIPアカウント」から使用中のアカウントの電話番号をタップし「詳細設定」を選ぶと、「Wi-Fi用のコーデック」と「3G/LTE用のコーデック」という2つの設定項目がある。つまり、ここでそれぞれの接続時における音質を変えることができるというわけだ。Wi-Fi時は高音質な“G.722”に、3G/LTE時はレスポンスを重視して“iLBC”に、といった具合にすれば、通常の電話より品質が劣るとされているIP電話でありながらかなり良好な音質で通話できる。

必ず無料通話できる“裏ワザ”もある

 “できるだけ安く”ということであれば、やはりIP電話同士で無料で通話できるに越したことはない。しかしながら、よく電話する相手がIP電話を使っているとは限らないし、どこへ電話するにもだいたいが固定電話か通常の携帯電話になってしまう。親しい友達には「IP電話使おうぜ」と事前に申し合わせることができるとしても、いつでもどこでもIP電話同士、みたいなことにはなりにくい。ところが「SMARTalk」だと、多くの人がそれなりに電話するであろう場面で必ず無料通話になるシチュエーションがある。それは、「食べログ」掲載店に予約電話を入れる時だ。

 「食べログ」のWebサイトにスマートフォンでアクセスすると、各お店のページに“予約専用TEL”が掲載されている。いずれも050から始まっているのだが、これは「SMARTalk」のみ無料となる電話番号。IP電話を含め、「SMARTalk」以外からの電話は通話料金がかかってしまうのだ。「そんな頻繁に予約しないよ!」というツッコミはあろうかとは思うが、それでもこれからの宴会シーズン、予約しようと思ってもなかなか席を確保できず、あちこちのお店に何度も電話する、ということはないとは言えない。宴会予約するなら「SMARTalk」で「食べログ」を使うのが賢いやり方、というわけである。

 ちなみに「SMARTalk」のスマートフォンアプリ上では、無料通話先に電話をかける際は“Free”と表示され、無料通話できる相手かどうかがすぐにわかるようになっている。ちょっとした工夫ではあるけれど、電話をかける前にいくらでも長電話できることがわかると、安心感はけっこうある。

食べログの各お店ページにある予約専用TELから電話すれば、常に無料!
電話をかける前に無料通話先であることに気づける
1週間とちょっと使ってこの値段。通常の電話であれば1000円くらいにはなっていたはずだ

 ところで、IP電話といえば、気になるのが通話料金。「SMARTalk」は国内の固定電話宛てと携帯電話宛て、いずれも30秒あたり8.4円となっている。通常の電話料金より12.6円安いだけでなく、他社IP電話サービスでは携帯電話宛てのみやや高額だったり、1分単位での課金だったりするので、それと比べてアドバンテージがあると言えるだろう。海外に対しては消費税がかからないため、さらに安価な30秒あたり8円ちょうど。国内だけでなく海外によくかける人にとっても、「SMARTalk」は使いやすいIP電話サービスではないだろうか。

IP電話と気づかれない高音質

 音質がどうかと問われると、「通常の電話と遜色ない」とは正直なところ言いにくい。通信の状況によって相手の声が一瞬ひずんだり、タイムラグがわずかでも発生する場合があるのは、「SMARTalk」に限らずIP電話の宿命ともいうべきものだ。けれど、通信環境に応じて音質を変えられることもあり、Wi-Fi環境でも、外出先の3G環境でも、今のところ全く問題なく会話できている。相手側も、「言われてみれば、ちょっといつもと違うとは思った」という程度の感じ方だったようだ。さすがに大事なビジネスの相手だと、途中で万が一切れたり、言葉の端々を聴き取れなかったりした時に深刻な問題に発展する可能性があるので、いきなりIP電話をかけることはできないだろうが、そこまで重要度の高くない用件については積極的に「SMARTalk」を使っていきたいと思える。

 普段と違う電話番号になる点については、初めて「SMARTalk」で電話する相手だと「もしかしたら電話を取ってくれないんじゃないか」と心配していたのだが、意外にもすんなり取ってくれる人が多く杞憂に終わったようだ。仕事相手よりも、むしろ家族や両親の方が不審に思ったのか取ってくれない割合が高かった。連絡を取りやすい身近な相手には、あらかじめIP電話番号を伝えておくのが無難そうだ。

 唯一のトラブルは、「SMARTalk」とは関係ない部分が原因で、外出先で発信しにくくなる現象に何度か遭遇したこと。使用している端末がドコモ端末なのだが、Wi-Fiをオンにしていると、街中に設置されているdocomo Wi-Fiに自動で接続されてしまい、しかもそのWi-Fiが通信しにくいケースがかなり高い割合であって、いざ「SmarTalk」で発信しようとしても全くつながらないのだ。IP電話に限らずデータ通信もストップしてしまうわけで、本当に困る。こうなるともうWi-Fiをオフにして、3G/LTE環境で使った方がずっと快適。ドコモには公衆Wi-Fiを早急に本気で整備していただくとして、それまではアプリなどで外出時のみWi-Fiをオフにできるような仕組みを活用するとよさそうだ。

製品名提供元購入価格
SMARTalkフュージョン無料

日沼諭史