お手頃ドキュメントスキャナ「ScanSnap S1300」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


お手頃ドキュメントスキャナ、ScanSnap S1300

 2009年の11月21日に発売されたPFUのScanSnap S1300(以下、S1300)。発表当初からちょいと気になっていたハードウェアなので試用してみた。

PFUのScanSnap S1300。コンパクトでUSBバスパワー駆動も可能なドキュメントスキャナだ。実勢価格には幅があり、2万1000円~2万5000円程度。

 この上位機種にあたるScanSnapS1500(以下、S1500)を愛用中の俺。ScanSnapにより紙書類の電子化を推進しまくり中である。現在ではその効果もかなり出てきて、S1500により拙者の部屋の空間がずいぶん広くなった気がする。

 で、今回試したS1300は、上記S1500の弟分的存在。上位機種となるS1500よりもスキャン速度は劣るが、コンパクトで扱いやすそうで、しかも実勢価格もグッと安価──S1500は3万7000~4万5000円くらいで売られているが、S1300は2万1000円~2万5000円くらいで買える。

S1300を正面から見たところ。シンプルでスッキリしたデザインですなフタをパカッと開けば電源が入り、スキャンを始められるオートシートフィーダー部のトレイはこのように段階的に開く。名刺サイズ~A4/レターサイズまでの原稿をセットしてスキャンできるのだ

 上位機種S1500と下位機種S1300にはけっこーな価格差があり……やっぱり安いほーは使えないのかな? 的な疑問もわくわけだが、ともかく、2万円台で手に入るお手頃価格のドキュメントスキャナってコトで、実用性はどんなモンなのかを見てみたい。

S1300とS1500、それぞれどんなユーザー向け?

 えー、イキナリ、手持ちのS1500と、このS1300を使い比べた俺的結論を書いてみたい。S1500とS1300、それぞれどんなユーザー向けか、みたいなコトをひとつ。

 まず、圧倒的なスキャン速度を誇るS1500は、日常的かつある程度多量のドキュメントをスキャン&電子化したいユーザー向けですな。単純に、多量の紙書類を短時間にスキャンできるからだ。

PFUのScanSnap S1500。おなじみ超ッ速のドキュメントスキャナですな。実勢価格は3万7000~4万5000円くらい上部のフタをパカッと開けばすぐスキャンを始められる。A4サイズ原稿を毎分20枚(40面)のスピードで電子化可能機構自体も扱いやすく、A4などの大きめの書類でも、名刺やレシートといった小さな原稿でも快適にスキャンできる。同時に置ける原稿は50枚(紙質にもよる)

 S1500の場合、エクセレント以外の読み取りモードで毎分20枚(両面同時スキャンなので40面)をスキャンでき、A4サイズ原稿を50枚までセットできるので、大量の紙書類電子化によく向く。ちなみに、読み取りモードがエクセレント(最高画質)だと毎分5枚(10面)となるが、それ以下の読み取りモードでも「紙書類の内容を画面上で確認できるレベルの電子化」において十分高画質だと思う。

 たとえば、各種ショーなどに行くたびに多量のパンフ/カタログ/資料をもらうので机の周りが書類だらけ、捨てるには惜しい雑誌や書籍が多量にあって部屋圧迫、毎日なーんか書類が多々届いちゃう的業務など、たまりまくる紙書類をサクッと電子化したいというユーザーには“絶対S1500がオススメ”と言えよう。

 てか、そういうユーザーがS1300を買っても、結局S1500に買い換える結果になると思う。S1300は、S1500のように多量の紙書類をサクサク電子化するというのには向かないからだ。

 S1300の(A4サイズ原稿の)スキャン速度は、最速でも毎分8枚(16面)。数字だけ見るとS1500の半分程度の速度ってイメージだが、実際の使用感としてはもっと遅い。

 たとえば拙者の場合、通常は読み取りモードをスーパーファイン(カラー/グレースケール300dpi、白黒600dpi相当)にしている。S1500はこのモードで毎分20枚(40面)スキャンできる。が、S1300の場合はこのモードだと毎分4枚(8面)、USBバスパワー駆動だと毎分2枚(4面)しかスキャンできない。

 ぶっちゃけた話、S1500のスピードを知っている者にとって、S1300のスキャン速度はヤケに遅いのであり残念であり脱力モンと言える。ハッキリ言って、多量の紙書類をサササッと効率良く電子化したいという人には、全然オススメできないS1300である。

 が、そうでないユーザーには、いろいろオススメできる点があったりするS1300。使い方によってはS1300がベストチョイスとなる可能性が多々あるので、以降はそのあたりを少々。

S1300の安さ

 S1300の魅力は、その実勢価格。前述のとおり、2万1000円~2万5000円程度で買える。上位機種S1500(実勢価格3万7000~4万5000円くらい)よりずいぶん安い。

 スキャナ、という単純な観点からは、2万円少々する製品を「安い」と言うには違和感がある。フラットベッドスキャナなら1万円以下のものもあるし、2万円出せば写真画質にも十分対応するし、みたいな。しかし、S1300の場合、ドキュメントを電子化するのが非常にラク。フラットベッドスキャナでの作業と比べたら、天と地ほど効率の差がある。

 たとえば複数ページのドキュメントや名刺をスキャンする場合。フラットベッドスキャナの場合、1枚毎の原稿のセット~スキャンの繰り返しになる。スキャン後のファイル整理やOCRなんかの手間も要りますな。オートシートフィーダー付きのフラットベッドや複合機なら手間が少し減るものの、一般的な価格帯の製品だとスキャンスピードはあまり求められない。

 S1300などScanSnapシリーズの場合、複数枚の原稿をセットし、Scanボタンを押せばいい。S1300だと、前述のとおりS1500のようなスピードはないものの、常識的な読み取りモード(スーパーファインやファイン)でA4ドキュメントの両面を毎分4~6枚スキャンできる。コピー用紙のような原稿なら一度に10枚セットできることも合わせて、まずはスキャン時の手間が少なくて済む。

 そしてスキャン後もラク。たとえば名刺をスキャンした場合、スキャン結果が付属ソフトの名刺ファイリングOCR V3.1(Windows)により処理される──名刺の企業名や名前や連絡先などを文字認識し、名刺画像データとともにアドレス帳として保存してくれる。名刺ファイリングOCR V3.1で保存されたデータはOutlookの連絡先にワンクリックで登録することも可能だ。

名刺をスキャンする例。S1300のフタを開き、名刺をセットし、Scanボタンを押せば自動的にスキャンされる。もちろん複数枚(名刺の厚さにより増減)を連続してスキャンすることができるスキャンされた名刺は、(指定により)自動的に名刺ファイリングOCRで処理される。このように、名刺上の文字列を自動的に文字認識/データ化し、アドレス帳のように管理してくれるアドレスデータはMicrosoft Outlookなどへワンクリックで転送できるほか、各種形式でエクスポート可能だ

 名刺以外にも、ScanSnap Organizer V4.1(Windows)などによってスキャンしたドキュメントをサムネイル表示で管理できたり全文検索可能なPDFファイルへ変換できたりと、S1300本体+付属ソフトがナニカと実用的だ。要は、手間の少なさ。原稿を乗せて、Scanボタン押して……後はソフトが適宜扱いやすい状態にしてくれて、容易に管理できる、と。

ScanSnap Organizer V4.1の表示例。S1300でスキャンした結果(PDF)を管理/閲覧できるソフトウェアだ。好きな大きさでPDFファイルをサムネイル表示できるのも便利選んだPDFを自動的にポップアップ/拡大表示させることもできる。もちろん、各ウィンドウは任意のサイズにできるサムネイルをダブルクリックすると、ScanSnap OrganizerビューアというソフトウェアによりPDFの内容を確認/編集することができる。もちろん、Adobe Acrobatで開くことも可能

 文書の電子化におけるS1300本体の実用性と、付属ソフトの利便。こういう実使用上の容易さラクさまで含めて、2万円チョイで買えるドキュメントスキャナことS1300は、やっぱり安いと思えるのだ。

 なお、S1300は2種類ある。ひとつはScanSnap Organizer V4.1や名刺ファイリングOCR V3.1など基本的なソフトが付属するベーシックなモデル(型番FI-S1300)。もうひとつが、このベーシックなモデルに「楽2ライブラリパーソナル」を追加したセットモデル(型番FI-S1300-SR)となる。

 また、S1300のベーシックモデルはWindows/MacOS両対応だが、MacOSではScanSnap Organizerや名刺ファイリングOCR、あるいは楽2ライブラリパーソナルは使えない。MacOSで使うゼとS1300を購入する場合、付属ソフトウェア的にけっこー損した感が漂うかもしれないので、事前にココココを調べたほうがいいだろう。

毎日のチョイ使いならS1300

 前述のような“紙ドキュメントを電子化するときの利便”は、ScanSnapシリーズならではのものだ。ただ、再三言うが、S1300はスキャンが遅い。一度の作業でスキャンする枚数が30~40枚になったりすると、かな~りストレスがたまる。もーイヤっ!! てな気分。

 だが、一度のスキャンが10枚未満なら、まあ許せるって感じ。原稿をセットしてお茶を一服……的な時間を過ごせばスキャン完了。付属ソフト上で電子化されたドキュメントを手軽に扱えるようになっている。

 というわけで、やはりS1300は、そーんなには多量にはスキャンしないユーザーに向く、と言えよう。イメージとしては、フラットベッドスキャナで行うにはカッタリイが、S1500で高速&多量にスキャンするほどではない、てなユーザー向けですな。

 具体的には、どうだろう、たとえば毎日2~3枚の名刺、1~2枚の領収書類、5~6枚程度の事務書類、そのほか5~6枚程度のドキュメントが発生する人!? 1ヶ月間/20日で単純計算すると、名刺が40~60枚、領収書が20~40枚、事務書類が100~120枚、そのほか紙書類が100~120枚。少なく見積もって、1ヶ月間で紙が260枚くらい出る。既に捨てたくなる量/枚数だが、四半期ほっとくと1000枚オーバー。1年経てば絶望的な枚数の紙が山積み!!

 でもS1300で毎日チョッと処理すれば──名刺3枚、領収書2枚、事務書類6枚、ほか6枚、と多く見積もっても17枚のスキャンでペーパーレス化を行える。S1300のスピードでも、その程度の枚数/頻度なら十分快適に電子化できまくりと言えよう。

 そんなふうなレベルのチョイ使いには、むしろS1300が向くように思う。もちろん上位機種のS1500のようにちょっとスキャンするにも超高速のほーが快適なわけだが、ぶっちゃけ、S1500、机上に出しとくにはデカめ。邪魔な感じ。

 一方、S1300は非常にスリムでコンパクト。フットプリントはテンキーレスキーボードのキー部分よりもさらに小さく、フタを閉じたときの高さもペン立て未満。机の端に出しっぱなしにしておいてもいいかナ、といった存在感だ。また、さらにスキャン速度が落ちるものの、USBバスパワー駆動(USBポート2基使用)も可能。ハードウェアとしての小ささシンプルさも、日常使いによく向くと思う。

拙者が愛用中のS1500と、よりコンパクトなS1300を比べたところ。S1300のサイズは幅284×奥行き99×高さ77mm。省スペースなのだS1300の背面にはUSBポートとACアダプタ用端子がある。USBポート側にUSBケーブルを、ACアダプタ用端子側に付属の電源供給用USBケーブルを接続すると、USBバスパワー駆動で使えるようになる付属のACアダプタは小型。S1300本体は小型であり質量も約1.4kgと重くはないので、出張先に持っていってのモバイル利用もアリかもしれない。

 てな感じのS1300。使っていて感じた難点は……やはりそのスキャン速度。これは拙者がS1500ユーザーだから「ScanSnapとゆーモンは超ッ速のドキュメントスキャナなのである」というアタマがあるんですな。S1300のゆっくりしたスキャンを見ると「きっともっと速いのを作れたハズ!!」なんて根拠なく考えたりしてしまう。

 ただ、ScanSnapシリーズを使ったことがないなら、これまで再三書いてきた“S1300のスキャンの遅さ”はあまり気にならないor感じないと思う。率直なところ、S1300はフラットベッドスキャナよりずっと高速だしスキャン時~スキャン後の手間も僅少。そういう観点で、価格的に手を出しやすいS1300はドキュメントスキャナ入門機としても良さそうに思える。

2010/1/25 06:00