スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」

デジカメでモノクロ赤外線写真!

ケンコー「PRO1D R72」フィルターでお手軽に撮影♪

赤外線写真をデジカメで!?

 唐突に「デジカメで赤外線写真って撮れるのかな?」と思いました。太陽光などの光源には多かれ少なかれ赤外線が含まれますが、赤外線写真とは「被写体が反射などした赤外線のみを捉えて(モノクロの)濃淡として表現した写真」です。フィルム式カメラ時代には「赤外線フィルム」という「赤外線領域のみに感度があるフィルム」があり、赤系フィルターなどとともに使って撮影すると、非日常的かつ超ハイコントラストな写真が撮れました。

 たとえば風景を撮ると、空に浮かぶ雲や木の葉などが真っ白に写ります。雲や木の葉(葉緑素)が赤外線をよく反射するからです。また、赤外線は水に吸収されたり空中をあまり拡散せずに進む性質があるので、湖や海、雲のない空の部分はまっ黒に写ります。なので「凄くハイコントラスト」に見えがちなんですな。草は木の葉が真っ白く写るあたり、とても幻想的。赤外線写真では、そんなふうな普段は見られない光景が楽しめました。

 フィルム式カメラ時代はまずまず知られていた赤外線写真ですが、さて、デジカメでは撮れるのでしょうか? アレコレ調べた結果、わりと簡単に撮れることがわかりました。どう撮るかは後述するとして、まずはどんな写真が撮れるのかザッと見てみましょう。

 以下の写真は、左が普通に撮った風景写真で、右が同じ風景を撮った赤外線写真です。木の葉や草、水、空に注目すると違いがよくわかると思います。

近所の公園にある池……というか沼のような感じの、ほぼ止水。平凡な風景ですが、赤外線写真として撮ると非日常的な光景になっちゃいます♪
ごく浅い小川のような流れを撮影。赤外線写真は、赤外線の反射が多い被写体が明るく、少ない部分が暗く写ります。この写真ですと、赤外線が葉によく反射され、水に吸収されることがよくわかります。
晴れていますが、湿度が非常に高く空はネムい感じ。でも赤外線写真だと、全く印象の違う風景になります。

 楽しい~♪ ていうか試してみたくなりませんか? わりとカンタンにデキますので、ぜひお試しを。それでは以降、デジカメでの赤外線写真の撮り方をご説明します。

しくみは? どうやって撮るの?

 デジカメで赤外線写真を撮るためには、デジカメの撮像素子に赤外線を検知させる必要があります。が、じつはほとんどのデジカメの撮像素子は、もともと赤外線に対する感受性があります。ただ、撮像素子が赤外線を検知してしまうと、ホワイトバランスが狂うなど写真への悪影響が出てしまうため、撮像素子表面には「赤外線カットフィルター」が装着されています。

 しかし、その「赤外線カットフィルター」で全ての赤外線を遮断できるわけではなく、微量ですが赤外線が撮像素子に届いてしまうそうです。これを逆手に取って利用し、普通のデジカメで赤外線写真を撮ろうというわけです。

 具体的には、ケンコー・トキナーの「PRO1D R72」(公式製品情報ページはコチラ)をレンズ前に取り付けて撮影します(多くのケースで長時間露光になると思います)。撮影モードはモノクロモード。他はカメラ任せのオートで撮れると思います(より詳しい撮影方法は後述します)。

 シクミとしては、上記の「PRO1D R72」フィルターにより、カメラの撮像素子に届く可視光線をカット。これで撮像素子には微量の赤外線だけ(厳密に言うと可視光線も少し)届くようになります。撮像素子が赤外線を捉え、赤外線の強弱に応じて明暗があるモノクロ撮影が撮れるので、これすなわち赤外線写真ということになります。

左は、可視光線とその付近の電磁波を説明した概念図で、上にいくほど波長が短くなっていきます。虹色で示された部分が可視光線で、これが「人間の目に見える波長の電磁波(いわゆる「光」)」です。紫外線や赤外線は肉眼では見えません。デジカメの撮像素子は、可視光線に加えて赤外線の一部にも感受性がありますが、撮像素子前面に赤外線カットフィルターが装着されているため、撮像素子に届く赤外線はごく僅かです。右はケンコー・トキナーの「PRO1D R72」で、720nmくらいより波長が短い光をカット。フィルターにより可視光線をほぼカットすることで、撮像素子には僅かな赤外線のみが届くようになり、デジカメで赤外線写真を撮れるというわけです。

 この「PRO1D R72」というフィルター、メーカー価格で税別1万1000円~1万8000円と、ちょっとお高め。Amazonでの売価は税込6072円~9735円となっています(Amazon.co.jpへのリンクはコチラ)。

 使用上の手軽さは劣りますが、富士フイルムの写真撮影用フィルターを使う手もあります。製品としては「光吸収・赤外透過フィルター(IRフィルター)」(公式製品情報ページはコチラ)があります。赤外線と可視光線の境となる波長は、だいたい780nmだそうですので、「IR-78」フィルターあたりを使えばよいと思います。フィルターのサイズには種類がありますが、「PRO1D R72」などのガラス製フィルターよりは総じて安価です。ただし、レンズへ装着するためのアダプターあるいはレンズ装着のための自作等々が必要になります。

デジカメ赤外線写真を思うがままに撮ってみた!

 さて、実際の撮影ですが、前述したとおり、レンズ前に「PRO1D R72」フィルターを装着し、カメラをモノクロ撮影モードにして撮るだけです。撮影モードは基本的にはオートで大丈夫だと思いますが、撮影後の写真を見て、明るさに応じて露出補正(あるいは撮影後のレタッチ)を施してください。

 また、ISO感度を高めにしても(撮像素子へ僅かに入って来る赤外線を十分に露光するのに時間がかかるため)シャッター速度は遅くなると思います。ので、多くのケースで三脚が必須。手持ちで撮影するとブレた写真になってしまうと思います。

 なお、フィルターを装着した状態ではライブビュー表示がほとんど見えなかったりしがちです。ので、フィルターを装着する前にピントや構図を合わせて固定し、それからフィルターを装着して撮影する必要が出たりします。こういった手間を考えると、マニュアルでピント合わせができ、ISO感度やシャッター速度などをマニュアルで調節できるカメラで撮影するほうが、より効率的だと思います。

 ともあれ、上記の方法でイロイロ撮ってみましたのでご覧ください。ご参考までに、左が普通に撮った風景写真、右が同じ風景を撮ったモノクロ赤外線写真としています。

公園の林付近にあった東屋。ヌケのよろしくない空でしたが、赤外線写真だとクッキリとします。木の葉や草は、雪が積もったか凍ったかというほど白く写ります。
林の中の木漏れ日。木の葉や草が白く写るので、なんだか雪国のようです。
別の木漏れ日パターン。普通に撮った写真とは、やはりだいぶ印象が異なります。
ベンチと小道。赤外線写真の魅力のひとつは、こういった高いコントラストです。
赤外線が木の葉の中で反射・透過し、独特の描写になります。見えにくかった雲も浮かび上がってきます。
とりわけ雲の描写は印象的。赤外線写真だと、強い立体感を伴って雲が写ります。

 なかなか楽しいモノクロ赤外線写真。これからの季節は空気が乾き、快晴も増えてくると思いますので、より迫力のあるモノクロ赤外線写真が撮れるような気がしております。

 若干余談ですが、じつはカラー赤外線写真(フォルスカラー赤外線写真)というジャンルもあり、モノクロ赤外線写真と似たプロセスで撮ることができます。本連載の次回分で、そのカラー赤外線写真を採り上げようと思いますので、どうぞご期待ください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。