スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」

デジカメでカラー赤外線写真!

見たことないキモ美しい世界を堪能だゼ~ッ!

今度はカラー赤外線写真を撮ってみたっ!

 本連載の前回分(記事へのリンクはコチラ)では「デジカメでモノクロ赤外線写真を撮影する」というコトに凝ったわけですが、その流れで「カラー赤外線写真」にも凝ったりしているワタクシなんでした。カラー赤外線写真は、赤外線に加えて可視光線もちょっと露光して撮りつつ、撮影後に色変換などの処理を施して作る写真なんですけど、細かいコトは後回しにして、どんな写真が得られるのか、まずはゲンブツを見ていきましょう。

以下のカラー赤外線写真の元となった風景。構図は違いますが、フツーの公園です。撮影時期(2016年7月)もほぼ同じです。色も季節感も印象も全く異なる写真になるのが、カラー赤外線写真の妙味です。
紅葉の時期のようなイメージ。カラー赤外線写真では、写真の色味を後から調整するので、色味のコントロールは自由にできます。自然な色にも違和感のある色にもできます。
木の葉や草を真っ白に、空を青く調節したもの。典型的なカラー赤外線写真です。
木の葉がピンク。満開の桜のような、異世界のような……。「美しい」と「気持ち悪い」のちょうど境目にあるような色味です。

 ごくごくフツーの風景が、高いコントラストと独特の色味を持った写真になっちゃいます♪ このカラー赤外線写真、海外では「Color Infrared Photography」などとして流行&定着しているようです。これをキーワードとして検索すると、さまざまな「ハイコントラストで風変わりな色味の写真」を見ることができます。中には「うわ~美しい!」と思えるものもありますので、ぜひ検索してみてください。

カラー赤外線写真、どうやって作る?

 さて、カラー赤外線写真の撮り方ですが、少々前述しましたとおり、「赤外線に加えて可視光線も少し露光」するところから始まります。写真はカラーモードで撮りますが、撮っただけだとヘンな色。その写真に対して色補正を加えていくことで、不思議な色とコントラストのカラー赤外線写真を得ます。ちなみに、赤外線写真という「もともと色がない写真」に対してユーザーが色を恣意的に調整して作ることから、フォルスカラー(false color;偽色)赤外線写真とも呼ばれているようです。

左が撮っただけのカラー赤外線写真。カメラの色温度は2500K程度にしてあり、使ったフィルターは650nmより短い波長の光をカットするタイプです。そのままだと赤みがかったヘンな色ですな。その色を好みに応じて変えて行きます。中央の写真は、典型的なカラー赤外線写真です。空を青く調整し、木の葉や草を白く調整すると、強い違和感を感じないけれど不思議なイメージとなることから、よく行われる色調整パターンとなっているようです。右の写真は、木の葉や草を黄色系に調整したもの。空が青で草木が黄色となると、「秋だ、紅葉の季節だ」と直感でき、ホントは有り得ない色味だったりするものの、何だかリアルな光景として見えてしまうようです。

 モノクロ赤外線写真の場合は、フィルターを装着してモノクロモードで撮れば、とりあえず「独特のハイコントラスト写真」が撮れました。でもカラー赤外線写真の場合は、撮影後に色調整が必要になるというわけです。また、色調整はカラー赤外線写真の作者次第。如何様にも行えます。そのあたりの自由度と表現幅は、カラー赤外線写真の魅力のひとつかもしれません。

まずは撮影!

 カラー赤外線写真の具体的な撮り方ですが、カラー赤外線写真の撮影方法と同様に、まずレンズの前に「可視光線をカットするフィルター」を装着します。ただし、カラー赤外線写真を撮る場合、ある程度「可視光線も通す」タイプのフィルターを装着するのがポイントです。

 前回紹介したケンコー・トキナーの「PRO1D R72」(公式製品情報ページはコチラ)は、720nmより波長の短い光をカットするタイプのフィルターでした。赤外線と可視光線の境となる波長はだいたい780nmだそうですので、このフィルターは可視光線も少し通すフィルターです。なので、このフィルターでカラー赤外線写真も撮影できます。ただ、実際に撮影してみると、色調整後の色調が単調になりがちで、ワタクシ的にはあまり面白くないような印象となりました。

 カラー赤外線写真に向くフィルターについて、アレコレ試したんですが、好印象だったのがNEEWERの「R65フィルター」(Amazon.co.jpのリンクはコチラ)です。これは650nmより短い波長の可視光線をカットするフィルターです。つまり、赤外線に加え、650~780nmくらいの可視光線も透過します。細かい数値はさておき、このフィルターで撮影した画像を色調整して得られるカラー赤外線写真は、どれもなかなかイイ感じ。なので愛用しております。

 なお、本記事のカラー赤外線写真は、全てのこフィルターで撮影したものです。価格も安価なのでオススメです。

 また、撮影時に使用したカメラですが、撮像素子前の赤外線カットフィルターを取り除いた「ソニー α6000の改造品」です。赤外線域もたっぷり受光できるよう改造しているカメラですが、一般のデジカメを使う場合と比べると「赤外線写真撮影時でも長時間露光などせずに手持ちで撮影できる」あたりが大きなメリットです。

左は可視光線とその付近の電磁波の概念図で、上に行くほど波長が短くなります。中央の「PRO1D R72」は720mmより波長が短い光をカット、右の「R65フィルター」は650nmより波長が短い光をカット。「R65フィルター」のほうが、透過する可視光線が多いため、オモシロみのある色味になると感じています。

 フィルターに関しては、富士フイルムの「SCフィルター」(公式製品情報ページはコチラ)もツカエルと思います。フィルム状のフィルターで、使うのに若干手間がかかりますが、比較的に安価。SC-68、SC-66、SC-64あたりが、カラー赤外線写真に向くように思います。それぞれ、680nm、660nm、640nmより短い波長の可視光線をカットするフィルターです。このシリーズはカットする波長別に種類が豊富なので、好みのカラー赤外線写真用フィルターを吟味する上でも役立つと思います。

 さて、フィルターをレンズに装着したら撮影。可視光線の多くをカットしてしまうフィルターですので、普通のデジカメですとライブビュー表示が見えにくかったり、ピントが合わせにくかったりします。あらかじめピントや構図を決めて固定し、その後にフィルターを装着しての撮影が現実的かもしれません。このあたりはモノクロ赤外線写真の撮影とだいたい同じです。

 カラー赤外線写真では、カラー撮影モードで撮り、色が重要になってきますので、ホワイトバランスも写真の出来映えに影響します。カラー赤外線写真におけるホワイトバランスの合わせ方は好みや目的に応じてイロイロありますが、ワタクシは「なるべく低い色温度でホワイトバランスを手動で合わせて」います。カメラによりますが2500K程度のことが多いです。日が当たった緑の葉を画面一杯に入れてホワイトバランスを合わせる、という方法もあるようです。RAWで撮影し、後からホワイトバランスを調節してもいいでしょう。

 で、撮影。ヘンな色の写真が撮れると思いますが、まだカラー赤外線写真は完成前。これから色調整をして完成となります。

色を調整して完成♪

 カラー赤外線写真における調整方法は、ユーザーの自由。やり方はたくさんあると思いますが、ここでは典型的な方法をご紹介します。使う画像加工ソフトはPhotoshop CCを使っていますが、他のソフトでも同様の色調整ができます。「カラー赤外線写真 色調整 ソフト」あたりで検索すれば、利用可能ソフトや具体的な手順が多々ヒットすると思います。ともあれ以降、その手順を写真で♪

左が元画像です。前述の「R65フィルター」を使い、ホワイトバランスは(確か)2500Kとして撮影しました。これに対し「自動トーン補正」を施したのが右の画像です。
続いて「自動カラー補正」を施しました(左)。さらにカラースワップを行いました(右)。
上の手順のカラースワップとは、赤の成分と青の成分を入れ換えることです。Photoshop CCでは「チャンネルミキサー」を使います。画像左は「チャンネルミキサー」を起動した状態で、ソースチャンネルの「レッド」「ブルー」が、そのまま出力先チャンネルの「レッド」「ブルー」へ渡される初期設定です。これを入れ換えます。画像右のように、ソースチャンネル「ブルー(100%)」を出力先チャンネル「レッド」に、ソースチャンネル「レッド(100%)」を出力先チャンネル「ブルー」になるように設定すると、上の右画像のように色味が「わりとマトモな感じ」に変化します。
「色調・彩度」などを使い、各部が好みの色になるように調整します。左は、木の葉や草の黄色味を強くし、空を深めの青とし、秋っぽくなるように調整してみました。右は、木の葉や草をピンク色に寄せ、桜の季節をイメージしてみました。ほか、木の葉や草を白くすれば、モノクロ赤外線写真の特徴とカラー赤外線写真の色の面白さを併せ持った写真になったりします。このあたり、色調整は作者次第です。

 といった感じで、いろいろ遊べるカラー赤外線写真。平凡な風景写真をアーティスティックにしてみたり、見たことのない異世界のような風景を作ったり、様々な広がりがある写真です。「この風景はどんなカラー赤外線写真になるかな?」と想像しつつ撮影することも楽しいです。ハマる人はハマる、ヒッジョーに楽しい写真世界ですので、興味のある方はぜひトライしてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。