ケータイ用語の基礎知識
第671回:Rezence とは
(2014/7/29 12:41)
「Rezence」(レゼンス)は、ワイヤレス給電技術の標準化を進める団体「Alliance for Wireless Power (A4WP)」が主導する、磁気共鳴方式の給電技術のブランドです。アルファベットの“Z”をモチーフにしたロゴマークも用意されていて、「Rezence」対応とうたわれている製品であれば、充電器やスマートフォンなど充電される側の機器が異なるメーカーであっても、互いに利用できます。
A4WPでは、Rezenceで使われるワイヤレス充電規格として2013年に携帯電話などに使えるBSS(Baseline System Specification) Ver1.2という規格を、2014年にパソコンなどにも使えるBSS Ver1.3を策定しています。
BSS Ver.1.2では、受信側の充電電力が3.5W/6.5W、BSS Ver1.3では最大30Wまでの充電が可能となります。
A4WPは、2012年、米クアルコム、韓国のサムスン電子などにより発足しました。2014年現在、参加企業は100社を超え、インテルやデル、パナソニック、富士通、レノボなども参加しています。
磁気共鳴を利用した充電方式
コイルを向かい合わせに置いて一方に電源を接続して給電し、もう一方のコイルで受電するというワイヤレス給電としては、電磁誘導方式の「Qi」が既にあります。「Qi」は充電台にぴったりと乗せて充電するなど、ごく近距離での給電という形ですが、「Rezence」は、机の下に充電パッドを用意し、天板を挟んで充電できるなど、5cm程度の距離が離れていても充電できます。
磁気共鳴方式では、2つのコイルを「共振器」として利用します。共振とは、同じ周波数で振動する2つの物を近づけて置き、一方を振動させれば、もう一方も同じように振動するという現象のことです。ワイヤレス給電の場合、充電器のコイルに電流が流れて発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側の共振回路に伝わり、電流が流れるわけです。ちなみに、Rezenceでは、送信側・受信側コイルの間に磁気共振を起こすための周波数として6.78MHzを設定しています。充電パッドと充電する機器、たとえば携帯電話の距離が数mm程度しか離せない電磁誘導方式に比べると、磁気共鳴方式は、もう少し長い距離でも伝送できることが大きな特徴です。
また磁気共鳴方式の特徴としては、共振周波数の調整により給電対象の絞り込みができることも特徴に挙げられます。つまり、コイルさえあればいい、というわけではなく、特定の周波数にだけ反応する回路でしか共鳴しない、というわけです。
電磁誘導方式では、充電パッドと充電される側のコイルをぴったり合わせる必要があります。一方、磁気共鳴方式では、距離さえ合っていれば向きは多少ズレても共振します。給電側と受電側の向き合わせがそれほどシビアではないのです。この特徴を生かして、たとえば「複数の携帯デバイスを置くだけで充電ができる充電トレイ」といった新しい製品を実現できます。Rezenceでは、充電器側がクラス3以上という種類になっていれば、複数の機器を同時に充電できる、としています。ただし、磁界共鳴方式の充電器は、電磁誘導方式に比べて、回路が複雑になりデバイスへの組込みが難しいというデメリットもあります。
ちなみに共鳴のことを英語で「Resonance」と言います。「Rezence」というブランド名は、共鳴を意味する「Resonance」と、“本質”を意味する「essence」を組み合わせてできた造語です。
クアルコムの「WiPower」をベースにした規格
磁気共鳴方式ということでは、以前、この連載でもクアルコムの「WiPower」を紹介しましたが、Rezenceは、この「WiPower」をベースにした磁界共鳴方式ワイヤレス給電技術です。
Rezenceを採用したスマートフォンや充電パッドは、製品としてまだ存在しません。しかし展示会などではスマートフォンの試作機などが何度か紹介されていて、2014年内にはコンシューマー向け製品の登場があるのではないかと期待されています。