第434回:テザリングとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


iPhone OS 3.0以降ではテザリング機能に対応。ただし、日本や米国のモデルは利用できない

 テザリングとは、携帯電話の中でも主にスマートフォンを、他の携帯電話回線に接続できない機械(たとえばモバイルPCなど)のモデムとして使い、インターネットへ常時接続させること、またはそのような機能のことをいいます。つなぎとめる、縛るといった意味の英単語「tether」からきている言葉です。テザー機能などと呼ぶこともあります。

 この機能を実現する仕組みは非常に単純で、携帯電話にパケット通信を使ったデータ通信を行わせ、同時に携搭載されたUSBやBluetoothといったインターフェイスにそのままそのデータを入出力させることで、インターネット回線とPCなどの機器の仲立ちを行っています。

 携帯電話事業者からは携帯電話が通信しているように見えるのですが、データの利用量という面から見ると、携帯電話とPCなどのモバイル機器では大きく違います。たとえばWebブラウズ一つとっても必要とされるデータ量がPCでは圧倒的に大きく、多くのユーザーがこのテザリング機能を使い始めると回線が逼迫する恐れがあります。その意味では、回線を持っている携帯電話事業者としては、ユーザーに使わせるかどうかの判断が悩ましい機能でもあります。

 理屈の上からは普通の携帯電話でもできそうな気がしますが、上記のような理由から、これまで(新興の一部事業者のものなどを除いて)一般的な携帯電話ではこのような機能はほとんど搭載されていませんでした。

 ただ、利用者にとってはメリットのある利用方法だっため、テザリングをするためのソフトウエアがいくつか出回っていました。このようなハードウェアに密着したソフトウェアを動かすにはスマートフォンを使うほかないため、このテザリングという機能は、以前からほぼスマートフォンだけで使われてきました。

iPhoneでの正式サポートで話題に

株主総会でテザリングについて言及したソフトバンクの孫氏

 今年6月に米国で開催されたApple Worldwide Developers Conferenceで、iPhone OS 3.0以降ではこのテザリング機能がサポートされることが公表され、この「テザリング」という単語が話題となるようになりました。

 いくつかの国では、OSを3.0以降にしたiPhoneで「Internet Tethering」設定をONにすることで、利用が可能となりました。USBケーブル経由、あるいはBluetooth経由で接続したい機器とペアリングを行うことで、PCなどでiPhoneのインターネット接続機能を使うことが可能になります。

 ただし、このiPhone用にこの機能を許可するかどうかは携帯電話事業者の判断にゆだねられており、米国や日本などいくつかの国では利用不可となりました。あるいは、英国のO2のように「Tethering Bolt On」という専用のパッケージを購入したユーザーにのみテザリングを許可する、というような事業者も存在しています。

 ちなみに、Windows Mobileケータイ、Androidケータイ、BlackBerryなどのスマートフォンでは、設定ファイルを書き換える、あるいはテザリング用のソフトウェアを使うことで、この機能を利用可能なものもあります。

 もっとも、このような利用方法は、携帯電話事業者側で対応していないので、一度利用が可能であるからといって継続的に利用が可能である、また料金的に携帯電話やデータ通信の定額パケット通信料が適用されるかどうかは、保証されていないので注意が必要でしょう。

 なお、国内のiPhoneに関して、携帯電話事業者のソフトバンクが、6月の株主総会の株主との質疑応答で、「iPhoneユーザーは一般の10倍のパケット量の通信をしている。テザリング機能を利用可能にすると100~200倍のパケットを使うユーザーが出てくる可能性がある。定額料金で100人分の帯域を占拠させるわけにはいかず、提供することはできないという経営判断。通信料金が青天井ならばテザリング機能も容認する」と表明しています。



(大和 哲)

2009/8/18 11:41