ケータイ用語の基礎知識

第827回:ビューティーモード とは

セルフィーやポートレートで美しく撮る

 「ビューティーモード」とは、デジタルカメラなどが持つ機能のひとつです。簡単に言えば、人物を写したときに、より美しいと評価されるよう、加工するモードのことです。

 主に被写体の顔や肌を、綺麗で滑らかな“美肌”に見えるよう撮影することが多く、中には「目を大きくパッチリさせる」「顔をより痩せて見せる」といった機種もあります。

 もともとは、一部のコンパクトデジタルカメラに搭載されていた機能です。それが、携帯電話の一部で採用され、現在ではさらに進化した機能としてスマートフォンに搭載されることが増えてきています。

 セルフィー(自撮り)が好まれる韓国や中国・台湾メーカーのスマートフォンでは、この種の機能が「特長」としてよくアピールされています。たとえば最近発売された「ZenFone 4」シリーズでは、全機種にASUS独自の「美人エフェクト」が搭載されています。人物撮影をするときにこのモードが機能すると肌のトーンアップやつや出し、シミが消された写真になります。ほほのチークの色を濃くしたり、目がパッチリと強調された写真にすることも可能です。

 ファーウェイ製の「P10」や「honor 9」ではカメラを「ポートレートモード」にすると、自動で「ビューティーモード」が10段階のレベル5でオンとなります。

 サムスン製のGalaxy S8/S8+なども「美顔モード」という機能が用意されています。撮影した画像に、後から照明や肌の色合いを調整できますし、人物の顔が写っている場合、黒目を大きくして印象深い顔つきにしたり、輪郭を補正してよりシャープな顔つきの写真に加工するといったことも行えます。

 日本メーカーでは、富士通のarrowsシリーズのうち、「arrows M04」から小じわやシミを目立たなく補正する「美肌補正」機能が搭載されています。

 なお、スマートフォンの代表格とされるiPhoneには搭載されていませんが、同様の機能を持つアプリが数多くApp Storeで配信されています。

デジタル画像処理の延長として、機種の「ウリ」の機能に

 ビューティーモードでは携帯電話・スマートフォンで撮影された人物画像を、デジタル加工して、より好ましい画になるように調整します。

 もともとカメラに使うイメージセンサーは、画像処理のための回路が組み込まれています。撮影の際に画像に入るノイズを除去したり、画像をよりビビッドにするといった用途です。

 その画像処理のための回路をよりパワーアップすれば、さまざまな画像加工ができるようになります。そこで、デジタルカメラや携帯電話・スマートフォンでは、カメラユニットに画像処理プロセッサを搭載し、画像を様々に認識したり、画像が鮮明になるように、あるいは自然になるように加工を行うようになりました。画像の美顔化も、そのような技術の延長上にあります。カメラ内デジタル画像処理のたどり着いた一つの到達点と言ってもいいでしょう。

 たとえば人の顔を撮影した際、肌のキメを滑らかにし、シミを消すために段階を踏んで画像のデジタル加工を行っています。

  1. 撮影した画像を色相・彩度・明度に分解する
  2. 明度情報などからイメージレイヤーを分解し、顔認識を行う
  3. 認識した顔から肌のマップを作成する。この際、顔のシミも明るさが周りと違うためマップに含まれる
  4. マップから特定の周波数成分を除くなどしてキメ細かく、滑らかな内容にする
  5. 分離していた色成分をマップに合うように加工する
  6. 加工した色相・彩度・明度成分をブレンドし、画像にする

 こうした機能は、スマートフォンごとの差別化要因として開発が進められており、そのアルゴリズムは公開されていないのが一般的です。全く異なる方法で美顔化を行うことも多くあるでしょう。

 機種によって「ビューティーモード」として撮影した写真でも、違いは多くあるはずです。もし、スマートフォンを選ぶとき気になるのであれば、複数の機種で実際に撮影して、確認してみるといいかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)