「N-01C」「N-02C」開発者インタビュー

ハイスペックコンパクト「μ」の最新2モデル


N-01C(下段)とN-02C(上段)

 NECカシオモバイルコミュニケーションズは今冬のドコモ向けに「N-01C」と「N-02C」の2モデルを提供する。この2モデルは、2007年発売の「N905iμ」の血統を受け継ぐ、薄型ハイスペック端末だ。しかし同じ血統ながらも、N-01Cは「About a girl」コラボモデルなど女性を意識した展開をしており、一方のN-02CはWi-Fiに対応するハイスペック志向と、大きく方向性が異なっている。

 今回はこれら2モデルについて、開発を担当したNECカシオモバイルコミュニケーションズのNTTドコモ事業部 商品企画グループ マネージャーの高須愛氏と同グループの加藤広務氏、第一商品開発本部の雨宮聡子氏、NEC埼玉の技術部 主任の木村祐一郎氏に話を聞いた。

About a girlとのコラボも用意した「N-01C」

N-01C

――まずN-01Cの特徴からご紹介をお願いします。

加藤氏
 デザイン面では薄型が特徴になります。イルミネーションも特徴になっており、今回はキーイルミと背面端のイルミの2つで「Wオーロライルミネーション」としました。また、ピンクは「About a girl」とのコラボレーションモデルになっています。

 カメラを使った機能としては、ビューティーカメラやハンドミラー機能を搭載しました。ベーシックな部分でも、ISO25600の高感度対応や最大108までの連写機能、顔識別によるパーソナルアルバムなどの機能も搭載しています。

 また、今回はメール機能を強化し、文字入力や画面遷移のレスポンスを向上させ、「さくさくメール」と謳っています。デコメ関連としては、ちょっと変わった機能として、デスクトップのショートカットアイコンや着信アイコンをデコメ絵文字に変更できるようにしました。デコメ絵文字に自分で読み仮名を設定できたり、新しいデコメ絵文字をダウンロードするとき、同じものがあるかをチェックできるなど、使い勝手も向上させています。メールのテキストを画像化し、独自フォントで相手に送信する機能も搭載しています。

木村氏
 デザイン面では、N905iμやN-01Bに続く、μの系統の中でもハイスペックなモデルと考えています。薄型デザインを受け継ぎ、奇抜なデザインにはせずに、NECならではの薄型フォルムをさらに洗練させました。

 薄型だけでなく幅についても、今回は女性の手にも持ちやすいというコンセプトを踏襲し、49mmになっています。また、ラウンドフォルム形状により、手にフィットしやすくしました。

――やはり女性をメインターゲットにされているのでしょうか。

NECカシオの加藤氏

加藤氏
 メインには女性を意識しています。しかし、チャコールやホワイトは男性が使われても違和感のカラーになっているかと思います。

――メールの操作レスポンス向上など、基本的な部分のブラッシュアップがされている印象を受けますが、なぜそこに手を入れられたのでしょうか。

加藤氏
 メールの操作感を重視するというお客さまからの声がありまして、それに対応したという形になります。買い換えの時期にさしかかっている過去のμシリーズをお使いのお客さまに対し、使い慣れたサイズやデザインの機種をより使いやすくして提供したい、という考えもあります。

 デコメ関連については、従来の機種で満足度が高かった機能なので、そこを伸ばすことに意味があると考え、さらに機能強化に取り組んでいます。ヘビーユーザーだけでなく、一般の方にも便利に使ってもらえれば、と思っています。

待受画面のショートカットや着信通知のアイコンに絵文字を設定できる

――待受画面に表示される着信通知アイコンをデコメに差し替えられるとかも面白いですね。

雨宮氏
 本体を開けたとき、可愛くあって欲しい、というニーズに応えました。アイコンが表示されるのなら、それも可愛い方が良いよね、彼からの電話は特別なアイコンだと嬉しいよね、という声を実現した機能になります。

――日本語入力がiWnnになっていますが、T9は引き続き搭載されています。

高須氏
 T9はファンがいらっしゃいます。新商品発表会でも、多くの質問をいただいたポイントでして、T9はなくしたらダメだな、と考えています。

――デコメ絵文字に読み仮名を登録できるなど、変換辞書機能が充実されています。

加藤氏
 microSDメモリーカードに保存すれば、次の機種への移行にも対応します。

――シークレット機能も拡充されているようですが、これはどういったニーズなのでしょうか。

高須氏
 この機能自体は、ほかの機種と共通で開発し搭載しています。シークレット機能へのニーズは、男性が中心ですね。社内からも、もっと強化してくれ、という声が多数聞こえてきます。それも、「このシチュエーションで気づかれないようにして欲しい」という、ピンポイントな声が届きます。どこまで細かく実現するかを考えつつ、前向きに取り組んでいる機能です。

――操作レスポンスの向上は、どのように取り組まれたのでしょうか。

加藤氏
 ソフトウェアを根本的な部分から見直すことで高速化しました。具体的な利用シーンを洗い出し、その操作を高速化するにはどうすればよいか、と見直しました。

――カメラも高速化されていますが、こちらはハードウェア面を改良されたのでしょうか?

高須氏
 ハードウェアとソフトウェアの両面から取り組みました。1000分の1秒単位でダイエットし、起動時間は1秒を切っています。

――女性向けと言うことで、カメラも女性向けに味付けされた「ビューティーモード」を搭載されていますが、これはどのような機能なのでしょうか。

ビューティーモード

雨宮氏
 お客さまに「NECのケータイで撮ると、いつも可愛く写る」と感じていただくことを目指して開発した機能です。顔を面白く変身させるエンタメ系の機能ではなく、素の自分を可愛く撮るという、ナチュラルビューティーを目指しています。今回は集英社さんのビューティー雑誌の「MAQUIA」の監修を受け、いろいろなシチュエーションに応じたメイクパターンをプリセットしています。プリセットパターンだけでなく、各パラメーターは自分で調整可能で、普段は試さない色やメイク方法を使って、新しい自分を発見していただくのも良いと思います。

 この機能を開発するにあたり、人によって合わない色やメイク方法などがあるので、万人に合うものを作るのに苦労しました。ひとくちに「パープルの目元」といっても、万人にあう紫はどのようなものだろう、と考え、述べ数千枚もの写真を使い、検証しています。

――メイクのパターンデータをダウンロードして追加することはできないのでしょうか。

NECの雨宮氏

雨宮氏
 今回は対応していませんが、今後はそういったところを検討したいと思います。ただし今回も、自分でパラメータを操作して好みのパターンデータを作り、端末に記憶させておくことが可能です。

高須氏
 今回、ビューティーアドバイザーという専用サイトをオープンしました。パターンデータをダウンロードできる仕組みはありませんが、毎月1パターン、メイクパターンを紹介し、そのパラメーターを公開します。手動入力になりますが、ここで公開されているメイクパターンを端末上で試せるようになっています。将来的にはデータダウンロードなどの連携を強め、「NECのカメラはビューティーに強いよね」と言われるように強化していきたいと考えています。

――ちなみに複数人が写った写真や男性のメイクは可能なのでしょうか?

加藤氏
 5人までの顔を認識し、それぞれ別々のメイクができます。パラメータによっては男性にも楽しんでいただけると思います。

雨宮氏
 男性には、美肌や小顔が効果的です。仕事ができるっぽくなるという声もありましたね。

――自分撮り機能も強化されているのでしょうか。

雨宮氏
 背面のカメラで撮る際、顔が中央に来たときに音と光でお知らせするという、自分撮り機能があります。高画素なカメラで撮った写真にビューティーモードを組み合わせれば、綺麗な写真をブログなどに載せることもできます。

N-01Cのインカメラ。About a girlコラボモデル(右)はデザインも異なる

――インカメラもちょっと変わっているように見えます。

木村氏
 インカメラは自分撮りだけでなく、手鏡代わりになるミラーモードにも対応しています。インカメラは真ん中に配置しているので、画面を直視したときにも、ユーザの視線が左右にずれないようになっています。

――ディスプレイ側上端のイルミネーション、グラデーションが効いていて綺麗ですね。

木村氏
 ディスプレイ側のオーロライルミネーションは、実は4つのLED光源だけで実現しています。光源と光源の間は、光が混色するようにして、7色を再現しました。混色する部分はグラデーションになるので、虹のように見えるようになっています。LED光源と導光板を斜めに配置することで照射距離を長くし、LEDの光が広がるように工夫しています。

高須氏
 イルミネーションの設計には半年くらいかけていますよね。

木村氏
 薄いフォルムを変えずにどのように見せるか、ということにこだわりました。また、照光しているときとしていないときの見え方にもこだわっています。こうしたところを、光学シミュレーションを用いたりして試行錯誤し、これを作り上げています。

加藤氏
 ボディカラーごとに、点灯するパーツの色が異なります。デザインと性能の両立には苦労しました。

 背面ディスプレイについては、プリセットされた20種類のアニメーションパターンだけでなく、弊社ホームページで公開している一定基準にそったものであれば、お客さまが用意されたアニメーションGIFも利用できます。

 端末を自分色にする、ということで、アニメーションパターンもオープンにしました。細かい部分でも、自分らしさを表現できる、こうした機能がクチコミで広がるのも良いかな、と期待しています。

上端のイルミネーションは4つの光源しか使っていない背面ディスプレイのアニメーションパターンは自作が可能

――キーイルミネーションも、相変わらず綺麗ですね。

木村氏
 基本的には以前の機種を踏襲していますが、キーの押し心地を、より軽く、フィーリングの良いものにブラッシュアップしました。軽くて音も静かですが、クリック感は確保しています。

N-01CのAbout a girlコラボモデル

――About a girlさんとのコラボレーションは、どのような狙いがあるのでしょうか。

加藤氏
 このモデルは20代女性を中心に考えて企画していましたので、そこに対してさらに何か提供できないか、と考え、About a girlさんとのコラボレーションを行いました。

――ポーチが同梱されるのですね。

高須氏
 こちらはオリジナルデザインとなっています。チェーンやリボンをモチーフにしたデザインには、About a girlのエッセンスを感じていただけるかと思います。

N-01CのAbout a girlコラボモデルと同梱されるポーチ同梱のポーチは内張が本体と同じ模様になっている

コンパクトながらも“全部載せ”の「N-02C」

――続いてN-02Cについてもご説明をお願いします。

N-02C

高須氏
 N-02Cでは、N905iμから続くμシリーズとしては初めて、防水と防塵に対応しました。これまでもスリムスタイルのまま防水を、というリクエストがあったのですが、今回ようやく実現しました。

 N-01Cとの違いとしては、13.2メガのカメラを搭載し、Wi-FiやBluetoothにも対応しています。また、ニューロポインターも搭載しました。STYLEシリーズですが、機能的には全部載せで、PRIMEシリーズのハイエンドモデル並のスペックです。

木村氏
 ニューロポインターは、防水防塵にも対応するために、実装方法をブラッシュアップしています。ただ、元々のニューロポインターの防水性が良かったこともあり、基本的な構造は変えていません。

高須氏
 N-01Bでニューロポインターを搭載できたのですが、このときも実装するのに苦労しました。今回はさらに操作感を改善しています。

NECカシオの高須氏

 さらに無線LANにも対応しています。基本的に夏モデルのN-04Bと同等の機能を搭載していますが、進化ポイントとしては、IEEE802.11nに対応しました。カンタンデータ転送という機能がありまして、パソコンに専用ソフトをインストールし、N-02CでQRコードを読み込むと、動画や静止画を転送できるようになっています。やはり防水端末ということで、カバーにはパッキンがあり、あまり開閉したくない、というのもあります。ケーブルもmicroSDメモリーカードも使わない無線転送は、防水端末とは親和性が高い機能です。

 このQRコードを使ってパソコンとケータイをシンクロさせる技術も、こだわったポイントです。STYLEシリーズで無線LANのような機能をどのように見せれば、抵抗なく使ってもらえるか、ということを考えました。QRコードであれば、女性誌などにも載っているので、STYLEシリーズのユーザー層にも使ってもらえるかな、と。N-02Cは、13.2メガカメラを搭載しており、にクイックショットや連写機能があり、写真をたくさん撮れるようになっているので、それを簡単に転送できるようにしています。

Wi-Fi搭載ながらサイズ感は非常にコンパクト決定キーを兼ねているニューロポインター

――今回、N-02Cはハイエンドスペックのモデルながらマイセレクトに対応されています。女性がメインターゲットだった従来のマイセレクト対応モデルとは、N-02Cではユーザー層が少し変わるのではないでしょうか。

高須氏
 N-01Bなど以前のマイセレクトモデルは、女性から見れば豊富な選択肢を準備しましたが、逆に男性が選べるものが少ない傾向にありました。PRIMEシリーズのユーザー層にも、カスタムニーズが高いということで、できるだけターゲット層を広げるべく、今回はN-02Cでマイセレクトに対応しています。

NEC埼玉の木村氏

――マイセレクトだと製造工程に影響があると思うのですが、それで防水というのは難しいのでは?

木村氏
 難しいです。通常は1本の生産ラインに流して出荷、となるのですが、マイセレクトでは作り方が違ってきます。たとえばパネルへの印字は別のラインで行います。印字は裏面から行うので、別ラインにて準備したパネルとキーシートをマイライン専用の組み立てを行うメインのラインに投入して組み立てた後、通常モデルと同様に防水試験を行います。

――スペックを見ると、このモデルがPRIMEシリーズではなく、STYLEシリーズに位置付けられているのが驚きでした。

高須氏
 μシリーズが登場したときは、4つのシリーズはありませんでしたが、μの系統はSTYLEシリーズに引き継がれました。それからμシリーズを進化させて行くにあたり、N-01Cのような可愛さをキーコンセプトにした方向性と、N-02Cのような防水・ハイスペックの方向性の、2つの進化の方向性があるかな、と感じ、今回2つのモデルになりました。N-02Cは、ハイスペック方向に進化させるからには、ほかのPRIMEシリーズに負けない商品力を付けよう、という思いで開発しています。

「μ」シリーズに位置付けられる歴代機種

――そもそもこのくらいのサイズ感ならばSTYLEシリーズ、というような基準はないのでしょうか。

高須氏
 幅50mmなどの数字はざっくりとはあるのですが、あとは実際に持った感じが重要になります。

――ソフトウェア面ではN-01CとN-02Cでは共通となる機能が多いですが、ハードウェア面でも共通部分が多いのでしょうか。

高須氏
 カメラまわりは解像度も違うので、DSP(デジタル信号処理を行うプロセッサー)も変えています。N-02Cでは解像度が上がっているのにカメラの動作が速いのは、DSPとソフトウェア作り込みの違いによります。

木村氏
 N-02Cは、防水と薄型化を両立するために、筐体のプラットフォームから見直しています。従来機種は側面などにパーツの分割線がありましたが、そういった水が入る物理経路を極力廃しています。

N-01Cはハンドミラー機能や自分撮りのために強力なLED照明も搭載している

――ソフトウェア面での改善は、基本的にN-01Cと同じだと思いますが、N-02Cならではの改善はどのあたりでしょうか?

加藤氏
 テンキー下にあるクイックボタンは、N-01Cでは初期状態はハンドミラー機能に割り当てられていますが、N-02Cでは初回起動時に好きな機能を割り当てられることが可能になっています。あとから変更することも可能で、アプリなども割り当てられるようになっています。

高須氏
 やはり、ベーシックな部分の強化というところにこだわっています。PRIMEシリーズのように「スペックが大事」というところより、もっと幅広いユーザー層に使っていただきたいので、基本的な部分やユーザーニーズが強い部分を集中的に強化しよう、という方針で取り組みました。玄人受けする機能ではなく、サクサク操作できるところやカメラで綺麗に撮れることなど、みんなが使って嬉しいよね、というようにしました。

 新製品だから選ぶ、というのではなく、デザインや操作性を見てもらい、安心して使えるよね、と地に足を付けて選んでもらえる商品になっていると思います。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/12/16 06:00