トピック

IIJmioの“端末動作確認”がかなりアツい、eSIM専用の新「iPhone」への対応は初夏から始まっていた

 今秋発売の「iPhone 17」シリーズと「iPhone Air」は、国内で販売されるiPhoneとしては初めて、SIMカードスロットを搭載せず、eSIM専用仕様となっている。今秋のiPhoneを機に、nanoSIMカードからeSIMへ変更するという人も多いだろう。

IIJの横井秀行氏(左)と吉橋茂氏(右)

 NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの4社とそのサブブランドは、eSIMもiPhoneの設定メニュー内で切り替えたり、iPhone間でeSIMを移動させたりできる「クイック転送」にも対応する。これはAppleと提携してiPhoneを取り扱っているMNOならではの特徴だ。

 しかしMVNOはそうではない。そもそもAppleと直接取引しているわけではないので、端末発売前に動作確認ができるわけでもなく、MNOのようなeSIM切り替え機能にも対応できない。

 だからといってMVNOがiPhoneへの対応をおろそかにできるわけではない。iPhoneは日本でもっとも普及しているスマートフォンシリーズであり、MVNOにとってもiPhoneをしっかりサポートすることは重要だ。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、5GB/月額950円のMVNOサービス「IIJmio」を提供している。大手MVNOの一角であるIIJmioは、端末サポートにどう取り組んでいて、iPhone 17発売にはどう対応したのか。今回はIIJのモバイルサービス事業本部 MVNO事業部 コンシューマサービス部 カスタマーサクセス課において、テクニカルサポートチームを取りまとめている、吉橋茂主任と同チームの横井秀行主任に話を伺った。

IIJが販売してなくてもメジャーな端末は動作確認を実施

IIJの吉橋氏

――まずそもそもですが、IIJmioで実施している端末の動作確認ではどういったことを確認しているのでしょうか。

吉橋氏
  IIJmioの回線を入れたとき、問題なく利用できるかどうかを確認しています。
音声とデータの両方の通信サービスが使えなければいけません。最近はライフスタイルが多様化し、それに合わせてSIMの使い方も変わってきています。

 かつてはシングルSIMが主流でしたが、いまはデュアルSIMでの利用が増えています。デュアルでもカードとeSIM、eSIMとeSIMなどと組み合わせが増えています。そうなると、当然メーカーも動くように設計しているはずですが、試験してみると組み合わせによって不安定、ということが起きています。

動作確認用iPhoneのスクリーンショット。いろいろなパターンを試すべく、いろいろなeSIMが入ってる

――正常に利用できないケースはどのくらいあるのでしょうか。

吉橋氏
 5台に1台あるかどうか、というくらいでしょうか。あったとしても、まったく通信できないというわけではなく、特定条件で不安定になる、というようなイメージです。どちらかというとAndroidスマートフォンに多く、iPhoneでは問題はほとんどありませんね。

IIJmioの動作確認端末案内ページ。メーカーリストだけでもトンでもなく長い。しかし「動作不可端末」は4つのみ

――どのような端末の動作確認をするのでしょうか。

吉橋氏
 まず、IIJmioが販売している端末はすべて確認します。それ以外としては、IIJmioのSIMカードは量販店でも販売させていただいているので、量販店の担当者から「この端末の動作確認して」というリクエストがあったときに動作確認を実施しています。

 そのほかの端末で言うと、iPhoneはIIJmioでは新品の取り扱いをしていませんが、販売端末と同等レベルでしっかりと動作確認しています。あとGoogleのPixelについては、動作確認することで得られる情報があるので、全モデル購入して動作確認しています。

――正常に動作しなかったとき、どうするのでしょうか。

吉橋氏
 そのときは、担当部署からメーカーと情報共有しています。内容によってはメーカーにソフト修正対応していただかないと直らない事象もあります。

IIJの横井氏

横井氏
 不具合とはならなくても、お客さまで追加の設定が必要なこともあります。そのときはWebサイトで情報公開もしています。


多数のスマホで実際に動作確認を実施


 自社で販売していない端末を含め、動作確認をしているのは、大手MVNOとしての責任感の強さを感じる。

 5台に1台、なんらかの問題が見つかるというのは、意外と多いという印象もあるが、それでも完全に動かないと確認されているのはNTTドコモの「HT-03A」など最初期のAndroid端末や特殊なモデルだけというのは、追加設定などを含め、しっかり実機で動作確認しているのが大きいところだろう。このあたりもIIJの信頼性は高い。

意外と少ないeSIM専用化の影響

――日本でもiPhone 17シリーズとiPhone AirはeSIM専用版のみの展開となりますが、これが発表されたとき、どう思われましたか。

吉橋氏
「ついにきたか」と。ただ、以前から想定していたことでもあります。

動作確認作業のイメージ。これ、SIMカードがドレかわからなくなるヤツだ

――eSIM専用になったことでIIJ側ではシステムを変えるとか動作確認内容を変えるとか、そういったことはありましたか?

吉橋氏
 動作確認の手順はそこまで大きくは変わっていません。iPhone 13シリーズからデュアルeSIMには対応していたので、弊社ではバージョンアップのたびにデュアルeSIMの試験も行なっていました。これまでやってきたことなので、そこまで慌てることもなく、もともと決めていたことを進めた次第です。

 ただ、そうではあるのですが、チップセットが変更されているので、そこで動かなくなる可能性があるのでは、と注意しつつ動作確認を進めました。

“eSIM専用”iPhoneでも問題なし

 筆者としては、iPhoneのeSIM専用化により、通信事業者は大混乱では、とも思っていたが、考えてみればeSIMは従来から対応しており、何かが追加されたわけでもない。むしろSIMカードの動作確認項目が減るくらいなわけで、IIJは粛々と対応している。このあたりもさすがIIJ、である。

iPhoneの動作確認はどのように実施されるのか

――実際にiPhone 17/Airに向けてはどういった作業を実施されましたか?

吉橋氏
 作業は6月10日のWWDC 2025から始まりました。まず、iOS 26の開発者向けベータ版がリリースされるので、それでアプリが動くかチェックします。通信について調べるのはまだです。その後、7月ごろに社内向けに取り組みを宣言し、仮のスケジュールを作成します。あとは動作確認に使う最新OSに対応する端末、iPadも含めると50台くらいを準備します。その後、AppleのiPhone発表会イベントの日程が公開されるタイミングで、スケジュールを合わせます。

 9月10日未明のiPhoneの発表会のタイミングでは、各OSの正式版の配信スケジュール発表とともにRC版(最終候補版)がリリースされるので、まずはRC版を既存端末の一部にインストールしてチェックします。

 また、今回は新モデルは全てeSIM専用版と発表されたので、SIMカードからの切替が多いと想定し、お知らせを掲載しました。

 9月12日に予約開始となった時点で手分けをしてiPhoneの予約をします。

 その後、発売前のタイミングでiOS 26の正式版が配信されるので、正式版をインストールし、アプリの動作確認をします。

発売日当日、お客様にいち早く安心をお届けできるように店頭受取して動作確認を開始する

 発売日(9月19日)には、当日店頭受取をして、16時には動作確認を終えてお知らせを掲載しました。

――6月からとなると準備期間も長いですが、これと平行してほかのモデルの動作確認もやるのですよね。

吉橋氏
 もちろんです。この期間でAndroid 16は2回に分けて大きくアップデートがあったので、そちらも対応しています。

――やはりiPhone発売の時期が1年のうちでも一番忙しいのでしょうか?

吉橋氏
 9月のApple発表会の週が極端に忙しいですが、IIJmioで取り扱っている端末数が多いので、仕事がなくなる時期はありませんね。同じチームでテクニカルサポートや外部への告知とかもやっていますし、1年通してさまざまな業務があります……が、今年の9月10日はスゴいボリュームです。

動作確認の作業はiPhone発表前から

 iPhone発売タイミングは、ケータイ業界全体がお祭り騒ぎであり、IIJとしても大変な量の作業が発生するようだが、その裏でAndroidスマホの新モデルもあるし、Androidのバージョンアップへの対応もしているのだから、サポートチームは季節問わず忙しいことには違いがないというわけだ。

eSIM対応の長い実績と積み重ねたノウハウを生かしたサポート体制

――iPhone 17シリーズとiPhone AirをきっかけにeSIMに変更するユーザーが多いかと思いますが、IIJmioではどのようにユーザーサポートされていますか?

吉橋氏
 まず他社との違いとして、IIJmioは2019年7月から個人向けデータeSIMを提供しています。早くから提供しているので、お客さまの声など多くの情報やノウハウを蓄積し、それを申込導線や設定手順、トラブルシュートにも反映して改善を続けています。

 そのあたりがあるので、かなり使いやすくなっているかと思います。以前、eSIMを使ったけど使いにくかったという人も、使いやすくなったことを実感いただけるかと。

 私たちテクニカルサポートのチームは、申し込みいただいた後の快適さというところに主に取り組み、心理的な不安を改善しています。心理的な不安として、設定手順以外には料金についても不安があるかと思いますが、キャンペーンで手数料を一部無料にしたりしているので、バランス良く使いやすくなっているのではないかと。

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――実際にiPhone 17発売のタイミングでeSIMへの切り替えをするユーザーが多かったでしょうか。

吉橋氏
 多くのお問い合わせをいただいています。いつ、どのようにeSIMに切り替えればいいのか、と。サポートチームとしては、可能な限り、新しい端末を買ったあとにゆっくりeSIMに切り替えてね、とお伝えしています。MVNOではクイック転送がなく、再発行に手数料がかかるケースもありますので、先にeSIMに切り替えない方が良い、と。

 そもそもドコモ網を使うタイプDでは、eSIMの申込にEID(携帯電話の固有ID)が必要になります。手元に端末がないとEIDはわからないので、先にeSIM化はできません。あとは無駄な手間がかからないよう、データ移行した上でのeSIM手続きをオススメしています。

――iPhone 17発売に備えてサポートチーム側ではどういった準備をされていましたか?

吉橋氏
 IIJに直接申し込みいただく人への対策としては、例年の傾向から問い合わせが増えると予想できたので、多くの人がつまづくであろうAPN構成プロファイルの問い合わせを減らすべく、弊社の堂前清隆(IIJ 技術統括部長)と連携し、発表前夜にはAPN構成プロファイルの記事をエンジニアリングブログに掲載しました。

 発表会の後には、動作確認は発売後に実施します、とお知らせを掲出し、それでもお問い合わせが多いので、新端末購入後にeSIMの手続きを、というお知らせも出しています。

FAQのトップにiPhone 17シリーズとiPhone Airについてのお知らせを掲載している

 さらにiPhone 17シリーズとiPhone Airについては、動作確認だけでなく、IIJmioを初めて使う人、物理SIMで使っている人など、ユーザーの状況別にそれぞれ必要な手続きなどを掲載しています。

 あとは問い合わせを受けるサポートセンターにも、「eSIMオンリーになったのでeSIM変更の問い合わせが増えるよ」という情報共有もしています。

――eSIM化の手続きでは予測困難なトラブルが発生しがちな印象があるのですが、そうしたトラブルについて、ユーザーにはどのようにご案内・ご対応されているのでしょうか。

吉橋氏
 基本的にはしかるべき手順を踏んでいただければ、アンテナピクトは立って利用できるようになります。しかし他社のAPN構成プロファイルが残っていたりすると、正常に通信できません。何らかの想定外の手順があると圏外になることもあります。

IIJmioでは機種ごとにあわせたSIMカード/eSIMの設定手順も紹介している

 トラブルが起きたとき、手順を中断してeSIMを削除してしまうお客さまがいますが、消さずにサポート窓口へご連絡いただければと。トラブルシュートも用意しています。

――こうしたユーザーサポートの面では、どういったことを重視されていますか?

吉橋氏
 安心してご利用いただけるよう、日々、いろいろなことを改善しています。お客さまから直接いただけるお声を大切するのは当然として、物事を考えるにあたっては他社の情報や自身の経験、各種メディアの情報も大事にしています。お客さまから直接いただける声は一部なので、それだけでは情報としては少ないです。

 たとえば、他社が情報を出したりサービスを用意しているなら、それは求められているのだろうな、とか、ケータイ Watchのアクセスランキングとか、あとは個人的に端末をいじり倒しているのですが、そこでも「ここは問い合わせが来るだろうな」と感じることもあります。そうした情報を元に、改善活動をしています。

 お客さまが必要とする前に情報を公開できる方が良いです。お客さまが何かに困って調べたら情報がある、ということができれば、と。

横井氏
 IIJmioには代理店の即日カウンター以外に店舗がないので、何かあったときにWebに掲載している情報が重要になります。情報公開のスピード感、情報の鮮度、情報の網羅性などを大事にしています。

 今回の例でいうと、9月16日の早朝にはiOS 26の正式版で音声通話やデータ通信、IIJmioのアプリが正常に動作するかの確認を行いました。

動作確認を行っているiPhoneの画面。早朝4時半前にすでに作業は始まっていた

日時Appleの発表内容IIJの取り組み
6月10日・「WWDC25」、iOS 26(新OSバージョン)の発表・ベータ版でIIJmioが提供するアプリの影響調査開始
7月1日~-・社内取り組みを宣言、試験項目の検討、端末・SIMの準備
9月10日・iPhone 17シリーズ、iPhone Air発表、iOS 26(RC版)配信・Webサイトなどで端末の情報を確認、試験項目の見直し、端末・SIMの見直し、RC版での通話・通信、IIJmioのアプリの動作確認開始
・「現時点で弊社サービスでの動作確認は未完了である。確認が完了次第、案内することを伝える必要がある」と考え、お知らせを掲載
9月16日 2:00~・iOS 26(正式版)を配信・正式版での音声通話・データ通信・アプリの動作確認を実施、他社SIMとのデュアルSIMでの動作確認、設定手順書の見直し
9月16日 8:50-・iOS 26でも問題なくサービス利用できる旨をXで告知
9月16日 13:03-・iOS 26についてお知らせを掲載
9月17日 19:03-・iPadOS 26について問題なくサービス利用できる旨をXで告知
9月19日 8:00~・iPhone 17シリーズ、iPhone Air発売・iPhone 17シリーズとiPhone Airを購入。通話・通信、IIJmioのアプリの動作確認。他社SIMとのデュアルSIMで動作確認、設定手順書の見直し
9月19日 16:06-・iPhone 17シリーズ、iPhone Airで問題なく通話・通信が利用できたことからXで告知、お知らせを掲載

吉橋氏
 お客さまの声などを元に、設定手順やトラブルシュートを改善しています。以前、eSIMを検討していたけど手順が複雑で断念されたお客さまも、これを機に、再度、検討いただければ、と思っております。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

強力なサポート体制を備えるIIJmio、今なら魅力的なキャンペーンも実施中

 iPhoneのeSIM専用化の影響を一番大きく受けるのはユーザーだ。eSIMの切替でつまずくユーザーが多そうなところだが、ここでeSIM取り扱いの歴史が長いIIJmioは、積み重ねたノウハウが強みとなっている。問題が起きそうなポイントをサポートチームで共有し、先回りしてWebサイトで案内できるのもユーザーとしては心強い。

 情報公開の面では、IIJの名物とも言えるエンジニアリングブログにも注目したい。細かい技術情報についての記事も掲載されており、ユーザーにとってだけでなく、筆者のような業界人の情報ソースとしても重要な存在となっている。こうした情報発信ができる体制はIIJの強みだ。

 SIMカードからeSIMへの切替は、iPhoneのクイック転送が使えないMVNOだと手間も多い。しかしIIJはそこをしっかりサポートできている。機種変更時に1回やるだけならば、普通は数年に1度の作業にすぎないので、機種変更を見送るほどの手間でもない。eSIM手数料の割引キャンペーンが11月20日までなので、このタイミングでeSIM専用iPhoneへの乗り換えを検討してはいかがだろうか。

 一方、複数の端末を併用し、頻繁にSIMカードを挿し換えるというヘビーユーザー的な運用は、eSIMでは作業的には少々、複雑な面がある。しかしIIJmioのデータeSIMプランは月額440円(2ギガ)からで、複数回線のデータ量を共有するデータシェア機能もある。併用している端末それぞれにeSIMを入れっぱなしにできるので、使いようによってはSIMカードを抜き差しするよりも安価かつ簡単に運用できる。複数端末を併用するヘビーユーザーにも、IIJmioのeSIMはオススメだ。