レビュー

「Netflix」がついに日本上陸、スマホ動画“見放題”を比べてみた

「Netflix」がついに日本上陸、スマホ動画“見放題”を比べてみた

迎え撃つドコモ、KDDI×テレ朝の内容は

 スマートフォンやテレビで楽しめる定額制の映像配信サービスのなかでも、米国市場を席巻したとされる「Netflix(ネットフリックス)」が9月、ついに日本でも利用できるようになった。店頭では、ソフトバンク取扱店でのみ、独占的に提供され、契約や料金の支払いの手軽さがアピールされる。

 ただ、そうした“手軽さ”は、携帯電話会社による決済システムならではのもの。つまりソフトバンクだけで利用できるものではない。また携帯電話各社はかねてより映像配信サービスを提供しており、中にはそれらのサービスでしか利用できないコンテンツもある。つまり、“Netflix×ソフトバンク”がアピールするメリットは、その2社に限った話ではないはず。一方で機能面については、いくつか違いがあるようで、各サービスの方向性もちょっとずつ違う。それぞれのサービスは、どのようなポイントを特徴としているのか、今回は、携帯3社およびNetflixのサービス内容をあらためてまとめてみた。

サービス名NetflixdTVビデオパスUULA
月額利用料(税抜)ベーシック(SD画質、同時視聴数1):650円
スタンダード(HD画質、同時視聴数2):950円
プレミアム(4K/UHD画質、同時視聴数4):1450円
500円562円467円
無料期間1カ月31日間14日間1カ月
作品数(見放題/レンタル含む)非公開非公開約6200作品非公開
レンタル(都度課金)作品数―(都度課金なし)約900作品3587作品―(都度課金なし)
マルチデバイス/Chromecast対応〇(家庭用ゲーム機対応)/×最大5台(同時視聴不可)/〇台数制限なし(同時視聴不可)/〇最大5台(同時視聴不可)/×
画質プランによって異なるHD
SD(ふつう/きれい/すごくきれい)
HD/SD(高画質/標準/低画質)非公開
特徴(箇条書き)・Netflixボタン搭載リモコンのテレビが存在
・オリジナル作品に注力
・3つの料金プラン

・ドコモユーザー以外も利用可能
・テレ朝と提携、番組を配信
・映画館割引など特典
・音楽関連に注力
配信作品例
NetflixdTVビデオパスUULA
「バードマン」
(2015年アカデミー賞作品賞)
×〇(レンタル)〇(レンタル)×
「永遠の0」
(2015年日本アカデミー賞最優秀賞)
××××
「HOMELAND」
(2015年エミー賞ノミネート)
シーズン2までシーズン2まで見放題、シーズン3/4はレンタル(1話200円)レンタル:シーズン2まで1話260円、シーズン4は1話300円シーズン2まで
Woman
(日本民間放送連盟賞テレビドラマ最優秀賞)
×
作品数
(Netflixは非公開、ビデオパスは9月1日時点、dTVとUULAは9/9付け調べ)
見放題レンタル
dTV海外映画1461538
海外ドラマ66776
邦画835187
国内ドラマ26249
アニメ映画(洋邦)15961
アニメ番組3252
ビデオパス海外作品(映画・ドラマ・アニメ)539855
国内作品(映画・ドラマ・アニメ)20302732
UULA海外映画922
海外ドラマ361
邦画597
国内ドラマ158
アニメ映画(洋邦)168
アニメ番組263

Netflix

 鳴り物入りで登場した「Netflix」は、同サービスでしか視聴できないオリジナル作品のラインアップ、あるいはテレビとの親和性といった点が特徴とされる。詳細なレビューは、僚誌AV Watchの記事をご覧いただきたい。そちらでは、特筆すべきポイント、Netflixならではの体験といった内容がレポートされている。

 料金プランは画質や同時視聴数によって異なり、3つのプランが用意されている。提携したソフトバンクでは、「UULA」という動画サービスを提供してきたが、「UULAは音楽が中心」として、Netflixとは位置付けが異なると説明する。

 スマホアプリを起動すると「人気の作品」「アニメ」「国内作品」などで作品をリストアップ。出演者や作品名、監督、ジャンルなどで検索することもできる。再生時の操作はシンプルで、シークバーや30秒戻るボタンがある程度。音声や字幕の選択も可能で、複数の話が用意された海外ドラマは他の話も含めたリストが表示され、ワンタップで次の話へ切り替えることもできる。また料金プランによっては同時視聴もできる。これは、携帯キャリアのサービスにない機能だ。

 動画再生を「Wi-Fiのみ」に限定する設定もあるが基本的にストリーミングで視聴する形となり、外出先で利用する場合、データ通信量が急激に増加するだろう。どうしても外出先で利用したい場合は、SD画質の「ベーシック」のほうがいいだろうが、コンテンツをスマートフォン内にキャッシュ(ダウンロード)できない現状では、あまりオススメできない。Netflixの強みであるオリジナルコンテンツをはじめ、さまざまな作品を楽しむのであれば、通信量を気にせず利用できる、Wi-Fiのある環境や自宅のテレビのほうがいい。逆に4Kコンテンツなどを用意する、とうたうプレミアムプランを用意することもあり、当面はテレビのような大画面のほうが適したサービスだと言えるだろう。

dTV

 「dTV」はNTTドコモが提供する映像配信サービスであり、このジャンルでは460万契約を越えており、国内トップクラスの加入数を誇る。ドコモユーザー以外でも利用でき、スマートフォン、タブレットなど最大5つのマルチデバイスにも対応、Chromecastからも利用できる。

 スマートフォンへのキャッシュ(ダウンロード)も可能で、画質も選べる。ちなみにビットレートは、「ふつう:300kbps」「きれい:500kbps」「すごくきれい:1500kbps」「HD:3000kbps」となる。全ての作品でHD画質が用意されているわけではなく、対応作品はアイコンで示される。他のサービスと比べて、作品ごとに「アクション」「ヒーローもの」などとタグ付けされているのが特徴。HD作品は「HD画質で楽しもう」とあり、作品の内容に関わらず、他の作品にもアクセスしやすいタグがあるのはありがたい。

 スマホのみならずChromecast、Apple TV、Nexus Playerからも利用可能で、テレビでも楽しめる。配信作品の中には、話題の邦画と連動したオリジナル作品もいくつかある。モバイル、宅内の両方に対応した形だ。

ビデオパス

 auユーザー向けのサービスとなる「ビデオパス」は、映像コンテンツの配信のみならず、独特の特典を用意するなど、「auスマートパス」を提供してきたauらしい内容。まず映像配信については「見放題プラン」「レンタル」と分けて案内しており、都度課金となる最新作品にアクセスしやすい形。レンタル作品を毎月1本、追加料金なしで楽しめるよう、クーポンが1枚プレゼントされる。

 マルチデバイス対応で、なおかつ台数制限がない、というのは「ビデオパス」の特徴。auでは、au IDを核にした形でサービスを提供しており、1つのIDならば、デバイスという制限は必要ないといった考え方のよう。同時視聴はできないが、「この端末で使えたっけ……」と悩む必要はない。

 またテレビ朝日との協業によるコンテンツも大きな特徴の1つ。現時点では、放送との連動で、テレビ朝日のバラエティ番組の1コーナーである「お願い!ビジコンサロン~ホリエモンも驚く画期的ビジネスが続々登場~」が配信されているほか、放送中のドラマ「民王」が見放題プランのなかで配信されている。10月以降には、AKBグループのメンバーが登場するドラマが配信される予定。その詳細は9月16日に発表される予定だが、少なくともAKBファンにとっては見逃せない。配信作品数を見ると、他サービスよりも国内作品は充実しているようだ。

 そして他のサービスにないユニークな特徴が会員特典。本稿執筆時点では、ユナイテッド・シネマが最大400円、TOHOシネマズが最大300円の割引と、映画館へ誘う。Chromecastにも対応しており、手のひら、あるいはテレビの大画面で楽しむ形を提案する一方で、映像作品を堪能する場として、映画館の利用を提案するのは、ユーザーの体験を拡げようとする試みで、他にはないものと評価したい。

UULA

 ソフトバンク系の映像サービスとして提供されてきた「UULA」。今となってはNetflixの影に隠れたように思われるかもしれないが、音楽系サービスと位置付けられており、実際、アクセスしてみると、音楽のランキング、映画のランキングというボタンがまず目に入る。画面下段にあるメニューも左から「ホーム」「ミュージック」「ムービー」「探す」「マイリスト」という並びで、音楽関連の映像を強くアピールする。

 他社と比べて、少し安価な価格設定。ちなみに画質や作品タイトル数は非公開だ。「ムービー」というカテゴリーにドラマは含まれており、ちょっとわかりづらい。またdTVやビデオパスと比べると、たとえば2015年アカデミー賞作品賞の「バードマン」がUULAにだけないなど、コンテンツ面ではもう一歩、と声を掛けたくなる印象を受ける。

 テレビで楽しむ場合は、iPhoneとApple TV、あるいはHDMIケーブルとの組み合わせとなる。

テレビで、スマホで楽しめる「見放題」

 今夏、話題になった定額制のサービスと言えば「聴き放題」をうたう音楽サービスだ。それらはスマートフォンでの利用を主軸においた格好だったのに対して、映像配信サービスは、マルチデバイスが当たり前といった形で、テレビで利用できる環境も整えられており、生活のなかのあらゆるシーンで利用できる。

 いくつものサービスが登場するなかで、作品数などは日々変わるため、大きな違いがない限り、評価するポイントにしづらい。視聴中にいったんアプリを落とし続きから、あるいはスマホで見ていた作品の続きをテレビで観る、といった操作は、もはや基本的な機能として、どのサービスもおおむねサポートされており、このあたりでも違いを見出しにくい。

 ただ、少なくとも現状では、携帯キャリア系のサービス、それもdTVやビデオパスはスマートフォンへのダウンロードが可能で、Wi-Fi経由でダウンロードしておけば通信量を気にせず、いつでもどこでもコンテンツを楽しめるというのはNetflixにない大きなメリット。価格帯も携帯キャリア系のサービスは500円程度というのも見逃せないポイント。そうした携帯キャリア系の3つのサービスも、さまざまなタグを用意して見知らぬ作品への導線を使いやすくしている「dTV」、そして会員特典でユーザー体験を豊かにしようとする「ビデオパス」、音楽との関わりをアピールする「UULA」と、三者三様の方向性を打ち出している。こうした点も踏まえて、この秋、映画やドラマをたっぷり楽しんでみてはいかがだろうか。

関口 聖