「830SC」レビュー

EMPORIO ARMANIの世界観を表現したNIGHT EFFECTの魅力


背面にあしらわれているイーグルロゴ

 「830SC EMPORIO ARMANIモデル」は、著名ファッションデザイナーであるジョルジオ・アルマーニ氏とサムスン電子のコラボレーションで生まれたEMPORIO ARMANIブランドの携帯電話。本体のデザインや外周に搭載されたLEDによるエフェクト、画面テーマやサウンド、付属のアクセサリなど、プロダクト全体でEMPORIO ARMANIの世界を表現しているのが特徴だ。

外観・デザイン

 830SCは、Samsungがワールドワイド向けに「M7500」の型名で販売していた機種をベースに、Yahoo!ケータイへの対応など日本向けのカスタマイズを加えたものだ。最近の日本市場では少ないストレート型で、重量は約91g、サイズは約47.4×114.9×12mmと非常に軽量かつコンパクトだ。

 本体は凹凸の少ないシンプルな形状だが、背面にはEMPORIO ARMANIのアイテムに共通してあしらわれているイーグルロゴが埋め込まれており、形状面でそれ以外の装飾がないだけにロゴの存在感が際だっている。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色が用意されている。

 操作ボタンはシート状の数字キーのほか、右側面にカメラのシャッター、メディアプレーヤー用の再生/一時停止、前曲、次曲キー、音量の増減ボタンが用意されている。メインの方向キー周りはほぼ標準的な構成だが、クリアキーの位置のみ日本の通常の携帯電話と異なり方向キーの右隣に配置されている。慣れるまでは、数字キーの「2」あたりを押してしまうかもしれない。また、方向キーの左隣にはスイッチキーが用意されており、マルチタスク時のタスク切り替えが行えるほか、文字入力時には入力文字種の変更に使用する。


キーパッドクリアキーの配置が一般的な携帯電話とは異なる
側面部にはメディアプレーヤー機能のキーなどが配置されているもう一方の側面にはUSBの端子や、EMPORIO ARMANIのロゴがある

 外観上の最大の特徴は、東京の夜をイメージしてデザインされたという光の演出の「NIGHT EFFECT」で、本体側面のほぼ全周に埋め込まれたLEDが青・赤・緑の3色に発光する。電源オン/オフ時には3色が順番に点滅するのでかなり派手だが、通常操作時は3色のうち設定した1色がキー照明に連動して点灯するため、過剰などぎつい印象を受けるほどではない。とはいえ、暗い場所ではこの原色の存在感はかなりのものなので、クラブやバーなどで使えば目立つこと間違いないだろう。なお、発光色はメニュー画面のほか、待ち受け時に側面の前曲、次曲キーを押すことでも変更できる。


東京の夜をイメージしたというLED端末を囲むようにLEDが発光する

microSDカードスロットとストラップ固定用フック

 背面は全面が電池カバーになっており、パーツの分割ラインが見えないすっきりした仕上げになっている。電池カバーを開けると、microSDカードスロット(microSDHCカード、最大8GB)とストラップ取り付け用のフックが現れる。多くの機種では入口と出口に相当する2つのストラップ穴があり、そこにストラップのワイヤーをくぐらせるようになっているが、カバー内のフックにワイヤーをかける形にしたことでストラップ穴を1つに減らしており、見栄えが良くなっている。また、本体のどこにもソフトバンクロゴがないという点でも特徴的な機種である。

 外観だけでなく、標準で内蔵されている画面テーマなどもEMPORIO ARMANIデザインで統一されている。待受画面用の画像や着信音、アラーム音などはもちろんのこと、電波レベルの表示までイーグルロゴで表現されているのはさすがブランド携帯と言える部分だろう。メニュー画面は通常の格子状の配置のほかに、イーグルをイメージしたV字型の3Dメニューが用意されておるほか、電話番号入力時の数字の書体にも「アルマーニスタイル」という名称が付けられているほどだ。

 また、本体は専用のパッケージに収められているほか、付属イヤホンやマイク付きマイクロUSB変換ケーブルなどにもロゴがあしらわれているほどの徹底ぶりだ。


個装箱もオリジナルのもの中蓋の下に説明書などが同梱されている

基本機能

 前述の通り、もともと海外向けに作られた機種をベースにしているため、ワンセグやおサイフケータイなど日本専用のハードウェアが必要な機能は搭載されていない。また、カメラやメディアプレーヤーといった機能でも突出した部分はない。

 しかし、かつての海外向け機種の一部にあったようにソフトバンク独自のサービスにまったく対応しないというわけではなく、着うたフルのダウンロードや、S-1バトルなどを含む「選べるかんたん動画」、「S!電話帳バックアップ」のようなネットワーク系サービスなどに一定の対応は図られているので、ライトユーザーの需要には応えられるだろう。あえて機能の対応について注意すべき点を1点挙げるならば、S!アプリ非対応機種のためゲームなどを楽しむことはできないということである。

 機能は限定されているが、操作に対するレスポンスはなかなか軽快。着信音や待受画面の変更といったデータ保存領域にアクセスする操作では、メモリアクセス速度の影響か若干待たされる場面もあるが、それ以外で操作感に不満を感じることはないと言って差し支えないだろう。


数字キーでも直接指定可能なグリッド型メニューEMPORIO ARMANIのイーグルロゴをイメージしたV型メニュー

 カメラは300万画素(最大2048×1536ドット)のCMOSセンサーで、オートフォーカスも搭載している。メニューのほか側面のカメラボタン長押しでカメラ機能が起動し、同ボタンでシャッターを切ることができる。動画撮影は177×144ドットのS!メール添付モードと128×96ドットの標準モードが用意されており、標準モードの場合最大1時間の連続撮影が可能。

 カメラ自体の画質には特筆すべき点はないが、ディスプレイがアクティブマトリックス式有機ELのため視野角は広く、色も鮮やか。ただしストレート型の2.2型QVGAと画面サイズは限られている。

 メディアプレーヤーでは、Yahoo!ケータイからダウンロードしたコンテンツ、またはメモリカードに保存した音楽や動画が再生できる。再生可能なファイル拡張子はmp4/m4a/3gpで、動画の最大解像度は176×144ドット。側面の再生キーを押すと直接メディアプレーヤーを起動できる。本体には3.5mmステレオミニジャックを備えているため好みのヘッドフォンを利用可能だ。

 通話時の相手の声はヘッドフォンに出力されないが、付属のマイク付きMicro-USB変換ケーブルを利用すれば、手持ちのヘッドフォンを使ったハンズフリー通話も可能。Bluetooth機能も内蔵しているので、音楽再生や通話にBluetoothヘッドセットを使うこともできる。下り最大3.6MbpsのHSDPA、3G/GSM両エリアの国際ローミングにも対応する。


3.5mmミニジャックのイヤホンがそのまま挿せるイヤホンマイクとして使う場合はマイクロUSBに変換アダプタを接続する
変換アダプタもロゴ入り同梱されるイヤホン

 その他のツールとしては、アラーム、電卓、通貨・単位換算、世界時計、メモ帳、予定リスト(カレンダーとは非連動)、ボイスレコーダー(最長1時間録音)、ストップウォッチ、辞典(英和・和英)、ファイルビューア(PDF/Word/Excel/PowerPoint/テキスト)などを搭載している。


標準の待受テーマはイーグルが背景「アルマーニスタイル」の電話番号書体メール作成画面
文字選択画面オリジナルの着信音オリジナルの待受テーマ

位置付け

 外観・デザインの項で紹介したように、商品のありとあらゆる要素を用いてEMPORIO ARMANIの世界観を表現したという点では、通常ラインナップの機種をベースにした従来のカスタマイズモデルや限定モデルなどとは大きく異なる、まさにこれしかないスペシャルな携帯電話である。特にNIGHT EFFECTの演出は鮮烈で、「よそ行き」のシーンで自分を印象づけるアイテムとしての効果は高いだろう。

 また、基本機能をカバーしたストレート型携帯電話としても申し分ない構成にまとまっている。今年発売された機種では「731SC」が同じくシンプルなストレート型の機種になっているが、着うた、Bluetooth、国際ローミングなどに対応せず、カメラも131万画素と、メインの1台にするにはもう少し機能の充実がほしいというところだった。今回の830SCであれば、731SCに比べ幾分広い層にリーチできるスペックと言える。

 商品としては、スペックよりもむしろアルマーニというブランドがユーザーを選ぶということになるかもしれない。どこから見てもEMPORIO ARMANIのロゴが目立つ位置に配置されているので、服装やアクセサリーといったその他のファッションアイテムとのコーディネイションも求められる、と言ったら気にしすぎだろうか。そういった意味では、普段は他の機種をメインとして持ち、ちょっと気合いを入れて遊びに行くときは830SCにSIMカードを入れ替えて、という使い方もありだろう。

 



(日高 彰)

2009/10/27 15:20