レビュー

「AirPods 4」と「AirPods Pro 2」実機レビュー、2つの新製品から探るアップルが「音」へのアプローチを強めるワケ

 今年もアップルが新製品を一挙に公開するタイミング。注目製品は当然iPhone 16シリーズだが、着実に進化を感じられるのが、AirPods 4だ。

 最たる特徴は、オープン型ながら、ANC機能を搭載している点。カナル型と違い、装着時に耳との隙間が生まれるデバイスだが、ANCに対応することで、屋外での使用感が増している。

 アップルの発表通り、ノイズの除去レベルは、上位モデルのAirPods Proほどではないものの、ANCのある/なしでは音の聞こえ方が格段に変わる。

 特に電車内など、騒音の大きな環境では、再生音が聞こえにくくなるため、ANC非搭載モデルを使っていると、再生音量をつい大きくしてしまうことがある。ANCがあるだけで、この必要がなくなるため、耳への負担が小さくなる。

細かいコントロールは設定アプリから行う。このわかりやすさも、アップル製品ならではだ

 また、カナル型イヤホンはどうしても圧迫感が強くなるため、長時間使っているのが辛いという人もいるのではないだろうか。オープン型のANC搭載イヤホンは、「圧迫感が少ない」「再生音量を極端に上げなくてもいい」という2点から、比較的耳に優しいイヤホンとも言えるだろう。

 近年は、イヤーカフ型や骨伝導など、耳への負担が少ない、もしくはほぼないイヤホンが多く登場している。新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの仕事が増えたため、仕事中にイヤホンをする時間が長くなった人が多いためだろう。

 AirPodsシリーズは、スタンダードモデルがオープン型、Proモデルがカナル型という棲み分けが長く続いているが、時代に合っている(時代が追いついた?)形状は、スタンダードモデルなのかもしれない。

 また、驚いたのが、外部音取り込みモードの精度の高さ。

 外部音取り込みモードは、イヤホンに搭載されているマイクで周囲の音をキャッチし、周りの音を聞き取りやすくする機能。一度マイクを通すという性質上、少しノイズが混じっていたり、機械音の雰囲気が強く出る製品も多い。AirPods 4の場合、装着しても、普段の状態に非常に近い、クリアに周囲の音が聞こえるのが驚異的だ。個人的には、ノイズキャンセリングと同時に、外部音取り込みモードも、ぜひ試して欲しいと感じている。

 音質としては、どちらかというと中高音域のシャリシャリ感が特徴。オープン型特有の音の広がりもあり、ゲームアプリなどとの相性も抜群だ。もちろん、空間オーディオによる圧倒的な臨場感の演出力も健在である。

 さて、オープン型イヤホンは、カナル型イヤホンと比較すると、フィット感が弱く、外れやすい傾向もある。カナル型イヤホンにはイヤーチップが装着でき、ある程度自分で装着感の調節ができるが、オープン型イヤホンにはイヤーチップがないモデルがほとんどなのも、原因のひとつだ。

 例に違わず、AirPods 4もイヤーチップがないデザインになっているが、前モデルと比較するとフィット感が向上しており、個人的には好感触。前モデルではほとんどが曲線のデザインだったが、あえて少し凹凸を付けることで、引っ掛かりを生んでいる。カナル型ほどの圧迫感はないが、引っ掛かりがしっかりとあるので、長時間の着用でもストレスは感じにくい。

フィット感が強く、長時間の着用でも快適

 ちなみにANC搭載モデルは、充電ケースのワイヤレス充電、「探す」アプリによる追跡にも対応している。充電ケース自体もかなりコンパクトになったため、ポケットに入れても邪魔になりにくいのが特徴だ。

 新商品として登場したAirPods 4に加え、発売済みのAirPods Pro 2には、聴覚をサポートする機能が配信される。アップデート前より、大きな音の低減機能は搭載されているが、新たにヒアリングチェック機能、ヒアリング補助機能が使えるようになる。

 ヒアリングチェック機能は、数分間で耳の聞こえ方を行い、聴力に関するパーソナルプロファイルが保存される。このデータをヒアリング補助機能に用い、ユーザーの耳の状態に合わせた形で、音の増幅などが行われる。

 補聴器ではなく、あくまで軽度、中程度の聞こえにくさを感じている人のサポートをする機能だが、自身の耳の状態を把握し、パーソナライズ化できる恩恵は、ほとんどの人にあるだろう。何より、耳の健康状態に、イヤホンから直接アプローチすることで、病院に行かずとも手軽にチェックができるのがポイントだ。また、作成したプロファイルは、Apple IDに紐づいて別のアップルデバイスとも共有できる。

 このように、AirPods 4はオープン型を継続しながらANC機能を搭載、AirPods Pro 2では、ヒアリング補助機能を搭載するなど、2024年のアップルは耳の健康を重視しているようにも見える。

 先にも触れた通り、オンライン化が進んだことで、イヤホンをつける機会が増加した人は多数いる。これは日本だけに止まらないはずだ。耳の状態をチェックし、イヤホン側でコントロールする機能は、ハードウェア、ソフトウェアの両方を手がけるメーカーならではとも言えるだろう。アップルのような多くのシェアを持つメーカーが、「耳をいたわろう!」と呼びかけることで、ユーザーの意識が向くという意味でも、大いに意義がある働きかけだ。

 ウェアラブル製品で健康管理をするという意味では、アップルにはApple Watchシリーズが中心となることに変わりはないだろう。イヤホンも活用することで、より多く身体の状態が確認できるようになる、というのが今回のアップデート。身体のデータは、全てアップルにおまかせという時代も、意外と遠くないのかもしれないと感じる一手だ。