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「Xperia PRO」後継機ではない! ソニーがプロ向けに送り出す映像・写真伝送デバイス「PDT-FP1」の実機を見てきた

 ソニーの「ポータブルデータトランスミッター PDT-FP1」(FP1)が3月22日に発売される。価格は15万9500円。予約はすでに受け付けている。

 2月中旬以降にソニーの直営店「ソニーストア銀座・札幌・名古屋・大阪・福岡天神」で展示される予定。本稿では主に実機の写真をお届けする。

スマホではなくカメラのアクセサリー

 PDT-FP1は、ソニー製のカメラと接続、5G経由で映像や写真を伝送するための機器。屋外やWi-Fiを利用できない環境でも高速かつ低遅延な通信が利用できる。主に報道の現場などで、撮影した写真や映像などの素材伝送という用途が想定されている。一方で、Web配信のクリエイターの配信にも利用可能という。

 FP1を開発したのは、αのほか業務用カムコーダーなど、ソニーのカメラ開発を手掛けるチーム。なかでも、映像伝送における次なる価値創造には「通信」が必要という発想がFP1誕生のきっかけになった。

 Xperia PROの後継機ということではなく「映像伝送するにはどんな機器が必要か」という視点で開発されたという。

 Xperia PROを使う現場からは、排熱や安定性が課題という声が上がっており、FP1開発に活かされた。プロフェッショナル用の機材という性質上、気温40度近くにもなる夏の甲子園球場でも安定してデータ転送できるといった安定性が求められ、本体背面には大型の冷却ファンが搭載されている。本体背面左上のカメラはQRコードなどの読み取り用として搭載されたという。

 主眼とする用途はあくまで、プロ用の素材伝送でクリエイターのWeb配信も視野に入れている。一方でゲーム用途にも使えそうという声があるようだ。ソニーでは、ゲームは想定していなかったとしつつも「使ってもらえる場面が広がることはありがたい」との認識を示す。

 Android 13を搭載し、Google Playも利用できるなどスマートフォンに近い性質をもつFP1。アップデートやパッチ適用などのソフトウェアサポートも提供されるという。その期間や回数は、現時点では明言されていないが要望があれば対応を検討したい旨が明かされた。

音声通話には対応しない。ただLINEなどアプリによる通話は可能という

 同様の機器にはより大掛かりなものもあるが、FP1はスマートフォンレベルのサイズを実現。携帯性に優れるほか、OSとしてAndroidを採用しているため操作もわかりやすいなどのメリットがある。一方でFP1は、あくまでカメラアクセサリーという立ち位置。Xperiaシリーズに属する製品ではないが、Xperia PROユーザーにとっては実質的に買い替え候補に上がりそうだ。

アプリも改良、背面にはカメラと固定できるアクセサリーホール

 アプリの改良で撮影中でも転送状態の目視が可能になった。ソニー製のカメラとはケーブルで接続するだけでデータを取り込むことができ、FTPサーバーやソニーのクラウドに自動転送できる。

ソフトウェアは開発中で発売後のものとは一部異なる可能性がある

 プリインストールのアプリは、初回のみ設定すればその後はカメラを接続するだけで利用できるというスムーズさを実現した。現場でFTPの設定などをする猥雑さがなくなるなど、現場での使い勝手を考慮している。

USB Type-Cポートは2つ備える。モバイルバッテリーなどを併用することで長時間の使用にも耐えうる

 カメラとはUSB Type-CやLANポート、HDMI Type-A端子などで接続できる。さらにカメラと三脚を固定するネジ穴やケーブル止めなどを取り付けられるストラップホールを備える。FP1自体はケーブルが届く範囲でポケットにしまうということもできるが、写真のようにカメラにFP1を固定して使うこともできるようになっている。

主な仕様

 搭載するOSは、Android 13。8GBのメモリーと256GBのストレージを搭載しており、1TBまでのmicroSDカードに対応する。搭載するチップセットはクアルコム製の「Snapdragon 8 Gen 2」。ディスプレイは6.1インチ(OLED)。

 対応するSIMカードはnanoSIM。対応する4Gバンドは、1、2、3、4、5、7、8、11、12、13、17、18、19、20、21、25、26、28、29、30、32、34、38、39、40、41、42、46、48、66、71。5G(Sub6)のうちNSAでは n1、n2、n3、n5、n7、n8、n20、n25、n28、n30、n38、n40、n41、n66、n71、n77、n78、n79。SAではn1、n2、n3、n5、n7、n8、n20、n25、n28、n38、n40、n41、n48、n66、n71、n77、n78、n79。ミリ波ではn257、n258、n260、n261に対応する。上り最大1.1Gbps、下り最大8.1Gbpsで通信できる。対応するBluetoothバージョンは5.3。

 本体の大きさは約170×80×26.6mmで重さは約308g。本体端子としてHDMI Type-A、LANポート、データ転送用と充電用のUSB Type-C端子をひとつずつ備える。