レビュー

設定の工夫次第でスマホカメラはもっと楽しい! プロカメラマン内田ユキオ氏に訊く撮影テクニック

 近年のスマホカメラは性能向上が著しく、もはやコンデジを手放したという人も少なくないはず。街を歩いているとちょっとした日常の風景をスマートフォンで撮影している人の姿を見かけることも少なくない。

nova 5Tでの撮影。WB(ホワイトバランス)は曇りモード

 ところで、スマホカメラでも設定を少し調整するだけで、もっと写真を楽しめることはご存知だろうか。本記事では、スマホカメラを使ってもっと写真を楽しむための設定をお伝えしよう。撮影場所は、神奈川県鎌倉にある長谷寺。8世紀から続くという由緒正しきお寺で、今回はファーウェイ主催のメディアツアー内で撮影した。

 今回、撮影に使用したのはファーウェイ製のAndroidスマートフォン「nova 5T」。ミドルスペックながら4眼カメラを搭載する、撮影機能を重視するユーザーにおすすめのモデルだ。

設定が多彩なnova 5T

 プロカメラマン内田ユキオ氏は、「nova 5T」の魅力を象徴的な存在であるクアッドカメラや開放1.8を誇るレンズ、また最大48MPもの画素数で撮影できる点にあるという。氏が語るには、JPEGでの撮影であってもデータ量は数十MBほどもある。これは一昔前の一眼レフで主流だった画像規格「TIFF」に迫るものとのこと。

設定メニューから「その他」を選択するとこのようなメニューが出現

 nova 5Tのカメラを起動し、撮影モードのメニューをタップし「その他」を選択すると「PRO」モードを起動できる。これはホワイトバランスや絞り値、露光などをすべて自分でマニュアル設定できるモードで、使いこなせる人ならばスマートフォンのカメラとはいえ、一眼レフに迫るような迫力ある写真を撮影できる。

ホワイトバランスを駆使して紅葉を撮る

 内田氏には今回、紅葉を奇麗に撮影するポイントをいくつかご教示いただいた。ポイントは大きく3つ。「光」「配色」「色温度」だ。

 紅葉撮影における光の重要さとは主に透過光だ。たとえばステンドグラスを建物の外側から見ても、あまり奇麗には見えない。しかし、ひとたび太陽の光を透かしてみると、色調鮮やかな光が目を楽しませてくれる。紅葉もこれと同じように、「光の内側」に入り撮影することが大事だと内田氏は語る。快晴の空の下であれば、紅葉を下から覗き込むようにして撮影することで、鮮やかな色に切り取ることができる。

 2つ目の配色で心がけることは「補色」を意識すること。補色とは、「色相環」という図表で対になる色同士を示す。補色の組み合わせは互いに互いを引き立たせる効果がありこれを「補色調和」と呼ぶ。紅い紅葉の場合は、青が補色となる。青空と紅葉はとても相性が良い組み合わせと言える。紅葉の撮影時には意識して青空を画の中に入れると良いだろう。

 3つ目のポイントである「色温度」とは、カメラのホワイトバランスの調整だ。紅葉の場合、赤と黄を強調することでより鮮やかに撮影できる。多くのカメラにはホワイトバランスの設定に「蛍光灯」モードがある。これを有効にすることで、赤が強調され鮮烈な印象の写真にすることができる。黄(及び赤)を引き立たせるには、「曇り」モードを使う。これによりアンバー(琥珀色)が強調され、黄の葉が目立つ。

WBを曇りと電球で撮り比べた。角度が少々違ってしまったが、色で印象はだいぶ異なることが分かっていただけるだろうか

 撮影日当日は、あいにくの雨模様。残念ながら、青空と紅葉をひとつのフレームに収めることができなかった。内田氏によると、曇りならば逆に青っぽさを強調して撮影してみると、奇麗に撮れるという。

紅葉の華々しさはなくなるが、クールな印象の仕上がりに

 試したところ、たしかによくある紅葉の写真とは少々違った趣の写真になった。青を強調した写真は神秘的な雰囲気になり、特に若い女性に好まれることが多いのだそう。

WBはオート。なんの変哲もない
曇りにしてみると、ちょっと華やかになった。構図が凡庸なのは筆者の腕の問題である

 こちらは夜になりライトアップされた紅葉。一番上は、ホワイトバランスはオートにして撮影したもの。内田氏からはホワイトバランスを曇りモードにして、つまり黄色を強調させて撮れば、もうちょっと良い写真になるのではないかというアドバイス。こういった構図の写真はよく見るが「奇麗だから撮ってみた」という素人っぽさが目立つようだ。

散った紅葉だって奇麗に撮れる

 撮影日には、紅葉は少々散りかけといった印象。しかしながら、紅葉はなにも枝にあるときだけのものではない。このように散り、地面に落ちた葉も色鮮やかに目を楽しませてくれる。これは、ホワイトバランスを曇りモードにして撮影した写真。

内田氏にお褒め頂いたうちの1枚。落ち葉でも工夫ひとつで奇麗に撮れる

 また、内田氏は「紅葉の写真の綺麗さは必ずしも『量』ではない」という。たしかに大きな木に鮮やかに色づいた紅葉が大きく広がっていると、美しく見える。しかし、もし一部分だけでも奇麗に色づいているのであれば、それも設定や技法次第で奇麗に撮影できる。

屋根の金色の装飾がアクセントになっている

 ちなみに、撮影に使用したnova 5Tの場合、プロモードにすることで、EV値(露出量)も調整できる。わざと露出を少なく設定することで、このようなちょっとアーティスティックな写真の撮影も可能だ。

人を撮影するには斜めから

 内田氏が言うには、人を撮影するときは、斜めからの撮影を意識すること。その方が奇麗に写るという。

 下は、撮影会に同行してもらったモデルの方を真正面から撮ってみた写真。筆者的にはちょっと可愛く撮れた気もしたが、たしかに言われてみるとヒネリはない。なお、ポートレートモードを使用して撮影したため背景のボケ感を演出できている。

 下は、内田氏にお褒めいただいた写真のひとつ。「アパーチャーモード」を使用することで、背景のボケ感をより強く表現。建物を背景に使うことで奥行き感を出した。人を横にずらすことで、ポスター写真に使われそうな構図の写真を撮影できる。

ポスターになりそうと思った1枚。曇天であったことが悔やまれるか

 ほかにも、下のように、柱を前にして人を奥に配置することでちょっとグラビア的な写真にする見せ方などもある。また、被写体を光のなかに配置し、撮影者は暗闇の中から撮ることで、被写体が奇麗に見える撮り方もできる。

少々柱を入れすぎただろうか。もう少し左に寄るべきかもしれない
暗がりの中から光の中にいるモデルさんを撮影。肌が奇麗に見える

 最後はやや紅葉から逸脱しているが、いずれにせよスマートフォンのカメラでも設定や撮り方の工夫ひとつでさまざまな楽しみ方がある。機種によって設定できる項目は異なるが、近年では、プロモードやマニュアルモードなど細かな設定ができる機種も多い。年末年始の旅行シーズンには、旅先で写真撮影を楽しむのも良いだろう。

長谷寺内にあった灯籠
洞窟のライトアップも。天井はかなり低い
寺内の滝のライトアップ。WBは電球にし露出アンダー気味で撮影