レビュー

Face ID対応iPhone、ホームボタン搭載iPhoneとどう違う?

 iPhoneと言えば、ホームボタンでの操作がお馴染みだったが、2017年の「iPhone X」から撤廃された。

 すでに2年経ったとは言え、iPhone 8までのホームボタン搭載iPhoneをまだ使い続けてきた人は少なくないはず。いよいよ買い換えのタイミングを迎える人に向けて、今回は、Face ID対応のiPhoneで使い勝手がどう変わるかについて解説しよう。

 なお、現時点で筆者は2019年iPhoneの3モデルの実機にまだ触れていない。ただ、ディスプレイサイズなどの基本スペックは2018年版iPhoneと今回はほぼ同じであり、使い勝手もかなり近いと予想した上での解説としている。

Touch IDとFace ID、生体認証機能としての差は?

画面上部のノッチ部にFace IDのための「TrueDepthカメラ」が内蔵されている

 2019年のiPhoneはいずれも顔認証機能のFace IDを搭載している。従来のiPhoneでホームボタンに内蔵されていた指紋認証のTouch IDの代わりに搭載されるもので、ロック解除やアプリのセキュリティ、App StoreやApple Payの支払い認証などに利用できる。

 Face IDを使ったことがないと、「フロントカメラで顔を撮影して認証とか、精度も低くて遅いんじゃない?」と思われるかも知れない。筆者もiPhone X発売まではそう思っていたが、実際に使ってみて考えを改めた。Face IDは精度も速度も十分で、実用性はかなり高い。

 Face IDは赤外線のドットパターンを顔に照射し、それを赤外線カメラで撮影することで、顔の立体形状を認識する。顔の骨格形状を測定しているようなものなので、他人を受け入れることはほぼないし、多少表情が変わっても認識するし、多少横を向いていても大丈夫だし、複数のメガネやサングラスを学習させることもできる。

 認識速度も速く、現状でも使っていて「待たされる」というようなことはないが、iOS 13になるとFace IDの速度が30%向上するというので、さらに使いやすくなりそうだ。

Touch IDセンサを内蔵するホームボタン。マスクをしてても使えるなどの利点がある

 Face IDの弱点としては、「マスクをしていると正常に使えない」ということがある。花粉症などでマスクが必須な人は、引き続きTouch ID搭載iPhoneを使った方が良いかも知れない。一方、Touch IDの方も手袋では使えず、指紋が認識されにく人がいるといった欠点があるが、そういった人は逆にFace ID対応iPhoneがオススメだ。

 Touch IDと違い、Face IDはiPhoneに触れる必要がないのも面白い。ロック画面に通知内容のプレビューを「ロックされていないときのみ表示する」という設定がある。これをオンにしておくと、スタンドなどに置いたiPhoneに通知が届いて画面が点灯したとき、iPhoneに視線を向けるだけでロックが解除され、通知プレビューを表示できる。デスク作業中などにけっこう便利だ。

 また、Face ID対応iPhoneは消灯状態でも画面をタップするだけでロック画面を表示させられる。スタンドや卓上に置いてるときも、画面のどこでもちょっとタップするだけで通知確認できたりするのも地味に便利である。

 iPhone 11シリーズはいずれもFace IDを搭載しているが、Proモデルは「今までよりも遠くから使えるようになり、認識できる角度も広がりました」とアナウンスされているので、ハードウェア面で強化されていると見られる。

ホームボタンの代わりにジェスチャー操作

 Face ID対応iPhoneはホームボタンを搭載せず、ホームボタンを使う「ホーム画面表示」と「タスクスイッチャー表示」の操作は、ジェスチャー操作に置き換わっている。

 Face ID対応iPhoneでは、ホーム画面以外で画面最下部にバーが表示される。これがホームボタンの代わりで、これを上にスワイプするとホーム画面表示やロック画面解除が行なえる。上にスワイプしたあと、画面半ばで指を止めるようにすると、タスクスイッチャが表示される。

 アプリ起動中に画面下部のバーを右にスワイプすると、タスクスイッチャー画面を表示させずに、直前に使っていたアプリに切り替えられる。この操作、ホームボタン搭載iPhoneにはなかったものだが、覚えておくと便利な操作だ。

 これらのジェスチャー操作は、ホームボタン搭載iPhoneからの移行だと最初は戸惑うだろうが、いずれもシンプル。すぐに慣れられるだろう。

 あとはコントロールセンターの呼び出し操作も確認しておこう。ホームボタン搭載iPhoneでは、画面下部から上に向かってスワイプする。一方、Face ID対応iPhoneは画面下部→上という操作はホーム画面呼び出しと重複するため、画面右上から下スワイプに変更されている(画面左上や中央上からは通知センターが表示される)。後述するが、Face ID対応iPhoneは画面が縦長になっているので、片手操作時にコントロールセンターを表示するのがやや難しい。

5.5インチ(左)に比べ、6.5インチ(右)のキーボードはかなりデカい

 あとは文字入力時のキーボード、こちらはフリック操作がホーム画面操作に誤操作しないよう、画面下部に広めのマージンが設けられていて、ホームボタン搭載iPhoneよりも大きくなっている。Face ID対応iPhoneはディスプレイが縦長になっているが、キーボードが大きいため、キーボード以外の表示領域は大差がない感じになっていたりする。

片手での操作はちょっと難しくなる?

4.7インチ(左1番目)の前面全部がディスプレイになったのが5.8インチ(左2番目)、5.5インチ(右1番目)の前面全部がディスプレイになったのが、6.5インチ(右2番目)、というサイズ感

 片手操作をするとなると、ディスプレイサイズは大きく影響してくる。ポイントはディスプレイの縦の長さだ。

 iPhone 8 Plusなどの5.5インチは縦122mm、iPhone XSなどの5.8インチは縦135mmもある。Face ID対応iPhoneでは、コントロールセンター表示が「画面の右上から下にスワイプ」なのだが、ディスプレイがかなり縦長になっているので、片手操作だとこれがけっこうツラい。

 もしいま、iPhone 8やiPhone 8 Plusなどホームボタンありの端末を使っているなら、ディスプレイより上、インカメラや通話用スピーカーのスリットがある部分全体を片手でタッチできるかを確かめよう(画面下部側はホームボタンがある位置で、普通は片手でも指が届く)。

 だいたいの目安だが、iPhone 8など4.7インチモデルで前面全体をタッチできるなら、iPhone 11 Proなど5.8インチモデルを難なく扱えることを意味する。iPhone 8 Plusなど5.5インチモデルで前面全体をタッチできるなら、iPhone 11 Pro Maxなど6.5インチを難なく扱えることを意味する。

 どちらにせよ、親指以外でがっつり握りながら、親指で画面上部までタップするのは、なかなか難しい。スマホリングや落下防止のストラップなどを使うことをオススメしたい。

ひそかに消えた3D Touch……でもあまり影響なし

 iPhone 11シリーズは感圧タッチ機能の「3D Touch」を搭載していない。3D TouchはiPhone 6s以降、iPhone SEとiPhone XRを除く2018年モデルまで採用されていたが、2019年は最新モデルから一気に消えてしまった。

 3D Touchの代わりにiPhone 11シリーズは「触覚タッチ」に対応している。これは内蔵するハプティックアクチュエーターにより、特定のタッチ操作時に「ボタンを押した」ような感触を再現するというものだ。3D Touch同様にiPhone 6sで採用されている(Phone SEは非搭載)。

 振り返れば、3D Touchはあまり活用される場面がなかった機能だ。たとえばロック画面右下のカメラアイコンの場合、3D Touchでは押し込むようなプレス操作で起動していたが、3D Touch非対応モデルではロングタッチ(長押し)。つまり3D Touchという操作はおおむね長押しという操作で代替できる。3D Touchを実現するために必要な部材などもあわせて考えると、廃止されるのはいたしかたない印象も受ける。あまり影響はないかもしれないが、新しいiPhoneを購入した際には、こうした面でも変更が加わっていることを頭の片隅に置いても良いだろう。