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未成年のスマホ、「LINEのためにフィルタリング無効化は間違い」

 デジタルアーツは、未成年のユーザー向けに提供しているスマートフォンアプリ「i-フィルター」に関連し、未成年ユーザーがスマートフォンなどで遭いやすい被害を疑似体験できる情報モラルの教育用アプリ「スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ」の追加シナリオを公開した。利用料は無料。これに合わせて、同社からフィルタリングの最新事情も解説された。

「スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ」

ストーリー仕立てでトラブルを疑似体験

 「スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ」は、イラストやテキストなどで読み進めていくだけで、未成年ユーザーが遭いやすいトラブルの内容を疑似体験できるというもの。保護者や未成年ユーザーのほか、教育関係者が啓発活動にも使える内容になっている。フィルタリングをしないと危険、という認識はあっても、実際にどういうトラブルや被害があるのか未成年ユーザーや保護者が想像できない場合も多いとのことで、実態に近いシナリオで収録されている。また、今後は高校生などからの意見や実体験を踏まえたシナリオの追加も検討されている。

 追加されたシナリオは、SNSやゲームに依存するようになり、寝不足+歩きスマホで事故にあう「スマホ依存」のほか、高機能音楽プレーヤーでスマホと同じアプリを利用し、さまざまなトラブルに巻き込まれる「スマホ以外の端末」、写真など断片的な情報を組み合わせて個人が特定され、ストーカーまがいの被害にあう「個人情報漏えい2」、非公式のアプリストアからアプリをダウンロードし、情報を抜き取られて迷惑メールなどのトラブルにあう「危険なアプリ」の4つが追加された。いずれのシナリオでも、最後には一般的な傾向・対策や「i-フィルター」を利用した対策、各キャリア・サービス事業者が提供している情報へのリンクも用意されている。

4つを追加。「出会い系被害」など既存のシナリオも
アプリの画面
シナリオ「スマホ依存」
シナリオ「スマホ以外の端末」
シナリオ「個人情報漏えい2」。炎上した友人を擁護するが……
掲示板で主人公「あつこ」に関心が移り、個人特定が
既視感の強い内容に仕上がっている
シナリオ「危険なアプリ」
アプリ上で対策なども解説

Wi-Fiでもフィルタリング可能、音楽プレーヤーが“抜け穴”に

 アプリのシナリオ追加に合わせて、都内で記者向けに説明会が開催された。説明にあたったデジタルアーツ 経営企画部 コンシューマ課の工藤陽介氏はからは、まずフィルタリングの基礎知識が解説された。

デジタルアーツ 経営企画部 コンシューマ課の工藤陽介氏

 工藤氏は、新聞に掲載されたフィルタリング関連の記事を例に挙げ、「フィルタリング自体が難しくなっている。保護者が理解できず、カスタマイズ機能など、紙面の都合で書かれていないこともある」と、最新の内容をなかなか周知できないもどかしさを語る。また、「Wi-Fiはフィルタリングできないと言われることも多い」とし、世間では、通信事業者がモバイルネットワーク上のみでフィルタリングを提供していた時代で認識が止まっているとも指摘した。アプリとしてインストールされるフィルタリングサービスでは、標準ブラウザの禁止やURLフィルタリングなども、Wi-Fiなどの回線種別に関わらず適用できる。

 一方で、最新のiPod touchやAndroid搭載の音楽プレーヤーなど、スマートフォンと同等のアプリを利用できる端末においては、通信事業者が販売しないことなどから、未成年ユーザーが購入する場合でもフィルタリングに関して説明されないと、構造的な問題点も挙げられた。こうした端末では、同社などが提供するブラウザ型・アプリ型のフィルタリングツールをインストールして利用できるが、その存在を「周知されていないタイプの機器」とした。

スマートフォンが普及し、フィルタリングの機能も向上している
Wi-Fiタブレットや音楽プレーヤーの存在は、未成年にとってフィルタリングの“抜け穴”に

まずブラウザ型フィルタリングアプリの導入を

 工藤氏は、「保護者に『一番大事』と言うのは、ブラウザ型のフィルタリングアプリをインストールしてくださいという点。インストールすれば標準のブラウザは使えなくなり、アプリは個別に許可も可能」として、フィルタリングサービスが端末上で簡単に導入できるタイプに移行している現状や、その有用性、重要性を訴えた。

 しかし、「問題はiPhone」とも続け、ネットワークではなくアプリで制御するタイプのフィルタリングについては、「ブラウザのSafariは端末の機能制限の項目で手動で止めるしかない。必要なアプリは入れてあげて、その後にApp Storeを、機能制限で手動で禁止する。アプリを勝手に使わせないためにはこれが唯一の手段」と、アプリから制御する手法では、iPod touchやiPhoneでは簡単にはいかない実態も示した。

 工藤氏からはまた、「やってはいけない」例として、「フィルタリングを有効にしたのに、子供からLINEが使えないと言われ、LINEを使えるようにするためにフィルタリングそのものを無効にしてしまうこと」と指摘された。

OS別のフィルタリングサービスの違い
iOSはアプリでの制御が難しいため、キャリアのサービスが提供されないiPod touchなどは手動操作が中心になる
SNSのためにフィルタリング無効は「やってはいけない」として、カスタマイズの利用を訴えた

女子中学生は言葉に気を使い、自分の写真を積極的に投稿

 工藤氏によれば、未成年に対し、「言葉遣い」「自分の写真の公開」という2つの軸で「情報発信に気をつけているか」という調査を行うと、男子は中学生、高校生で言葉遣いに気をつけはじめ、自己アピール目的ではないことから自分の写真を公開しないケースが多いのに対し、女子では小学生から(コミュニケーションのための)言葉遣いに対し高い注意を払い、自分の写真を公開する頻度は女子中学生が最も高くなるという。同社が提供する「スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ」では、こうした男女の違いからくる傾向も反映されている。

 未成年ユーザーでは概ね3~4割がフィルタリングサービスを利用しているとのことだが、高校生の女子は利用率が約16%にとどまり、SNSのためにフィルタリングすべてを無効する動きも影響していると予測している。

 工藤氏は保護者に対し、スマートフォン型の端末であれば、アプリとして提供されるブラウザ型のフィルタリングツールの導入を呼びかけたほか、一部のアプリやSNSなどを許可する際にコミュニケーションを図ってほしいとしている。

女子小学生からコミュニケーションに気を遣う実態が明らかに
自己アピール目的など、ネットワークサービスに対するスタンスも男女で異なる

太田 亮三