シャープ製品説明会、国産スマートフォンで勝負する同社の狙い


シャープの大畠氏

 シャープは15日、2010年冬春モデルの製品発表会を開催した。同社は2010年をスマートフォン元年と位置づけ、従来の携帯電話の端末開発と並行して、国内外のスマートフォンに注力していく姿勢を見せた。

 プレゼンテーションを行ったシャープの情報通信事業統轄 通信システム事業本部長の大畠昌巳氏は、冒頭「今日はスマートフォンにおけるSomething New(何か新しいこと)を届けたい」と意気込みを語った。

 大畠氏は、活況を呈しているスマートフォン市場の状況を資料で説明し、Android OSのシェアが2010年に17.7%、2014年には30%になるとした。また、国内の携帯電話販売数自体は横ばいだが、こうした中でもスマートフォンの比率は高まり、2010年の10.6%から、2011年には18%以上になるとの予測を示した。

 さらに、Twitterなどのマイクロブログの利用者が拡大しており、スマートフォンを使ってマイクロブログを利用しているユーザーは、パソコンや一般的な携帯電話で利用しているユーザーを引き離し42.5%に上るとした。この傾向はSNSでも顕著で、スマートフォンを使ったSNSの利用は45.8%でトップ、2位は42%で携帯電話とパソコンの併用者となった。

 しかし、スマートフォンの利用が活発になる一方で、従来の携帯電話で利用できていたことがスマートフォンで利用できなくなる場合があるために、スマートフォンへの移行に二の足を踏んでいるユーザーがいると大畠氏は述べた。シャープの2010年冬春モデルは、こうした市場の動向を踏まえた端末展開になっているという。




多様化するニーズに応える国内モデル

 大畠氏は、「国内外でスマートフォンが伸びており、スマートフォンへのニーズが多様化しつつある。シャープでは多様化する市場に対して本格的に参入する」と宣言し、「携帯電話でできていることをスマートフォンでもやっていきたい。我々の強みであるデバイスの特長を高めるような魅力あるサービスやコンテンツを提供し、ユーザーの要望に応えていきたい」と抱負を語った。

 2010年冬春モデルのシャープは、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルに対して5モデルを投入する。大畠氏が「スマートフォンでもこれまでと同じことができる」と語るように、その端末はおサイフケータイや赤外線通信、ワンセグ、充実したカメラ機能など、国内仕様をふんだんに盛り込んだ端末となっている。

 先陣を切ってauから投入される予定の「IS03」は、3.5インチのメインディスプレイと、その下部にメモリ液晶を搭載した「コンビネーション液晶」を搭載し、957万画素CCDカメラや、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信など、シャープがこれまでに携帯電話で培ってきた機能が用意されている。

 12月には、ドコモから「LYNX 3D SH-03C」、ソフトバンクから「GALAPAGOS 003SH」が登場する予定。こちらもカメラやおサイフケータイ、赤外線通信、ワンセグといった国内仕様が盛り込まれており、3.8インチの3D液晶を装備する。

 また、シャープでは冬春モデルより、メーカーサイトの名称を「GALAPAGOS SQUARE」に変更してサービス展開していく。サイトでは、3D対応コンテンツなどが配信されるほか、3D撮影した映像のコンテンツなども展開する。

 大畠氏は、デザインへの取り組みについても言及し、たとえば3D表示対応の「SH-03C」では、端末に立体感のあるクリスタル調フレームを採用しているほか、さまざまなクリエイターがデザインした背面カバーをプレゼントするキャンペーンなどを展開することが説明された。

 このほか、ハードからソフトまでのトータルブランドとして提供する「GALAPAGOS」プラットフォームについても紹介し、まずは電子書籍を皮切りに3Dコンテンツやゲームなどのエンターテイメントコンテンツを展開するとした。タブレット端末などを利用したEコーマースや医療、教育分野など、BtoB市場向けの取り組みなどを視野にソリューション展開も計画しているという。



スマートフォン販売数、早期に500万台に

 大畠氏は、インド市場向けにGSM端末を投入することを明らかにしたほか、中国市場向けには、Android OSを中国市場向けにカスタマイズした点心OS(Tapas OS)を採用したスマートフォンを投入していることを紹介。今後、3D液晶搭載モデルを海外展開する計画にも触れた。なお、点心OSは、グーグルの地図サービスなどが利用できない中国の国内事情を背景に、代替サービスやコンテンツを盛り込んだカスタマイズOSとなる。

 シャープでは、今後2~3年でスマートフォン販売台数を500万台まで伸ばしていきたい考え。同社の2010年の目標販売台数は国内外で1100万台、売上げ規模は4500億円。携帯電話のシェアと同様に、スマートフォンでも3割程度を獲得したいとしている。大畠氏は「スマートフォンを強化するが、携帯電話のフルラインナップで展開する。スマートフォンのシフトを絶好の機会と考え、業界を活性化させていきたい」と話した。

 このほか質疑応答において、ベースモデルを国内と海外で共通化し、国内についてはローカライズして提供することで効率的な開発が可能になるとした。また、Android以外にも投入する地域に最適なOSを展開するという。

 発表会後の質疑では、携帯電話業界ではネガティブな意味で使われることもある「ガラパゴス(GALAPAGOS)」をブランド名にしたことについて、当初は驚きを持って迎えられたが、「総じて温かく頑張って欲しいという声が大きい」(大畠氏)と述べた。シャープでは、「GALAPAGOS」という名称をダーウィンの進化論の起点となった、今後の進化を感じさせるポジティブなイメージとして採用したという。



 



(津田 啓夢)

2010/11/15 16:26