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ファーウェイのヘルスケア事業と開発体制、中国本社で見た「TruSense System」と巨大研究施設の裏側

 日本ではウェアラブル製品を中心に展開するファーウェイ。今回、日本のメディアが中国の同社本社に招かれ、取材する機会を得た。本稿では、ウェアラブル開発責任者との交流会や、研究施設「HUAWEI Health Lab」の現地レポートを中心にお届けする。

深センにあるファーウェイ

ヘルスケア事業の背景と狙い:予防医療への構造的転換

写真提供:ファーウェイ

 ファーウェイがウェアラブル事業に参入して12年。同社は中国のスマートウェアラブル市場で7年連続1位を維持しており、2026年上半期にはIDC調査でグローバル出荷量第1位を獲得した。累計出荷量は2億5000万台を超え、「HUAWEI Health」アプリのグローバルユーザー数は6億2000万人、月間アクティブユーザー数は1億2800万人に達する。さらに、有料ヘルスケアサービスの利用者は50以上の地域で3700万人を超えている。

写真提供:ファーウェイ

 ファーウェイデバイス ウェアラブル&スポーツヘルスケア部門 バイスプレジデントの龔元松(キョウ・ゲンショウ)氏は、「病気を治療する医療中心の考え方から、病気を予防し早期介入する健康中心の考え方へのシフトは、世界的な流行だ」と語る。単なる運動記録にとどまらず、24時間365日を通じて身に着けていることを意識させずに生体データを測定し続けることで、個人が自らの健康リスクを事前かつ自発的に把握できる社会の実現を目指している。

ファーウェイデバイス ウェアラブル&スポーツヘルスケア部門 バイスプレジデントの龔元松氏(写真提供:ファーウェイ)

フルスタック戦略を支える基盤技術「TruSense System」

 このビジョンを実体化するため、同社はハードウェア、OS、独自アルゴリズムからオープンな研究プラットフォームまでを一体開発する「フルスタック戦略」を展開する。そのコア技術として2024年に投入されたのが「HUAWEI TruSense System」だ。

 TruSense Systemは「正確性(Accurate)」「全面性(All-round)」「迅速性(Fast)」「柔軟性(Flexible)」「開放性(Open)」「拡張性(Iterable)」という6大特性を備える。生体データ計測においては、単一時点での測定精度だけでなく、長期間にわたり連続着用した際の高い精度維持を最も重視している。

 キョウ氏は、「人体の健康データ計測において、データの正確性はすべての基本であり、正確でなければその上の分析も意味をなさない」と語る。さらに「ウェアラブル機器は医療機器と異なり、24時間継続して着用できる点に最大の強みがある」と強調した。

 人体の5大生体サイン(血圧、血中酸素、心拍数、体温、呼吸)の連続監視を実現し、例えば血圧分野では、昼間20回・夜間7回の自動計測を行う動態血圧モニタリングや、エアカフ構造と光電脈波(PPG:光で血流の変化を測る)センサーを組み合わせた24時間以内の高血圧リスク評価を可能にした。

最先端の工学技術とノイズ遮断へのこだわり

 手首での生体計測には、体の動き、皮膚の色、体毛、腕の太さ、外気温の変化など多様なノイズ要因が伴う。特に低温環境下では血管が収縮し、光センサーによる信号取得が難しくなる。

 この課題に対し、同社は光学モジュールの設計を一新。従来の2群構成から3群構成へと変更し、受光範囲とチャンネルを拡大した。これによりPPG信号の強度を15%向上させ、運動時や低温時でも正確なデータ抽出を実現した。

 なお、心電図(ECG)や心拍計測の精度については、第三者評価機関であるSGSの認証を取得したほか、各国の医療機器認証にも適合させている。

オープンイノベーションと臨床研究の成果

 ファーウェイは自社開発にとどまらず、世界中の医療機関や研究機関との共同研究を推進している。これまでに100以上の研究機関と340以上の研究プロジェクトを実施し、プラットフォーム参加ユーザー数は1800万人を超えた。

 中国の301の病院との8年間にわたる心臓健康研究では900万人以上が参加し、2万人以上の心房細動などのリスク早期発見につなげた。さらに、この臨床データを学習させた「AI問診機能」を開発。リスク検出後の初期的な問い合わせの80%をAIが自動回答することで、専門医がより深刻な症例に集中できる体制を構築している。

 このほか、復旦大学附属病院との女性健康研究では4カ月間で7万5000人以上のデータを収集したほか、マレーシア大学との糖尿病リスク研究、協和病院との高尿酸リスクスクリーニング(2000人以上、30万時間以上のデータで精度80%以上を達成)など、多角的な臨床研究を展開している。

東莞「HUAWEI Health Lab」の現場と検証体制

陸上トラックが屋外まで伸びている「HUAWEI Health Lab」

 技術の精度と実用性を担保するのが、東莞市にある「HUAWEI Health Lab」だ。同社が世界に展開する3大ヘルスラボの中で最大規模を誇り、多種多様なスポーツや環境のシミュレーション設備を備える。

さまざまな設備を有する

 施設内には、高山病対策や登山時の血中酸素変化を再現する「高原シミュレーション室」を設置。室内で時速30kmまでの滑走に対応する「スキーシミュレーター」や、秒速1.5mの水流を発生させてフォームやエネルギー消費を解析する「水泳テストプール」も完備されている。

高原シミュレーション室
標高6000m、-10度~40度などさまざまな条件を設定できる
ランニングやサイクリングの計測を実施する設備
新設されたスキーシミュレーター
水泳テストプール
ゴルフシミュレーター

 ランニングエリアにはプロ仕様のトレッドミルのほか、トラックやバスケットボールコートの床面に「3次元床反力計」が埋め込まれている。接地時の衝撃や左右の荷重バランスをミリ秒単位で計測し、ウェアラブル機器が得たデータと医療機器のデータを比較・校正しているという。

中央にはテニスコートやボルダリングがある
トレッドミル
屋外まで伸びているトラック
そこに埋め込まれている3次元床反力計
射撃競技も計測ができる
ライフル
ピストル

今後はプライバシー重視のAIも

 今後のロードマップとして、持続血糖測定器(CGM)データとPPGデータの融合による「非侵襲(針を刺さずに測定する)血糖リスク予測」の高度化や、手首の血管構造(血管の太さや血流速度)を直接分析する新センサーの開発を進めている。

 さらに、スマートウォッチ端末上で直接動作するオンデバイスAI(デバイス内で処理するAI)の搭載も目指す。個人データをクラウドに出すことなく厳格に保護した上で、個人の日常データに基づいた高度なパーソナライズドアドバイスを提供する方向へと進化を続けていく考えだ。

 なおファーウェイ・ジャパンは、SNSで10月21日に新製品を発表すると予告している。今回説明された技術や、研究施設で培われたノウハウを結集した新製品の登場が期待される。