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NTT新本社ビルは「NTT日比谷タワー」、IOWN前提の最先端ビルで世界展開の足がかりに
2025年12月8日 18:02
NTTは8日、東京都千代田区に建設中の高層ビル「NTT日比谷タワー」(2031年10月竣工)に本社を移転すると発表した。ビルはNTT都市開発と東京電力パワーグリッドが事業を進めているビルで、NTTの次世代通信基盤「IOWN」が実装され、「『光の街』づくりpowered by IOWN」と称する取り組みを進めていく。
NTT日比谷タワー
NTT日比谷タワーは、日比谷公園に隣接した内幸町一丁目街区の中地区に位置するビルで、オフィスや産業支援施設、ホール、商業、宴会場、ホテルなどの用途で構成される。
街区完成時には地下鉄日比谷駅や有楽町駅と直結し、低層階には商業施設や宴会場、ホール(400席規模)が位置し、7~10階にはオープンイノベーションの拠点になる産業支援施設、11~42階はIOWNが実装されたオフィス、44~48階には帝国ホテルとNTT都市開発による100室規模のラグジュアリーホテルが開業する。
IOWNはオフィスのほか、低層階のパブリックスペースにも展開される。たとえば、屋内貫通通路「(仮称)Cross Gate」では、大規模なパサージュ・アトリウム空間の壁面・天井一体型の大型LEDビジョンとIOWNを連携させた新たな空間体験を演出する。産業支援施設でもIOWNを活用し、世界中のさまざまな企業や人々と共にイノベーションを創出し、新しいビジネスやサービスを実証、文化発信拠点として運営する。
ビルでは、建設時と運用時の二酸化炭素排出量の削減に取り組む。また、災害などによる停電時には最大1週間(168時間)必要なエネルギーを100%継続して供給できる非常用発電機を整備している。
IOWNの光電融合デバイスを街全体にも展開、世界展開の足がかりに
NTT代表取締役社長執行役員CEOの島田明氏は、同社が実用化を進めているIOWNの光電融合デバイスを同ビルや街全体に展開していくとコメント。「新しい価値の提供と圧倒的な低消費電力を実現する“『光の街』づくりpowered by IOWN”の取り組みをNTT日比谷タワーをスタートに日本、世界へ展開していく」と話した。
IOWNについて島田氏は「オールフォトニクスネットワーク(APN)からスタートしたIOWNは、今光電融合デバイスを順次開発しているところ。来年(2026年)には第2世代の光電融合デバイスを商用化する」と説明。ビルが竣工する2031年は、ちょうど第3世代のデバイスができあがる時期になるとし、このデバイスを実装し超低消費電力化を図ることで、環境に優しくサステナビリティの高い街を作っていくと説明。できれば、パッケージ内まで“光化”する第4世代の開発が間に合えば、それを導入していきたいと意欲を見せた。
省電力以外にも、空間伝送技術による新たなエンターテインメント体験の提供にも取り組んでいくと説明。大阪・関西万博でのパビリオンでは3Dメガネが必要だったが、島田社長は「2031年にはメガネがなくても3Dで見られるような世界を実現していきたい」と6年先の“夢”を現実にしていくと話した。
IOWNが前提のビルに
NTTが手掛けるビルは、ほかのビルと何が違うのか。一言で表すと「IOWNレディ」(IOWNの本領を発揮できる状況)ということになるという。
NTTアーバンソリューションズ常務取締役の上野晋一郎氏によれば、ビル内に敷設される光ファイバーは、通常、より安価なマルチモードファイバー(1本の光ファイバーで複数の信号を扱えるもの)を用いる。しかし、IOWNの実力を活かすため、新たに建設される「NTT日比谷タワー」では、1本の光ファイバーで1つの信号のみ扱うシングルモードファイバーを基本にしている。
その上で、光電融合デバイスなどの仕組みを取り入れる。NTT常務取締役の大西佐知子氏は「光電融合デバイスで、(AI処理などを担う)GPUの発熱も下げていく」と語り、ビル全体での消費電力の抑制も狙う。
また、オフィス内で設置されるであろうWi-Fi設備も、NTT側が入居企業向けに敷設する。
NTT創業の地
島田社長は、日比谷を「NTTグループ創業の地」と説明。前身の電電公社が1961年に本社を構えていた場所で、「日比谷の地でシンボリックなものを作りたい。総合的に判断して作る決断をした」と説明。
建設費が高騰するなかでの事業だが「どういうものができあがるか、期待してほしい」と語る。加えて島田氏は、NTTの最新技術IOWNを実装するNTT日比谷タワーを「未来の街の実験場にしていきたい」と説明。NTT自らビルに入居し、自ら使い、評価し、技術を高めていく責務があると話した。現段階では、NTTの本社が入居することだけ決定しているとし、グループ企業やほかの入居企業はまだ決まっていないというが、島田氏は「グループ会社だけではなく、いろいろな企業に試してもらいたい」と話した。
なお、現在本社を構えている大手町ファーストスクエアについては、NTTグループ内のNTT都市開発が所有しており、NTTグループの手から離れることはないという。
設備の小型化にあわせて建物の在り方も変化
NTT日比谷タワーには、NTT本社のオフィス機能が移転するかたちで、島田社長によると、現段階でデータセンターや通信設備を移転させることは考えていないという。一方で、ITデバイスの小型化や低消費電力化が進めば、ビルの中にも収容する可能性があると話す。
なお、「NTTドコモが自社の代々木ビルを売却する検討に入った」という報道について、島田社長は「コメントは控える」としたものの、「通信、特にモバイル通信の設備はどんどん進化している」と指摘。NTTグループでも、電話局の大きな設備として“メタル線の固定電話”を収容する設備を挙げ、「固定電話のIP化でこれらの設備が不要になる。モバイルでも同じように設備がコンパクトになる流れがあるので、それにあわせてオペレーションの形を変えていくことは日々考えている。建物や収容する設備も変化しているので、最適な環境にしていくのは、事業を進めていく上での大きなポイント」と語った。




































