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楽天モバイルの災害対策、その最新状況と「最強衛星サービス」への期待
2025年9月2日 00:00
楽天モバイルは9月1日の防災の日にあわせ、「災害対応と衛星通信」をテーマに取り組みを紹介した。能登半島地震で得られた教訓を踏まえた災害対策の強化に加え、災害時の活用が期待される「Rakuten 最強衛星サービス」の技術的特徴について、同社の担当者が説明した。
楽天モバイルは災害時でもつながりにくい状況をゼロにすることを目標に掲げ、災害対策の取り組みを進めている。その柱は、災害対応の基盤強化、他事業者・関係機関との連携、テクノロジーの活用、という3つに整理されている。
災害対応の基盤強化
まずBCP管理本部長の磯邉直志氏は、災害対応の基盤強化について説明した。通信障害の主因となる停電、光ファイバーの断絶、設備損壊に対して、応急復旧機材の拡充を進めているという。
停電(電力断)対策としては、基地局電源確保のため、移動基地局車や移動電源車、可搬型発電機を配備。燃料満タン状態で約2日間給電可能な長時間運用型発電機や、基地局送信電力を抑えて予備電源を約30%延命する緊急省エネモードも導入した。さらにAIを活用した電力最適化により、消費電力の自動制御も可能となる。
伝送路断や機器故障には、移動基地局車や他社と共同利用の船舶型基地局を活用。加えて、Starlinkアンテナをバックホール回線として利用し、今年度から移動基地局車の半数にStarlinkを搭載する予定。
また、自衛隊の大型ヘリコプターで輸送可能なPHEVタイプのSUV車型移動基地局も導入が進む。これにより、孤立地域や離島でも最大5日間の通信維持が可能となり、全国展開を2026年3月末までに完了する計画。
他事業者・関係機関との連携
楽天モバイルは、現場対応力の強化を目的に自治体や自衛隊との連携訓練を積極的に実施している。2024年度には計105件の合同訓練・行事に参加し、災害対策本部へのリエゾン派遣や孤立地域を想定した通信機材輸送訓練を行った。さらに、自治体主催の総合防災訓練を通じ、市民への防災啓蒙活動にも取り組んでいる。
テクノロジーによる災害対応の高度化
災害対応のDX化も大きな柱。BCMシステムを導入し、停電情報や避難所の位置、障害基地局の状況を可視化。地理情報システムを用いて現場ニーズに応じた迅速な支援が可能となった。
AIを活用し、省電力運用や故障原因の迅速特定を行う仕組みも整備。将来的には台風進路予測に基づく事前設定も検討されている。
また、避難所の通信確保に向け、小型基地局「Rakuten Casa S6」をStarlinkと組み合わせて設置する計画。現行の無料Wi-Fi「00000JAPAN」に加え、将来的には楽天モバイルユーザー向けにLTE経由での緊急通報や緊急地震速報の提供も目指している。
衛星通信の新たな可能性
続いて先端技術開発統括本部ヴァイスディレクターの河炯敏氏が「Rakuten 最強衛星サービス」の技術的特徴を解説した。
楽天モバイルは、地上側のゲートウェイ設備を自社で整備するMNO主導型の運用を採用。ゲートウェイやコアネットワークの管理を委ねる他社と異なり、既存ネットワークと衛星ネットワークを柔軟に統合・運用できるのが特徴。そのため、災害時には電波の増強や帯域の拡大など、迅速かつ柔軟な対応が可能となる。
NTNの中での位置づけと強み
非地上系ネットワーク(NTN)は静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)、成層圏プラットフォーム(HAPS)の3方式に分類される。楽天モバイルはLEOを用い、既存のスマートフォンで直接通信を可能にする点で従来の衛星電話とは一線を画す。
AST SpaceMobileの衛星「BlueBird Block 2」では、巨大なフェーズドアレイアンテナを採用しており、多数の小型アンテナと回路を組み合わせることで地上に1000以上のビームを形成できる。
この技術により複数のサービスエリアを構築でき、スマートフォンから衛星へ、また衛星からスマートフォンへと電波が届きやすくなる仕組みが実現している。
さらに、衛星自体が大きいことも大きな強み。巨大なアンテナにより地上からの電波を受信しやすく、逆に衛星からの電波も地上に届きやすくなる。その結果、広範囲のエリアカバレッジを実現し、日本全国での通信を可能にすることを目指している。
1日には、総務省の会合で、新たな衛星通信に関する検討が始まった。楽天モバイルが保有する700MHz帯を使うもので、まさにAST SpaceMobileの商用化を想定したもの。
大型アンテナで広い範囲をカバーできることから、地上にある基地局では届かない場所にも電波を届けやすくなり、災害時にも空からの電波でいち早い復旧に寄与する。
「Rakuten 最強衛星サービス」では、音声・データ通信に加え、動画視聴やテレビ会議といったブロードバンド通信も提供できるとされており、災害時の安否確認から僻地での高速インターネット提供まで幅広い用途が期待される。































