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ぬいぐるみを抱きしめてコミュニケーション、auが開発

au未来研究所のコンセプトモデル第2弾「Comi Kuma」

 KDDIは、“スマートフォンの次”をテーマに研究を行っているau未来研究所の取り組みとして、ぬいぐるみ型のコミュニケーションツール「Comi Kuma」(コミクマ)を開発した。コンセプトモデルで、製品化は今後検討されていく。

「Comi Kuma」

 「Comi Kuma」は、au未来研究で開催されたハッカソンから生まれた15のアイデアのうち、プロトタイプとして試作された5つから、新たにコンセプトモデルに選ばれたもの。コンセプトモデルとしては、センサー内蔵の子供向けシューズ「FUMM」に続く第2弾となる。パートナー企業はまだないが、秋田県五城目町の実際の家庭で実証実験が実施されている。

 「Comi Kuma」には蝶ネクタイに小さなディスプレイが搭載されており、プリセットされた全11種類のスタンプの絵柄を表示可能。ぬいぐるみには体の各部にプッシュ、傾き、くすぐり、キス(二酸化炭素)などを検出する12個のセンサーが内蔵されているほか、スマートフォンと連携するためのBluetooth機能が搭載されている。

 2体のぬいぐるみをペアリングしておけば、離れた場所にある2体は通信手段としてのスマートフォンを経由し、コミュケーションを図ることができる。例えば片方の頭をなでれば、もう片方のディスプレイには時間帯に応じて「おはよう」「おやすみ」といった、SNSのスタンプのような絵柄が表示される。

 同様にぬいぐるみの手をにぎれば、もう一方には手をつないでいる「なかよし」のスタンプが表示される。腕の傾きや胴体のうつ伏せ、仰向けを検知できるほか、綿の密度を検知する「ぎゅ~っとセンサー」で、抱きしめた状態を検知可能。ぬいぐるみの口には呼気センサーが搭載され、キスを判定する。これらで全11種類のスタンプをやりとりできる。

 コアターゲットは「祖父母と孫」で、言葉や文章で思いを伝えるのがまだ思うようにできない小さな子どもが祖父母とコミュニケーションをとるといった場面を想定する。2016年1月には、少子高齢化や人口減少が課題という秋田県五城目町で、祖父母と離れた場所に住む孫というケースを中心に実証実験が実施された。実験を行った6日間の間に、利用が習慣化してスタンプを送受信する回数が増えていった様子や、「Comi Kuma」をきっかけにして、直接電話で話をする機会が増えたという結果が報告されたほか、五城目町の担当者によれば、「同じ家の中にいるように感じた」という声も多く聞かれたという。

世代を超えた非言語コミュニケーション、夫婦喧嘩の仲直りにも?

 3月29日には都内で記者向けに「Comi Kuma」の発表会が開催された。登壇したKDDI 宣伝部 担当部長の塚本陽一氏は、au未来研究所から生まれたコンセプトモデル第1弾として、1年前に発表した「FUMM」(フーム)が、大型商業施設での採用が決まったと報告。これを利用するアトラクションが2016年の夏に登場することを明らかにした。

 「Comi Kuma」は、ハッカソンで見えてきた「苦手なもの、おっくうなものを、ハッピーなものに変えられないか」という共通テーマを具体化したものとして、コンセプトモデルとしての開発が決定された。特にIoT関連かつ高齢者向けの市場は未開拓として、「商品やサービスを提供する価値があり、心と心のコミュニケーションの役に立てる」(塚本氏)とコンセプトモデルに選んだ背景が語られている。

KDDI 宣伝部 担当部長の塚本陽一氏

 ステージには開発メンバーも登壇した。「Comi Kuma」は祖父母と孫というケース以外にも、単身赴任や不在がちな親と子供の間での利用なども想定されている。ハッカソンの開発メンバーによれば、恋人同士での利用をイメージしてスタートした企画とのことで、面と向かっては伝えづらい気持ちや謝罪といった思いを間接的に伝えるツールとしても利用できるとしている。スタンプを送るには、実際にぬいぐるみに触れてなでたり、抱きしめたりする必要があり、相手が実際になでている、抱きしめていると想像できる点もポイントになっているという。

「Comi Kuma」開発メンバー

 発表会ではタレントの安めぐみ、脳科学者の中野信子氏も登壇。娘が1歳になったばかりという安めぐみは、「触ってコミュニケーションがとれるのは、小さい子供でも楽しめる。主人は地方のロケなどで家にいないことも多いが、娘とやりとりできるなら肌身離さず持っていくのでは(笑)」と、親子でも利用できそうな様子を語る。

 中野信子氏は、小さな子供の発達にとって接触や触覚は重要な要素であるとして、「教育ツールとしての可能性も秘めている」と将来性に言及。塚本氏は「ノンバーバルコミュニケーション(言葉以外のコミュニケーション)で、いろんな世代の可能性を実現できる」と期待を語っている。

ステージ上でのデモ
左から塚本氏、安めぐみ、中野信子氏
安めぐみ
秋田県五城目町の特産品

太田 亮三