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ソフトバンク決算、営業利益が初の1兆円超えに
「ドコモをあらゆる方向から抜いた」
(2014/5/7 21:24)
ソフトバンクは、2014年3月期(2013年4月~2014年3月)の決算を発表した。連結の売上高は前年比108.2%増の6兆6666億5100万円、営業利益は前年比35.8%増の1兆853億6200万円、当期の利益が前年比33.9%増の5861億円4900万円になった。Sprint買収などで売上高は倍増したほか、一時益を含む営業利益が同社として初めて1兆円を超えた。
決算発表で登壇したソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、営業利益が1兆円を突破したことをアピールしたほか、ソフトバンクモバイルがさまざまな角度や指標でNTTドコモを抜いて1位になったと強調。インターネット事業では、ヤフーとの連携や中国アリババの米国市場での株式公開手続きに触れ、現在孫氏が注力するSprint事業も語られた。
決算発表会ではこのほか、内容の見直しで提供時期の延期が発表された新料金プランについて、「1~2カ月のうちに発表できるのではないか。ただ、伸びる可能性はある。ドコモの(新料金プランの)結果を見てからになるかもしれない。ドコモの(新料金プラン提供の)直前・直後になるかもしれない」と、やや歯切れが悪いものの、おおまかな発表時期について言及。「出す以上は、ドコモに見劣りするようなものにはしない。同等か角度を変えて提供する」とした。
LTEの展開については、将来のサービスは詳細に言及しないとした上で、900MHz帯を利用する既存の無線システムの移行に「めどが立った」とし、「今年の夏、と言っておいたほうがいいだろう」と明らかにし、免許の面では4月から可能になっている900MHz帯のLTEについて、この夏から実際にサービスを提供できる見通しであるとした。孫氏は合わせて、2.1GHz帯とのキャリアアグリゲーションについても技術的に可能と導入を示唆している。
営業利益1兆円突破「あくまでも通過点」
孫氏は、営業利益が1兆円を突破した企業が、日本ではNTT、トヨタに続く3社目とアピールし、創業33年という3社の中でもっとも短い期間で達成したことを強調。今回の営業利益1兆円突破には、Sprint買収などで売上高が倍増していることや、ガンホーやウィルコムなどがグループに入ったことによる約2500億円の一時益が含まれているとした上で、「何がどう入っていたとしても、1兆を超えたのはめでたいこと。誇らしいこと」と語る。
一方で、「この数字に決して満足している訳ではない。あくまでも通過点。ああ、あんな時代もあったな、可愛いことを言っていたなと言える、そんな存在になりたい。そういう自信はある」と語り、さらなる飛躍を目指すとした。
ソフトバンクでは、今期の2015年3月期では一時益を含まない営業利益で1兆円を予測しており、約2500億円の増益を見込む。売上も7兆円から8兆円に上方修正されている。
ドコモは「上流社会の息子」
孫氏が同業他社として自社の業績と比較するのが、NTTドコモ。「売上、営業利益、純利益、ユーザー数、ネットワークの接続率、全部抜いた。どれかひとつだけでなく、あらゆる方向から抜いた。はるか遠くまで行ってみせるという思い、決意であり、実行で示したい」と、ドコモに対し勝利したとする。
また、どことは明示しなかったものの、「生まれながらにして銀のスプーンをくわえている、上流社会の息子。既定路線だけで立派に成長でき、リスクを侵さなくてもいい」と語りだし、「(我々は)生まれながらにしてハングリー精神。どんな困難があっても言い訳抜きで成長する、そういう思いで育ってきた。(追い抜けたのは)財産が違うのではない。持っている想いが違う。会社のバランスシートには乗らず、アセットとして評価はされないが、一番大きなものがそこ。少なくとも、2位、3位に甘んじるという企業カルチャーではない」とした。質疑応答でも「成長意欲、競争意欲が最大の違い。これは今後も続く」と、精神的なスタンスの違いを強調している。
国内通信事業、インターネット事業
国内の通信事業ではこのほか、前倒ししていた設備投資が今後は減少傾向で進められることや、総務省に報告義務のある重大事故を起こしていない日数が1000日を超えたとアピール。ネットワーク構築ではプラチナバンドと呼ぶ900MHz帯の拡充によるものが大きいとした。
インターネット事業ではヤフーが手がけるEコマース事業の拡充施策が「楽天を逆転した」と報告。出店の審査が完了した店舗数が7.8万店に上るとし、出店料を実質ゼロにしたことで価格の面でも弾力性が出せるとメリットを語った。
また、ヤフー経営陣から「もうひとつの成長軸を持ちたいという提案があり、それを我々が受けた」という「Y!mobile」の取り組みにも触れ、「(ヤフーの新経営陣は)本気で伸ばす意気込みで、モバイルとより連携することで成長すると信じている。何度か、本気か? と確認した上で発表した」と語った。
インターネット事業では、中国のアリババに初期から出資してきたソフトバンク。孫氏は米国市場でのIPOを控えていることで、発表済みの内容以外には触れられないと断った上で、発表済みの実績として、米eBayとAmazon.comを合計した規模よりも「絶対額で超え、伸び率は上回っている」と売上や成長が大きいことを示した。
ゲームコンテンツでは、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」がグローバルで好調なことに加え、買収したゲームメーカー、スーパーセルの2タイトルも好調、さらに3つめのタイトルも人気として、実力が一過性のものではない様子を明らかにした。
孫氏はまた、ブライトスターがグループに入ったことで、アクセサリーの販売や中古端末の買い取りと再販などの販売網がグローバルに構築できたとし、「1兆円規模の売上になり、世界中のモバイルキャリアにモノやサービスを販売できる販売網ができた」とした。
Sprint事業「決して簡単ではない」
Sprint事業については、ボーダフォンジャパンの買収やウィルコム買収になぞらえて、業績のV字回復を示唆するものの、「決して簡単ではない」と慎重な姿勢も見せる。直近の四半期の決算では反転黒字を達成しており、「年間でも営業利益黒字の見込みが立った。ソフトバンク流のマネジメントで利益を改善していきたい」と意気込みを見せる。
Sprint事業では孫氏は「簡単ではない」と繰り返し、「スケールメリットを出さないといけない。あの手この手を使って実現していく」とさまざまな方策を練っている様子。まずはこれまで手付かずだったというインフラに投資し、その後に営業活動の改善を図り、2014年の後半から顧客獲得を本格化させるという戦略を明らかにしている。
夢いっぱいの孫氏
孫氏は、Sprint事業を通じた米国通信市場への挑戦を、日本での携帯電話市場への参入と重ねあわせており、文字通り、夢中。発表会の冒頭では「最近つくづく思うのは、『人生って素晴らしい』。山あり谷ありだが、一生懸命だと、不思議とだいたいできるもの。熱い思いさえ持っていれば、どんなに難しい問題でも、乗り越える力、勇気が湧いてくる。そこに仲間たちがいると、けっこうできる。今、私は燃えている。さらなる次の目標・夢ができ、なんとしても達成するという想いが、胸の中にしっかりとできている。人生ってすばらしい。夢って、描いているものだなと」と切り出した孫氏。質疑応答の中でも「私は夢いっぱい。毎日、朝起きるのが楽しい。いろいろな手を考え、実行していくのが楽しくてしょうがない。紆余曲折あったとしても、必ず目標に近づくのではないか。まだまだ未熟だが、がんばっていきたい」と語り、挑戦しがいのある環境を得て、イキイキと過ごしている様子が語られている。
音声定額「NTTはちょっとズルい」
質疑応答の中ではこのほか、先に発表したソフトバンクが見直しを余儀なくされたドコモの新料金プランについて聞かれた。孫氏は「NTTはある意味ちょっとズルい。どこにかけてもって言うが、ドコモのシェアは1位で固定もNTT。NTTグループの中で完結でき、音声定額をやっても自分のグループに収益が入り、(定額を)実行しやすい」と環境やシェアの差を指摘。「我々は無制限に定額をゆるしていいのか。すればコストが流出する。1000回までとかのチマチマした努力をしている」と、苦肉の策であったような言及も。「ドコモより劣るようなサービスインをするわけにはいかない。我々なりの角度で提供する」と語り、「方向性として、音声サービスはVoIP、VoLTEが世界の流れ。音声の定額は時間の問題で、当たり前になる」との見方を示している。
SIMロック解除「実需は無かった。熱が冷めているのが実態ではないか」
SIMロック解除の対象端末については、「何度も発表して提供したが、実需は無かった。iPhoneの時には声があがったが、3キャリアから提供されるようになり、アップルからSIMロックフリーのiPhoneが提供されている。SIMロック端末の話は、熱が冷めているのが実態ではないか」との見方が語られた。
「発表会という形式は終わった」
2014年の夏モデルとしてラインナップする端末群が発表会の形で披露されないことについて聞かれると、孫氏は「20機種、30機種と発表する時代には必要性があった。今日は、iPhoneと数機種のスマートフォン。スマートフォンもみなAndroidという状況。スマートフォン以外の端末は技術の進化は無くなっており、過去の焼きまわしを出しているに過ぎない。(フィーチャーフォンを)発表会で仰々しく披露する意味がどれだけあるのか。iPhoneはアップルが発表し、Androidには機能の差がない。品揃えで数ばかり揃える時代ではない。発表会という形式は、終わったと認識している。今後数年、状況が変わるまでは(やらない)」という考えを明らかにした。