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Jリーグ試合会場でマイナンバーカードの実証実験へ、11月

 デジタル庁は6日、サッカー・Jリーグの試合会場でマイナンバーカードの実証実験を実施することを発表した。受託者はドリームインキュベータ。11月1日の川崎フロンターレ対鹿島アントラーズ戦、11月9日の湘南ベルマーレ対北海道コンサドーレ札幌戦の2試合が対象となる。

実証実験の背景

 デジタル庁では、マイナンバーカードを身近に感じてもらうための利用シーンとして、プロスポーツ分野での実証実験の公募を行い、ドリームインキュベータとともに、Jリーグの協力を得ながら実験の内容を協議してきた。Jリーグは、全国60クラブで自治体と連携したホームタウン活動を展開している。

 今回、マイナンバーカードによる本人確認や情報活用により、来場者の属性に応じたサービスの提供、各クラブの新規ファン獲得、既存ファンの顧客体験向上などにつなげる。

検証の内容

 ホーム・アウェイのサポーター別に、本人の同意のうえで住所情報などの基本4情報を確認し、クラブの来場者コミュニケーションなどに役立てる。

 スタジアムの場外に抽選ブースが設置され、マイナンバーカードを持参した来場者は全員参加できる。マイナンバーカードの読取りと顔認証を実施し、住所情報に基づいて抽選が行われる。

 抽選によって得られる特典は、住所情報などが反映されたものになる予定。たとえばホームサポーターはアウェイ側の地域の名産品や“おもてなし体験”、アウェイサポーターはホーム側の地域の名産品や地域振興券といった特典が想定されている。

 特典のうち「特賞」「おもてなし賞」の当選者は、別のブースに移動し、マイナンバーカードを再度読み取って顔認証を実施する。不正防止の実証として実施され、調整中の内容も含まれるが、選手との写真撮影や交流会などが予定される。

石川昭政デジタル副大臣。今回の実験の概要を説明した

川崎フロンターレや湘南ベルマーレの期待

 川崎フロンターレ 代表取締役社長の吉田明宏氏は、マイナンバーカードの活用によって、集客につながる情報が集まると期待感を示す。これまでのホームゲームでは、「JリーグID」を通じてチケット購入者の情報を把握してきたが、同伴者については情報を取得しづらいという課題があったようだ。

 「今回に限り、取得した住所情報をもとに、来場者へのお礼メッセージを後日送れるようになる」と吉田氏。マーケティングへの活用の可能性も検証し、2030年ごろに完成予定の新スタジアムを満員にできるような施策を立案したいと意気込む。

吉田氏

 湘南ベルマーレ 代表取締役社長の坂本紘司氏は、来場者向けの特典を紹介した。湘南ベルマーレのホームゲームでは、スタジアムグルメのイベント「湘南ベルマーレフードパーク」が開催され、20以上のフードトラックが平塚市総合公園に集まる。

 今回の実証実験では、フードトラックで使えるクーポンを配布する。坂本氏は「さまざまな人がベルマーレをより身近に感じる機会になれば」と語った。

 また、対戦相手となる北海道コンサドーレ札幌にちなんで、神奈川県内から来場したサポーターには北海道の名産品が、それ以外のサポーターには湘南の名産品が抽選の景品として用意されるという。

坂本氏

 今回の実証実験の受託者となるのはドリームインキュベータ。同社代表取締役社長の三宅孝之氏は、現状のマイナンバーカードの使われ方について「サポート的な位置づけにとどまっている」とし、そのポテンシャルを活かしきれていないと語る。「マイナンバーカードは単なる本人確認カードではないと(利用者に)伝え、事業者側の『マイナンバーカードが使いづらい』という認識を大きく変える」と意気込みを示した。

三宅氏

マイナンバーカードのさらなる普及に向けて

 なお、今回の実証実験ではスマートフォン搭載のマイナンバーカード機能は非対応となる。

 河野太郎デジタル大臣は、「今回の2試合に関しては、(来場者による)マイナンバーカードの持参が大前提。ただ、来春にはiPhoneにもマイナンバーカード機能が搭載され、携帯電話を持っていればマイナンバーカード機能がついてくるという時代になる」とコメントした。今回の取組みにより、マイナンバーカードの携行率アップも期待される。

 河野大臣はマイナンバーカードとアプリの連携にも触れ、「さまざまなアプリとマイナンバーカードの連携が進んでおり、スポーツの世界でもアプリ開発の進展を期待したい」と語った。

河野大臣