米FCC、生成AIによる音声を使ったロボット電話を禁止

　米国連邦通信委員会（FCC）は、選挙や営業活動などで電話先に自動的にメッセージを届けるRobocalls（ロボコール）について、生成AIを使った音声の使用を禁止する方針を示した。

　FCCは、生成AIによって作られた音声は、Telephone Consumer Protection Act（電話消費者保護法）が禁止する「人工的なメッセージ」であると認定し、ロボコールでの利用を禁じた。このルールは即時適用され、消費者をターゲットとした一般的なロボコールで音声クローン技術の使用が禁止される。

　FCCの委員長Jessica Rosenworcel（ジェシカ・ローゼンウォーセル）は、「悪意ある者たちは、生成AIが生み出した音声を使った一方的なロボコールで悪用し、弱い立場にある家族を恐喝したり、有名人になりすまししたり、有権者に誤った情報を与えたりしている。我々は、これらの黒幕である詐欺師たちに向けて警告を発する」と述べた。

　FCCによると、この数年、有名人や、政治家候補、親しい家族などの声を模倣し、誤った情報によって消費者を混乱させる手口が電話が急増しているという。現在のところ、AIが生成した音声によるロボコールにより生じた被害そのものについては刑罰の対象となるが、今回のルールによってAIによる音声を使ったロボコールそのものが禁止されるため、違法となる範囲が拡大している。

　FCCは、2023年11月に違法なロボコールとどのように対峙すべきか、またAIがどのように関与する可能性があるのか調査を開始した。AIは、知り合いの声を真似してなりすましによる迷惑電話から詐欺行為につながる可能性があり、このテクノロジーがTCPAの下で監督の対象とすべきかを検討した。

　TCPAは、FCCが迷惑電話を制限するために用いる主要な法律で、電話勧誘や自動ダイヤルシステム、人工的な電話や録音されたメッセージの使用を制限している。FCCの規則では、テレマーケティング業者は消費者にロボコールをかける前に、書面による明示的な同意を得ることが義務付けられている。今回のルール化は、AIが生成した人工音声による通話も、これらに準じて扱われることを保証するものである。

　TCPAは、FCCにロボコール業者に罰金を科す民事的な執行の権限を与えている。また、FCCは違法なロボコールを野放しにする電話会社からの電話をブロックする措置を執ることができる。さらに、TCPAは消費者個人または団体が、ロボコール業者に対して訴訟を起こすことを認めている。