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NTT Comほか、北海道内の3拠点を5G通信で遠隔視触診する実証実験
2024年1月15日 06:00
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター、北海道大学病院、慶應義塾大学らと共同で、「視て触れる」医療通信システムを開発し、北海道大学病院・帯広厚生病院・函館中央病院の3拠点を結んだ遠隔視触診の実験に成功した。
実験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進するポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業において、先導研究テーマとして採択され実施したもの。
実験の背景
北海道地域では、患者の移動や地域による医療格差が問題となっている。また、全国的にも超高齢化社会の到来や、高度専門医の都市部偏在などにより、地方での医師不足が顕在化し、遠隔医療へのニーズが高まっている。
外来診察では、医師は患者への聴聞、視診、触診とともにX線などの画像検査や採血などのデータを組み合わせて診断を確定する。特に、整形外科医・皮膚科医・乳腺外科医にとって、患部の触診は極めて重要である。
その一方で、遠隔医療を高度化するにあたって、触診が行えない点で課題があった。触診が行えないために誤診のリスクを上昇させる懸念から、遠隔医療の実現が困難であった。
さらに、触診は数値化できず医師の経験に基づいて行われたため、経時的な患部の変化や、熱感などの触覚情報から病気を推察する方法を医師間で共有することが難しかった。
技術の概要
NTTコミュニケーションズらは、遠隔医療の技術促進に向けて、触診向けセンシング機器及び触覚情報の遠隔における再現機器と制御技術と、5Gを活用した触覚情報と視診向けの高精細動画との連動技術を開発した。
医師がセンサーで取得した触診情報を動画フレームに埋め込み、触覚情報と動画内の時空間(触覚場)が完全に同期して紐付けされ、触覚情報を含むデータベースとして機能する。これにより、視触診情報を他医師へ共有でき、転院時の情報連携や、医学生への教育にも活用しやすくなる。また、視触診情報をリアルタイム伝送することで、遠隔での視触診が実現できる。
実験の詳細・成果
北海道大学病院、帯広厚生病院、函館中央病院の3拠点を5Gで結び、上腕部のリアルタイム遠隔触診を実証した。実験では、触覚センシングと4K解像度の動画を統合し、遠隔地で動画と紐付く触覚を実現した。
骨部・筋肉・腱の触感再現と弁別、各部位の弛緩・緊張状態の弁別や、逐次変化の再現、確認が複数の医師により行われた。
NTTコミュニケーションズは、触覚センシングと4K解像度の動画を統合した高精度動画データを5G通信および「docomo MEC」を活用し、遠隔地へ高速かつ低遅延通信を行う。
また、ソリトンシステムズと伝送・配信システムを連携し、独自の圧縮伝送技術を進化させ、映像伝送における最大の課題であった遅延の問題を解消し、超探知園の映像伝送を行うという。