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ノキアの最新通信機器が一堂にラインアップ「Nokia Connected Future 2023」――メタバース時代を見据えた通信の未来とは
2023年7月27日 20:47
フィンランドの通信機器メーカー「ノキア(Nokia)」は、同社の最新通信機器を紹介する「Nokia Connected Future 2023」を開催した。冒頭では、ノキアソリューションズ&ネットワークス 最高技術責任者(CTO)の柳橋 達也氏とノキア 製品管理部門責任者 RAN 製品ラインマネジメントのブライアン・チョー(Brian Cho)氏が登壇し、現在そして今後の通信業界の動向についてスピーチした。
2030年には5Gでも追いつけないトラフィックに
地政学的観点や消費行動にも着目
柳橋氏は、2030年の世界について「メタバース」と「クラウド」、「Web3」の3つのトレンドを取り上げ、これらに今後注目していく必要があるのではないかと指摘。その一方で、世界の経済の変化を見るには、テクノロジー領域以外にも注力すべきではないかとし、地政学的観点や消費行動の変化に伴う観点といったものにも注目する必要があるとした。
たとえば、世界経済のオープン化に関して、オープン性指標とよばれる世界経済の指標を取り上げ、一般的には右肩上がりに進む指標であるが、第一次世界大戦や不況などで保護主義が働き、この指標が下がることがあるという。
この2000年代においても、このオープン指標が下がる「第2の波」が引き起こされていると柳橋氏は指摘し、オープン化に逆行する脱グローバル化は、技術の標準化や調達の決定など多方面に影響を及ぼすと考えを示し、ノキアのようなグローバルビジネスを展開する企業では非常に注目すべきポイントだとした。
また、サイバーセキュリティに関して、2020年に世界で約6000億円規模でサイバー犯罪による損害が発生しており、被害規模は指数関数的に増えている状況であると説明。セキュリティの高度化の切り札とされている量子コンピューティング技術に関しても、その技術の実用化が当分先だったとしても、「量子コンピューターが実用化された瞬間にすべてのセキュリティが破られる」ことから、量子コンピューティング技術の対策は“喫緊の課題”としている。
カーボンニュートラルは“道半ば”
カーボンニュートラルに関しては、企業活動により排出される温室効果ガス以外にも「スコープ3」とよばれる付随する排出についても、まだ目が向けられていないとし、カーボンニュートラルに関する活動は、まだまだ道半ばだと指摘した。
デジタルネイティブ世代が多数を占める世界に
そして、ネットワークのトラフィックについて柳橋氏は、「デジタルネイティブ世代」と「メタバース」について注目していると説明。
デジタルネイティブ世代というトピックについては、1980年~1994年に生まれたミレニアム世代と1995年~2010年に生まれたZ世代が、2030年には世界の人口の半分以上を占めることになり、ネットワーク利用の増大が懸念されている。
メタバースの普及で、トラフィックが急増する
メタバースというトピックでは、現在デバイス上で処理しているものが将来的にクラウドで処理されるようになり、トラフィックが今よりも増大するだろうと予測しているという。メタバースの市場拡大にあたっては、コンシューマーではデバイスコストが劇的に下がらないとメタバースの本格普及には至らないとする一方、産業系デバイスについては、メタバースの恩恵が大きく、初期の段階から投資が進むとみている。
ノキアは、想定されるモバイルトラフィックについて、2030年までにメタバースによるトラフィックがそれ以外を凌ぐ勢いで増加する傾向にあるとし、そうなった際に現行の5Gでは十分でなくなるのではないかと指摘。メタバースの普及とともにコネクティビリティの発達も重要な要素になるとした。
ネットワークの「ハイブリッド化」への対応で将来性を担保
ブライアン氏は、ネットワークのハイブリッド化に対応したRAN製品の概要を説明した。
インド市場で急成長
2019年以降、新規に46社の通信事業者と提携したことを明らかにした上で、特にブライアン氏が注目しているのがインド市場だという。インド市場では、一日に使うデータ量はヨーロッパのそれを上回っており、急速に5Gネットワークが成長しているとコメント。
またノキアとしても、通信事業者からエンタープライズ向け、プライベートワイヤレスなどさまざまな通信分野でシェアを拡大し続けていることをアピールした。
ノキアでは、最高のパフォーマンスを発揮させるために、最高のソリューション、最高のハードウェア、最高のソフトウェアを用意し、それらを組み合わせることで、現場で最高の無線性能を提供できるとした。また、エネルギー効率も最大化でき、サステナビリティへ貢献しているとした。
たとえば、最新の無線機「Habrok」では、消費電力の削減と軽量化を実現しながら高性能の無線機能や広い周波数帯域幅を備えている。
これらノキアの製品群の性能は、ほかのベンダーにも勝っていることを証明する指標があるとブライアン氏は説明。通信事業者によってパフォーマンスは異なることは知られているが、同じ通信事業者内で異なるベンダー機器同士を比較すると、ノキアのパフォーマンスKPIの方が他社より優位であることが示されている。
通信の「ハイブリッド化」を見据え将来性を担保
一方で、ノキアでは今後の無線ネットワークは「ハイブリッド」ネットワークになると想定している。従来型のネットワークに加え、現在導入が進められているクラウド型のRANであったり、RANの世代交代は段階的に進むとみており、ノキアの製品は従来のものでも新しいものでもどちらも利用できる機器を用意しているという。
また、顧客やアーキテクチャー、クラウドサービスやハードウェアを問わない柔軟性が高いコラボレーションを提供する「anyRAN」ソリューションが紹介された。加えて、エネルギー効率やパフォーマンスが高いノキアの高性能RANを取り入れることで、柔軟性に加え優れた性能を発揮することができ、今後のハイブリッド化への将来性も担保できるとした。