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LINEとWeb3、世界ナンバーワンを目指すカギは「すべてのユーザーがアクセスできるサービス」

 アジアのコミュニケーションサービスとしておなじみになったLINEだが、Web3時代に向けてどのような取り組みを進めているのか。仮想通貨やNFTなどがある中、LINEはどの分野に注力していくのか。

 今回は、LINEの仮想通貨やNFTを手がけるキム ウソク氏(LINE NEXT取締役兼LINE TECH PLUS代表取締役CEO)からLINEのWeb3ビジネスについて話を聞いた。

LINE NEXT取締役兼LINE TECH PLUS代表取締役CEOのキム ウソク氏

Web3事業をグローバルで展開

 LINEのWeb3事業は、日本と韓国、米国、シンガポールの4カ国で368人以上のスタッフで取り組んでいる。

 LINEのWeb3事業は、一部のユーザーだけが利用できるのではなく「すべてのユーザーがアクセス可能なWeb3プロダクト」の展開を目指しているという。

 市場では、ブロックチェーン技術を中心としたWeb3環境が着々と構築されてきている。初期の投機市場では、暗号通貨プラットフォームの破綻や信用不安、サービスの失敗などがあったが、キム氏によるとこれらは一般ユーザーよりも投資家を重視していたサービスだったという。

 一方、2023年に一般向けのWeb3サービス市場が拡大しており、NFTによる所有財産といった「投機的な要素ではなく本当の価値を提供するサービス」が充実してきている。たとえば、NFTであれば、アート分野や知的財産以外にも不動産などさまざまな分野の資産がNFT化されてきており、その規模は今後も拡大していくとみられる。

 あわせて、Web3利用者数も拡大していくとみられ、モルガンスタンレーの調査では2025年に世界でWeb3ユーザー数が5億人を超えるという予測も立てられている。

 LINEのWeb3事業では、この拡大傾向にある「一般ユーザー向けのWeb3サービス」で、世界市場の頂点を目指すとしている。

NFT

 先述の通り市場の拡大傾向が見られるNFTについて、LINEではグローバルでNFTマーケットを提供している。

 NFTブランドストアやコミュニティを形成できるブランドストアプラットフォーム「DOSI」は2022年9月にスタートし、180カ国でサービスを利用できる。

 日本では、LINEと連携しすべてのユーザーが気軽にNFT体験できるNFT総合マーケット「LINE NFT」を展開している。日本では、80以上のブランドが展開されており、さまざまなジャンルのNFTユースケースが登場してきている。

 また、NFT資産の取引に欠かせない決済システムについて、日本のLINE Payや韓国のNAVER Payをはじめとした決済サービスのほか、LINEの暗号通貨「LINK」やクレジットカードなどさまざまな決済手段を用意しており、今後もさまざまな通貨で取引できるようになる。

 LINEの既存サービスとの連携は、決済だけでなくさまざまな連携が行われている。LINEユーザーでNFT資産を簡単に取引できるエアドロップNFTやLINEのプロフィールにNFTを設定できる機能、NFT所有で特別なLINEスタンプが利用できるなど、Web2とWeb3をつなげる取り組みを行っている。

 先述の「DOSI」は、アジアで急成長を続けており、400万を超えるアカウント数、週間100万以上のアクティブウォレット、25万以上のNFT取引数を誇っているという。

メタバースなども拡大

 多くのユーザーが利用できるWeb3サービスは、NFTだけではない。メタバースやゲームなどさまざまなサービスをLINEは展開していく。キム氏は、今後展開されるサービスの一部を取り上げた。

 「ACRZ」(アルファクルーズ)は、簡単に作成できるアバターでメタバースとデジタルファッションが楽しめるプラットフォーム。2023年第2四半期にグローバルでアプリがリリースされる予定。

 続いて、Web3ゲームのプラットフォーム「GAME DOSI」(ゲームドシ)では、開発者向けにコミュニティ機能やコンプライアンス、マーケティング面でのサポートを提供し、Web3の普及につなげるという。23年第2四半期にベータ版マーケットがローンチされ、その後四半期ごとに新たなゲームが登場する。

 アーティストとファンがつながるコミュニティサービス「AVA」(エイバ)では、Web3の技術を活用しアーティストとファンが新たな価値を創造し、つながりを深められる。たとえば、ファンがアーティストのお気に入りの瞬間をNFTに刻印できる機能や、ファンの意見を直接反映させられるコミュニティ機能などが備えられる。

 23年第2四半期にグローバルアーティストのストアがローンチされ、さまざまな機能が順次利用できるようになる。

ブロックチェーンもパブリックチェーンに

 LINEが手がけているブロックチェーン技術についても、2022年10月に第3世代のブロックチェーン「Finschia」が登場した。

 「LINK」とNFT資産を取り扱うもので、これまでよりも取引が高速に行え、通信コストも98%低減されている。また、持続可能性を考慮し、過度なトークンレバレッジや投機的な動きを防ぐ「事前発行リザーブゼロポリシー」とするほか、LINEの決済インフラの活用など、新世代にふさわしい機能/性能を持っている。

 キム氏は最後に「Web2.0時代はアジアナンバーワンを目指していたが、Web3時代は、グローバルでナンバーワンを目指す」とし、LINE全体でWeb3に取り組み姿勢をあらためて示した。