ニュース

「IIJmio」が報道陣向けのトークイベントを開催、“中の人”が語ったホンネとは?

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は20日、報道陣向けに、座談会形式のフリートークイベント「MVNO本音でトーク」を開催した。イベントでは、同社MVNO事業の関係者が登壇し、通信業界の状況などについて語った。

矢吹氏

 冒頭のあいさつは、同社執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏。同氏は「コロナ禍の2021年は、朝、昼、夕方といった通信量のピークがなだらかで、運営が楽だった」とコメント。一方、2022年からはそういったピークが復活して混雑傾向にあるとし、「どうコントロールするのかが大事」と語った。

 業績について、「法人事業が好調」と矢吹氏。今後の展望として「5G SA向けの投資をしていかなければいけない。次の世代にどうMVNOをつむいでいくかというのは課題」と述べた。

 矢吹氏のあいさつに続いて、一問一答形式のフリートークタイムが設けられた。聞き手は、この日の進行役を務めたMVNO事業部 事業統括部 シニアエンジニアの堂前清隆氏。

堂前氏

 堂前氏の問いかけに対しては、理事・MVNO事業部副事業部長の中村真一郎氏、MVNO事業部 コンシューマサービス部長の亀井正浩氏、MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏らが回答した。

楽天モバイルの“0円廃止”について

――昨年は楽天モバイルさんが0円プランをやめたことが話題になりましたが、これはIIJにとってどういう影響を与えたのでしょうか。

亀井氏
 楽天さんが(0円プランを)やめられると発表されてから、低容量帯のお客さまが増えたかなという感じがありました。一気に増えたのは、5月後半くらいですかね。2022年度はそれに支えられた部分もあったという印象です。

 あとは、端末セットで購入される方も多かった。大半の方が2GBのプランと端末をセットで購入されているのですが、安いものだけでなくミドルレンジの端末も買っていただけています。

亀井氏

「IIJmio」における取り組み

――顧客満足度を高めるためにどのような努力をしているのでしょうか。

亀井氏
 2017年ぐらいから取り組みは続けていまして、お客さまの声を聞いてサポートに反映しています。

 サポートの分野ではオプテージさんが非常に強い。良いサポートを継続するのは難しい部分もありますが、引き続きさまざまな取り組みを続けていきたいと思います。

――2023年の話ということで、「今後どのようなことをやっていくのか」というのを、直近のアップデートとあわせて教えてください。

亀井氏
 今日「ギガプラン」のアップデートをさせていただきました。4GBプランと8GBプランが、既存のユーザーの方々も含めて増量というかたちです。

 「ギガプラン」については2022年4月に割引したこともありますが、中容量帯の利用が増えてきているという印象です。データ容量のシェアも根付いてきており、あえて4GBと8GBの容量帯を増量しました。

 再来年度の5G SAに向けて何ができるのかも考えつつ、商品を作っていきたいと思います。

au通信障害の影響は?

――KDDIさんで大きな通信障害がありましたが、IIJmioへの影響はありましたか。

亀井氏
 障害当日も立ち会わせていただいて、お客さまへのアナウンスなどで対応しました。前年のNTTドコモさんの件もありますので、大規模障害に慣れている……というのは変なんですが、どうやって告知するのかというのは重要な使命だと思っていたので、そこはきっちりやらせていただきました。

 一方、障害の直後から、フルMVNOのeSIMの申込みも多数いただきました。一時的な利用というよりも、結構長い期間使っていただける回線になったかなと思います。振り返ってみると、MVNOならではのマルチキャリアの強みを活かせたと実感しています。

――通信障害を受け、総務省ではローミングの検討も進んでいます。

佐々木氏
 総務省さんから「フルMVNOとしてのIIJというかたちで参加してもらいたい」という要請があり、検討会に参加しています。

 当初は「ライフラインとしての緊急通報を守る」という観点がきっかけだと思うんですが、たとえばモバイル決済などが利用できないと、買い物もできないし電車にも乗れない、というのが今の情報化社会です。

 ですから、緊急通報にとどまらず、フルローミングまでしたほうが良いのでは、というところまでエスカレーションしています。

 緊急通報はあくまでMNOさんが頑張って、我々はお金を払ってそれを使わせていただく……というのがストーリーなんですが、データ通信まで来ると、MVNOも交換機を持っていることがありますので、まったく無縁ではなくなってきます。

 我々の場合はフルMVNOとして加入者管理のデータベースも持っていますので、そういうところも含めて「MNOさんだけの課題ではないですよ」というのは我々からも強く発言させていただいています。

佐々木氏

法人向け事業の展望

――法人向けでは、IoT用の通信回線も伸びています。(KDDIの)通信障害をきっかけに、法人のお客さまはどのようなことを考えているのでしょうか。

中村氏
 「SIMを冗長化するためにデバイスの設定を変えるのが大変で、コストもかかる」という声があります。ベストは別々のキャリアのSIMを2枚入れて、コストは1つのキャリアぐらい……というかたちだと思っていますが、なかなかそれが難しい。

 お客さまからは「設定は変えたくないが、プログラムは自分で変えられる。それを工夫してキャリア冗長できるようなサービスはないんですか」と言われて、1枚のSIMに2つプロファイルを入れるサービスをつくりました。1つはIIJ、もうひとつは別で……というサービスですね。

 当初はIoT機器向けだと思っていたので、ATコマンドベースで切り替えられるようなアプレットをSIMに入れ込んでサービスを作ったんですが、「パソコンで使いたい」とか「アプリベースで自動切り替えをしたい」という声がありまして。アプリまで含めて提供したらもっと便利になるのではということで、今はアプリをつくっている最中です。

 そうすると、たとえば(Androidタブレットなどの端末に)アプリが入っていて、SIMも入っていて、我々がつくるAPKのようなアプリを読み込んでいただくと、自動で(通信が)切り替わるようなサービスができるんじゃないかと考えています。

 あとはコスト面。2倍払うのではあまり意味がありませんので、バックアップの分はプリインストールの容量としてSIMのなかに入っていて、それは固定金額で……というようなことを考えて準備中です。

中村氏

――「こんなことがしたい」という細かい要望も多いのでしょうか。

中村氏
 話の続きになりますが、先ほどのようなSIMをつくると「ローカル5Gでもできないのでしょうか」と言われます。カスタマイズをどこまでやるかという問題はありますが、大事なニーズに応えられて、エコノミカルで使い勝手がいいソリューションを提供していきたいと思っています。

――そういうところも含めて、2023年は法人向けのところでどんなチャレンジをしたいですか。

中村氏
 IoTのコネクティビティのニーズは結構あると思っていますので、そこは引き続きやります。

 あとはeSIMですね。海外のSIM屋さんなどとも話していますが、海外のトラベルSIMは3割くらいがeSIMに切り替わっているようです。eSIMをIoT機器でも使いたいというニーズは出てくると思っていて、「ネットで買ったeSIMをIoTデバイスに乗っける」ということが安定的かつ自由にできれば世の中のしくみがだいぶ変わると考えています。

 物理SIMとデバイスがひもづいていたのが、分離される可能性が出てくる。コンシューマー向けデバイスについても、「プリインストールされたSIMを使ってください」という世界から、「eSIMをご自身のデバイスに入れ込んでください」という世界になってきます。IoTのデバイスに対して使い勝手のいいeSIMサービスなども見すえていきたいと思います。