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KDDIの「おもいでケータイ再起動」函館会場レポート――蘇った思い出を新聞紙面で新たな思い出に

 KDDIは、ユーザーが持ち込んだ古いフィーチャーフォンの再起動を手助けする企画「おもいでケータイ再起動」を北海道函館市で1月27日~29日まで開催した。

 「おもいでケータイ再起動」は、長期間使用していない携帯電話など“電源が入らなくなってしまった”フィーチャーフォンを対象に、再起動させるのを手助けする企画。auケータイだけでなく、NTTドコモやソフトバンクなどから発売されたフィーチャーフォンでも参加できる。参加費は無料。

 2016年7月にパイロット版が開催され、これまで約6年間で1万人以上のユーザーが体験しているという。東京では、月1回の頻度で開催されているが、地方ユーザーからはなかなか足を運びにくい。そこで、KDDIは、各地の支社を通じて地方でも「おもいでケータイ再起動」を開催しており、2023年度には全都道府県での開催達成を目指すとしている。

 今回は、強い寒波に見舞われながらも開催された函館市の会場の模様をお伝えする。なお、本稿では企画の趣旨をなぞり「フィーチャーフォン」を「ケータイ」と表現する。

函館でもまれな大雪

 筆者は函館まで飛行機で向かったが、吹雪で着陸がスムーズに行かず、40分程度遅れての到着となった。実際に会場に向かう中でも、乗車したタクシーの運転手が「普段の2倍雪が積もっている」というくらい、函館ではめずらしい雪だったようだ。

 雪はまだまだ積もっているものの、筆者が訪れた27日は大きく天候が崩れるようなことはなかった。平日の午前中にもかかわらず、開場してすぐに予約していたユーザーが続々と訪れ、あっという間に会場が賑やかになった。

“思い出を振り返る今”を“新たな思い出に”

 会場は、函館新聞社の本社。

 今回の函館会場では、これまでの「ケータイ再起動」や「思い出の写真プリント」に加えて、その当時の思い出を函館新聞社の記者が取材し、紙面に掲載された新聞風のものをユーザーに進呈する試みを行っている。つまり、“昔の思い出を掘り起こした今”を“新たな思い出”として記録に残すことができるわけだ。

「ケータイ再起動」の流れ

 長時間使っていないケータイの多くは、バッテリーに問題があり起動できないケースが多いという。改めて、今回の企画でどうやって「ケータイ再起動」を行っているのかを見てみよう。

 当然のことだが、ケータイはバッテリーを搭載しており、バッテリーからの電源供給で使えるようになる。このバッテリーは、長時間使われないと、バッテリー保護のために充放電ができないように自身で“ロックをかける”という。

 KDDIでは、今回の企画のために作製したという装置を使って、バッテリーのロックを開放することで、充電できるようにし、ケータイを再起動させることを助けている。

端末からバッテリーを取り外す
バッテリーを専用の装置にセットしてロック解除を試みる
特殊な形状のバッテリーに対応するためのアダプター
ほかに故障箇所がなければ、電源が入るようになる

 また、ケータイの外部接続端子は、キャリアやメーカーによってさまざまなものが存在する。KDDIでは、ショップで眠っていたものやオークションなどで可能な限り充電アダプターを用意している。また、充電池自体が故障しているケースに対応するためのバッテリーや、SIMカードを挿さないと利用できないケータイに対応するため他社のSIMカードも準備しているという。

キャリアを問わず多くのアダプターや電池パックを備えている

再び思い出に残す

 函館会場では、老若男女問わず複数のケータイを持ち込むユーザーが多く、これまで諦めていたユーザーが多いことがうかがえた。

 中には残念ながら再起動できない端末もあったものの、再起動に成功すると会場から拍手が起こったり、ユーザー自身の思い出に浸ったりする姿が見られた。

 思い出の写真が見つかったら、実際に写真用紙に印刷することができる。赤外線通信に対応したケータイや外部メモリーカードが利用できるものであれば、そのままプリンターにデータを送ることで印刷できる。

赤外線通信でプリントアウト

 思い出を蘇らせることができると、函館新聞社の記者が当時の思い出をヒアリングし、当時の写真やそれを手に持った今の写真を含めて記事化する。掲載された紙面は、上質紙に印刷され、ラミネート加工されて手渡されるので、長期間新たな思い出としてしまっておける。

函館新聞社の記者が思い出をヒアリング
すぐに紙面を作成する

 当日は、終始和やかな雰囲気に包まれており、持ち込んだユーザーやそれをサポートするスタッフ、筆者を含む報道陣皆の笑顔が絶えない空間となっていた。

 ケータイを持ったことがない筆者にとっては、見えるものすべてが新機種に見えたが、そのケータイが普及した当時に「あの頃はたくさんメモリーカードの種類があったよね」や「当時流行っていたもの」など、思い出話があちこちで起こっていた。

 「ケータイ再起動」で取り出せた写真は、当時の端末スペックの写真で解像度が低かったり色の表現性が低かったりするものが多かった。しかし、ユーザーが復活させた写真を見ると、みるみるうちに思い出の解像度が上がっていく光景を見ることができた。

 たとえば、そのケータイを持っていた時期はわかっていても、自分がそのケータイで写真を撮影していたのかどうかも覚えていないユーザーがいた。実際に再起動させてみると、当時訪れたスポットで写真をいくつも撮影しており、自分が写った写真も収められていた。持ち込んだ当初は忘れていた記憶が、芋づる式に蘇っていく光景を見ることができた。

「おもいでケータイ再起動」のきっかけ

函館会場の企画を進めたKDDIブランド・コミュニケーション本部ブランドマネジメント部推進グループリーダーの西原 由哲氏(左)と、函館新聞社営業局副局長兼事業部長の佐藤 純氏(右)

 「おもいでケータイ再起動」企画の経緯についてKDDIブランド・コミュニケーション本部ブランドマネジメント部推進グループリーダーの西原 由哲氏は、2016年の「ケータイ誕生30年企画」をきっかけに誕生したという。当時は、ユーザーの思い出に残るケータイを募ったところ、SNSなどで「ケータイの充電器がない」という声があり、当初「ケータイの充電器を用意したイベント」の開催を企画したという。

 ところが、長期間充電していないバッテリーは、過放電していたり完全に放電していたりするため、充電器を挿しただけでは電源が入らないことがわかった。

 西原氏が社内のさまざまな担当者と話したところ、昔auショップなどで「電池パックの故障判定ツール」として使われていた「バッテリーテスター」を利用すると復活できるのでは? との情報を入手できた。このバッテリーテスターでは、簡単に言うと「電池パックにショックを与えること」ができ、このショックを与えることで、先述のロックが解除されて充電ができるようになるという。

 そこで、バッテリーを復活させることも含めたイベントを開催し、評価が高かったことから継続してイベントを開催させることができたという。

「おもいでケータイ再起動」企画の意義

 「おもいでケータイ再起動」企画では、KDDIが提供してきた端末以外でも対応しており、実際にほかのキャリアのアダプターや電池も用意している。また、無料で参加できるため、当初は社内でも反対の声があったという。

 一方で、参加したユーザーからの差し入れや手紙があったり、機種変更などのタイミングで「この企画があったから」とauに乗り換えるユーザーがいたりすると西原氏はコメント。実際の運営スタッフもKDDI社員有志で運営しており、実際の業務にもつながる“気付き”も得られているといい、意義のある企画であると説明する。

 また、異業種とのコラボ企画も実施されており、そのようななか、函館会場のような新聞社との同様の企画が持ち上がったという。最初の企画は、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となってしまったが、函館会場では改めて新聞社とのコラボ企画を再起動し、今回の開催にこぎ着けることができた。

当初の企画案

 西原氏は、新聞社との企画で「昔を顧みるだけでなく、新たなスタートになるようなものになる」と、コラボレーションをさらに拡大させていく意気込みを示した。

 「おもいでケータイ再起動」について、2月24日~26日に長崎県佐世保市でテレビ佐世保と、3月9日~11日に秋田県秋田市で秋田魁新報社と実施することが決まっている。