ニュース

5GとMECで顔認証セキュリティゲートを高速化、イベントや災害時の活用見込む

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とクマヒラ、熊平製作所、リアルネットワークスの4社は、5Gと「docomo MEC」を活用し「AI顔認証モバイルゲート」の処理能力を向上させることに成功した。

5GとMEC活用で高速化

 AI顔認証モバイルゲートは、5GとMECを活用し、リアルネットワークス製の顔認証プラットフォーム「SAFR」に対応する可搬型のセキュリティゲート。通信ケーブルの接続が不要で、設置場所を選ばないメリットがある。

 イベント会場などで、チケットを提示せずに顔認証で入場でき、イベント会場に一時的に設置するといった需要にも応える。

 SAFRは、リアルネットワークス製のAI顔認識ソフトウェア。米空軍で採用された実績があるほか、国内ではドコモの顔認証プラットフォームやマイナンバーカードの保険証利用時の読み取り機などでも利用されている。

 MEC(Multi-access Edge Computing)は、サーバーを端末の近くに配置し、クラウドで行っていた処理をより高速化するというもの。ドコモのMECは全国に9カ所設置されている。ドコモの5Gの展開に合わせて全国をカバーしており、画像処理に優れるGPUの採用により、顔認証計算処理を高速化しているといった特徴をもつ。

 また、ドコモ網内での閉域通信であることから、認証データや個人情報などがインターネット上に漏洩するリスクも低く、セキュリティの高さに優れているという。

ゲート開までの時間はほぼ半減

 検証環境では、セキュリティを担うクマヒラとSAFRのクラウドをAPIで連携。クラウドへはモバイルルーター経由で5G回線で接続。カメラとしてのタブレットやクマヒラ・熊平製作所のゲート本体はイーサネットでルーターに接続されている。

 比較として用意された従来環境とは4G・インターネットという通信環境が違うのみで機器のスペックは同一のものとされた。

 顔画像の送信からゲート開扉までの1回にかかった時間を計測したほか、1分あたりのゲート通過人数をカウントするかたちで検証が行われた。

 検証結果によると、顔画像送信からゲート開扉までの時間はおよそ1.11秒。従来環境では約2.05秒とされておりおよそ46%の時間短縮につなげられた。また、1分間に通過できる人数は48人と、従来環境の39人からおよそ23%向上したことが確認されたという。

 3万人規模のイベントでゲートを4台設置した場合、従来環境では3時間かかるところを5GとMECを活用した今回の仕組みでは2.5時間に短縮できることになる。

 NTTコミュニケーションズ 5G&IoTサービス部長の藤間良樹氏は「リアルタイム性とモバイル性が両方求められ、ドコモMECの能力を最大限に発揮できる良い事例。人が介在するところでの効率化など、インフラとして大きな役割を果たせている」と意義を説明。労働人口減少などにもからめて、働き方改革への寄与やコスト削減にもつなげられると有用性をアピールした。

イベントや災害時にも活用見込む

 取り組みの背景には、セキュリティゲート設置にまつわる難しさや人による管理の課題などがある。イベント会場などで行われるチケットや身分証によるチェックは、時間がかかり非効率的。感染症リスクやスタッフ確保のコストや手間などがネックとされる。

 加えて目視確認による、誤認やチケット転売・偽造などのリスクが挙げられる。

 一方で、一時的なイベントのために常設する必要があるセキュリティゲートを設置することは難しく、一般的なインターネットを活用する仕組みではスムーズな反応やセキュリティが必ずしも担保されるとは限らない。

 今回、4社が進めているセキュリティゲートの仕組みは、屋外での利用などの一時的な設置にも対応でき、ドコモ閉域網内で処理されることから両方の課題を解決できるものとなっている。

 今後の想定としては、始業終業のタイミングで混雑する建設現場の管理やクルーズ船など不定期便の乗船チェック、イベント会場でのチェックイン、さらには避難所でのセキュリティ構築などが検討されている。製品化に向けては、今後4社間で協議の上、早期の実現を目指すという。