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イノベーションには何が必要なのか、DOCOMO VENTURES DAY 2022の基調講演

 NTTドコモ・ベンチャーズは、イベント「DOCOMO VENTURES DAY 2022」を開催した。同社が出資する企業など20社の展示のほか、ゲストを招いた講演などが行われた。

i-mode時代の経験をCVCで

 基調講演には、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役の笹原優子氏が登壇。同氏は、ドコモでi-modeの開発に携わった際に年齢や役職に縛られない、オープンでフラットな意見交換の重要性を体感した経験を明かす。

NTTドコモ・ベンチャーズ 笹原氏

 それを踏まえて笹原氏は、同氏が大切にしているというイノベーションに必要な考え方として「オープン」「フラット」「ダイバーシティ」(多様性)の3つをあげる。「答えのない世の中だからこそスタートアップ企業とNTTグループがそれぞれの立ち位置で考えて、答えを探す」ことでイノベーションを生み出すと語った。

 ミッションを「力と想いを束ね、世界の景色を変える」と再定義したNTTドコモ・ベンチャーズ。スタートアップの構想実行力と、NTTの社会実装力に加えて「それぞれの想いを束ねる」ことで、未来への推進力を生み出すと意気込みを見せる笹原氏。

 その例の一端として、米AVATOURやファイルフォースとの事例が挙げられる。日本市場への参入を検討していたAVATOURとコロナ禍におけるWeb会議ソリューションの需要、5Gの象徴的なソリューションを求めていたNTTビズリンクとNTTコミュニケーションズ、ドコモの想いが束ねられた結果だ。一方のファイルフォースは日本市場に特化して設計された国産のクラウドストレージ。コロナ禍で中小企業に向けた、クラウド型ストレージサービスの需要に対応したいNTT東日本との想いが束ねられ「コワークストレージ」の基幹技術に採用された。

 前述の3つの考え方に加えて、共創には「一人ひとりが意思を持つこと」が大事と笹原氏。自身がどういう世界を作りたいか、何が今の時代に必要かを自らの意思をもった言葉で伝えて実現することが大事という。

 これを実現するビジョンとして策定されたのが「世界の景色を変える力と想いが、世界中から集まるコーポレートベンチャーキャピタルへ。」というフレーズとした。

パートナーとイノベーションをつくる

 同じく、基調講演の場に登壇したNTTドコモ 代表取締役社長の井伊基之氏も登壇し、ドコモとしての想いを語った。

ドコモ 井伊氏

 「あなたと世界を変えていく。」というドコモグループのスローガンを示した井伊氏は、「『世界』はエンタメ、教育、交通など。『あなたと』という部分は、パートナーの皆さんと実現したいというコンセプト。(ドコモの)お客様と変えていきたいという部分もあるし、スタートアップ企業の皆さんとも世界を変えていくことをしましょう(ということ)」。

 そして、そこに必要不可欠なのが「イノベーション」と井伊氏。

 テクノロジーだけではなく、ビジネスモデルやサービスのイノベーションも重要とした同氏は、それによって社会を変えていく、新しい価値を生み出していくという願いが込めたスローガンであると説明した。

 ドコモとスタートアップ企業による事業としては、メドレーやミナカラとのコラボによるヘルスケア・メディカルが挙げられる。ヘルスケアからオンラインで処方箋を出し、薬の配送までを一気通貫でサポートすることを目指しており、他社でも同様のサービスの展開を目指す動きがあるなど、盛り上がりを見せる分野でもある。

 加えて、VR技術のスタートアップHIKKYと連携するメタバース「XR World」も展開。パソコンやスマートフォンなど、マルチデバイス対応のサービスで井伊氏は今後もメタバースの世界を増やしていきたいとしつつ、XRデバイスも自分たちで手掛けていきたいとメタバース関連へ積極的に投資していく構えを見せた。

 このほか、NTTドコモ・ベンチャーズを通じた連携としては、プラント建設管理のプラットフォームの開発があり「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」では法人向けとしてスタートアップ企業が開発する映像伝送ソリューションや警備ロボットのサービスを提供している。

 「我々は自分ひとりでは(多様なソリューションの提供を)できないので、こういったパートナーの方々と組み合わせて新しいサービスを展開していきたい。イノベーションはひとりではできないもの。先進的で新しいものを共創していく必要がある。NTTドコモ・ベンチャーズが出資、ドコモ本体が社会実装して全体でイノベーションを起こしたい。我々と一緒に仕事をさせていただける方(企業)は手を挙げてもらえれば」と井伊氏は語った。

DI3は3つの観点で運用

 NTTドコモ・ベンチャーズでは、総額150億円に上る「ドコモ・イノベーションファンド3号」を設立している。

 同社では今後、「新たなライフスタイル創出」「新企業領域の開拓」「サステナブルな社会の創造」という3つのテーマで出資を進めていくという。

 「加速していく未来」では、新たなライフスタイルの創出として、ヘルスケア、メディカル、XR、5G、IoT分野とドコモグループの重点領域での投資を進める。「新たな動き」では、次の時代の文化になるかもしれない技術やサービスへの投資を継続。さらに、ゼロ炭素社会など「サステナブルな社会への創造」として、社会課題解決を目指すスタートアップとの連携も目指していく。