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ITU-RでHAPSの「電波伝搬推定法」が国際標準化

 ソフトバンクとHAPSモバイルは、成層圏通信プラットフォーム(以下、HAPS)の移動通信システムを実現するために、高高度における電波の干渉量の推定と通信エリアの設計を行うことができる世界共通のモデルを新たに開発し、この新しいモデルが国際電気通信連合の無線通信部門(以下、ITU-R)のHAPS向け「電波伝搬推定法」へ追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-2として発行されたことを発表した。

 ITU-Rは、情報通信技術のための専門機関。また無線通信部門は、国際電気通信連合の部門の一つで、無線通信に関する標準化や勧告を行う機関のこと。

 こうしたHAPSを通信ネットワークインフラとして運用する際には、さまざまな環境下において、成層圏から地上に向けて発信する電波が届く範囲などを正確に推定する必要があり、その推定に必要な手法として、HAPS向けの「電波伝搬推定法」というものがある。

 「電波伝搬推定法」は、主に「干渉検討用電波伝搬推定法」と「システムデザイン用電波伝搬推定法」の2つで構成されており、地形による回折損失、植生損失、屋内侵入損失など、さまざまな伝搬損失の要因を環境に応じて考慮できることが求められるという。

 この「干渉検討用電波伝搬推定法」は、隣国同士や異なる無線通信システム間の電波干渉を調整するために不可欠な推定法で、一方「システムデザイン用電波伝搬推定法」は、HAPSの無線通信システムの通信エリアの設計を行う際に、HAPSの機体数や配置を詳細に検討するための推定法となっている。

 これまで、「干渉検討用電波伝搬推定法」は、大気ガスの吸収や降雨などの対流圏における損失、地上での地形による回折損失など、一部の環境における電波の伝搬損失の推定のみに対応していたが、今回改めて推定法を整理し、適用方法を明確化した。

 これにより、今までの損失に加えて、植生損失、屋内侵入損失、建物の遮へいなどを一因としたクラッター損失などによる伝搬損失の要因を追加・提案。その結果、この提案がHAPS向け「電波伝搬推定法」に追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-2として発行されることとなった。

 同時に、HAPS向け「電波伝搬推定法」の改訂の過程において、両社は「電波伝搬推定法」を構成するそれぞれの電波伝搬損失についても、環境に応じて推定できる新たなモデルを開発・提案し、その一部が国際標準化を達成したと発表。

 今回の国際標準化により、HAPSの商用化を目指している世界各国の事業者は、この推定法を活用することで、電波干渉の影響などを踏まえ、既存の無線通信システムとの周波数の共用・共存の検討や、HAPSを活用した無線通信システムの設計を効果的に行うことが可能になった。