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KDDI、移動に強くcm単位の高精度位置測位サービスを提供へ――米Swiftとの提携で
2021年7月19日 15:07
KDDIは7月19日、米Swift Navigationと業務提携契約を締結したことを発表した。この業務提携は、高速移動に強く、センチメートル単位に対応する「PPP-RTK方式」の高精度位置測位サービスの提供を見据えたもの。KDDIは、2022年春のサービス提供開始を目指す。
高精度位置測位とは
GPSなど、衛星を用いた測位システムの総称である「GNSS」。GNSSの信号は、衛星クロックや軌道情報の誤差など、さまざまな要因によって誤差が生じやすい。
そして、一般的なスマートフォンでは誤差が生じた信号をそのまま受信するため、誤差が大きくなってしまう。高精度位置測位は、そうした誤差を観測・補正する基準局を設置し、誤差を減らそうとする技術だ。
「PPP-RTK方式」の強み
基準局を用いて位置測位を行う技術の方式として「RTK方式」があり、測量や土木の分野で活用されている。RTK方式は測位の精度が非常に高くなる反面、基準局を大量に設置しなければならないことがネックとなる。
今回KDDIがSwift Navigationとの協業で整備を進めるPPP-RTK方式では、基準局の数がRTK方式の10分の1程度で済む。コスト削減につながり、利用料も大幅に安価なものになるという。
PPP-RTKという名が示す通り、衛星のみを使って広域で位置測位をする「PPP方式」のメリットも取り入れ、RTK方式とPPP方式の「いいとこどり」のような技術とされている。
また、PPP-RTK方式の長所として「移動に強い」ことも挙げられる。RTK方式では、測位対象の端末が基準局の間を動いた場合、基準局の情報を切り替える際に補正サーバーとの双方向通信が発生し、測位精度が落ちてしまうという特徴がある。
それに対してPPP-RTK方式では、あらかじめ基準局の測位データを補正サーバーに蓄積しておく。測位対象の端末からは初回起動時のみサーバーに位置を送信し、あとはサーバーからの片方向受信で情報を受け取れるため、移動時にも測位精度が落ちにくい。
こうした特徴から、PPP-RTK方式による位置測位は、スマートフォンにとどまらず、自動運転などの分野での活用が見込まれている。
今後の展望
KDDIとタッグを組むSwift Navigationは、PPP-RTK方式の高精度位置測位サービス「SKYLARK」を米国や欧州などで展開している。KDDIは今回の提携に先立ち、2021年2月10日に「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じてSwift Navigationへ出資していた。
KDDIは今後、PPP-RTK方式に対応した独自基準局を国内に構築していく。また、ビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」で企業向けのセミナーなどを実施し、高精度位置測位サービスの開発を支援する。
KDDI 事業創造本部の鶴田悟史氏は、「これからモビリティ領域を中心に、さまざまな場面で高精度位置測位技術が必要となってくると思う。今のRTK方式は定点で威力を発揮する技術だが、プロフェッショナル向けで価格も高い。それに対してPPP-RTK方式では価格を抑えられるので、あらゆるデバイスへ浸透させていける」と語った。
【2021/07/21 19:50】
初出時の「電子基準点」という表現に対してKDDIから訂正があり、「独自基準局」という表現に変更しています。また、それに合わせて本文も一部修正しました。