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KDDI、「AWS Wavelength」の提供を開始、クラウドゲームや8K配信など多様なビジネスを実現

 KDDIはAmazon Web Services(AWS)と共同でau 5Gネットワーク内において「AWS Wavelength」の提供を12月16日から開始した。

 au 5Gネットワーク内にAWSのコンピューティングおよびストレージサービスを配置。それらでデータ処理を行うことで4Gと比較した場合、遅延が半分以下にまで低減したという。5Gの特長でもある超低遅延性を実現し、クラウドゲームや8Kストリーミングなど、多様な新しいビジネスへ利用が可能で、より多数のユーザーに5Gを活用した新たなサービスを提供できるとしている。

 同サービスの提供にさきがけ、KDDIではTVT、日置電機、ブレインズテクノロジー、日本テレビの各社とともに実証実験を実施。それぞれ遠隔地の物理量計測における正確な時刻配信、製造設備の故障予兆、クラウド上でのテレビ番組編集などを行い、有効であることを実証したという。

左からAWS 岡嵜氏、KDDI 丸田氏、TVT 高橋氏(高ははしごだか)

 アプリケーション開発者は現在提供されているAWSのものと同じAPIやツールを使用可能。日本で同サービスを提供するのはKDDIの1社のみ。当初は東京の5Gエリアでのみ提供され、近日中に大阪でも提供予定。接続可能エリアは人口集中エリアを重点的に順次拡大されていくという。

低遅延性に磨きをかけたサービス

 KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発副本部長の丸田徹氏は「5Gの『低遅延性』に磨きをかけて、余すところなく引き出し新しいサービスを作り出そうというのが今回の取り組み」と語る。

 KDDIとAWSでは、2019年12月には今回のWavelengthの提供につながる取り組みを発表しており、早い段階から超低遅延なMECの実現に向けて動きを見せていた。

 従来は、4Gネットワーク(コア)→インターネットを経由してようやくクラウドへ接続するという仕組み上、モバイルネットワークとネット回線の遅延の影響を受けるため、遅延が大きいだけでなく、遅延変動の予測も難しい側面があった。

 au 5Gにおいて「5Gの低遅延性を最大限に引き出し、ダイレクトに提供したい」というKDDIと、「5Gの低遅延性をユーザーへ届けたい」というAWSの思いの一致から今回のWavelengthの提供に至ったという。

 ビジネス開発拠点の「KDDI DIGITAL GATE」において、2021年1月から実際にWavelenthを体験できるようになるという。

多様なサービスで活用

 AWS 執行役員 技術統括本部長の岡嵜禎氏は「5Gで新たなサービスが生まれてくる。そこで重要なのはモバイルネットワークに近いところで処理を行い(低遅延性を高めて)5Gの価値を最大化すること」と語る。

 岡嵜氏は、Wavelengthの特徴を通信サービスを提供している企業の5Gネットワーク内に設置されていることと説明。またAWSリージョンとWavelength Zoneを単一の画面で管理できることがメリットだという。これにより、アプリ開発者はWavelengthに対応するために新たに知識を得る必要がなく、負担軽減につなげられる。

 また、一度開発したアプリケーションは、グローバルなキャリアネットワーク間で展開していけることが大きな特徴という。

 インターネットを介してAWSへ接続する従来の構成では数十秒ミリ秒の遅延が発生するが、Wavelengthを活用すると、遅延低減や帯域、転送時間の削減に繋げられる。

 岡嵜氏は、Wavelengthを活用したサービスの一例として医療分野においての内視鏡検査との組み合わせや遅延が製品品質に関わるような工場における異常検知や処理効率化などスマートファクトリー化などを挙げた。

ゲームや時刻補正、異常検知にも

 ネットワークゲームの開発を手掛けるTVT 最高技術責任者の高橋俊成氏はゲームにおける低遅延ネットワークの重要性を語る。

 ネットワークゲームの開発においてはどのような回線環境であってもゲームプレイに影響しないよう工夫をこらす必要があるものの、遅延の影響で、結果的に機能の削減につながるなどの課題があるという。

 KDDIとAWSとの実証実験を実施したTVTでは、一例としてライブストリーミングを模した実験の様子を公開。生配信のキャラクターと視聴者が後出しジャンケンで対決するもので、比較のためWavelengthを利用した接続と4G回線での接続の端末を用意。

 実際にスマートフォンを保持した人間とBOTのどちらで試してもWavelength接続のほうが勝利数が多く、より低遅延性が高いことを実証した。

 このほか、日置電機でもGPSを使った時刻補正が難しい場所での電源品質測定において実用的な使い勝手を確認したとしており、ブレインズテクノロジーでは、製造現場におけるAI異常検知において4G比でおよそ43%の遅延改善を達成した。