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ICTと人の調和で「最も英会話が上達する場所」を目指すイーオンの取り組み

2020年はICTの活用をさらに推進

 イーオンは27日、都内で2020年の新事業方針記者発表会を開催、2020年度はこれまでも進めてきた「教育×ICT」をより一層推進していく方向性を示した。

 イーオン 代表取締役社長の三宅義和氏はイーオンが目指す到達点を「日本一学習効果が上がる英会話学校になる、生徒がくじけない仕組みをつくる」という姿だと語る。同社が掲げる2020年の事業方針は「教室価値」×「EdTech」(エドテック)のハイブリッドで実現する「デジタル価値によるパーソナライゼーション」だ。

三宅義和氏

 EdTechとは、Education(教育)とTechnology(技術)のかばん語で、教育にICT技術を取り入れることなどを指す。三宅氏は、英会話スクール業界では、ネット専業の事業者の乱立などの細分化が進む一方で、業界全体としては、テクノロジーの波に乗り遅れている感が否めないと指摘する。

 また、EdTechを進めていく背景としては、教室で集団で学ぶことと並行して、テクノロジーを活用した個別学習など「アダプティブラーニング」の台頭があるとした。

個々の生徒に合わせたコーチングシステムを導入へ

 イーオンではこれまで、業界他社にさきがけて、英会話教育の中にテクノロジーを取り入れてきた。1998年にオンライン受講「イーオンインターネットレッスン」を取り入れたことを皮切りに、2017年にはVRを活用した「英語でおもてなしガイド(VR対応)」の提供や総合英語学習サイト「AEON eラーニング」を提供。2018年にはKDDIグループの一員となり、KDDI総研とともに「日本人英語話者向け発音自動評価システム」を開発した。

 新たな施策として、2020年からは「使ってみて、間違ってみて記憶を強くし、太くする個々人に応じたレッスン連動のコーチング」を行うという。昨年にトライアルを行っており、スピーキング力の向上に主眼を置いた内容となっているという。従来のアプリと教室でのレッスンの連動に加えて、自宅学習での「STPD」(See Think Plan Do)を行い、英会話習得に必要不可欠な復習のサポートをする。

 具体的には、生徒の英会話力や気質の診断、学習成果の検査を行い、課題、強化ポイントの抽出、学習方法を変更。目標やそれに対する納得感を醸成した後に実際に新たな方法の学習を実施、これを毎月繰り返すというサイクル。

向井崇浩氏

 このコーチングは生徒がそれぞれの目標を達成するための対話力の強化であり、個々に適した勉強方法をアドバイスできるという。

 トライアルから得た教訓として、「データ+人のハイブリッドの重要性」があると向井氏。多面的なデータを基に人間が適切なアドバイスを与えることが重要という。また、学習の推進力としての「目標」の重要性、スクールに来て頑張りを褒められたり、評価されたりすることがモチベーションの維持に関わることが分かった。加えて、生徒それぞれのライフスタイルや性格に応じた学習方法が重要という。内向的な人、外向的な人にはそれぞれ学習動機づけの傾向が違い、一人ひとりに合わせた始動が重要だとした。

 また、イーオンでは上達目標としてはいないものの、コーチングを取り入れることで、TOEICやCASECなどの外部試験でのスコアにも上昇が見られたという。

 現時点でサービス名など詳細は検討中という。イーオン 経営戦略本部 運営戦略部 課長の向井崇浩氏によると「イーオンらしい名前、スピーキング力をアピールする形で現在、検討中」。2020年夏頃を目処に提供開始するという。

これまでもさまざまなEdTechを取り入れてきたイーオン

 2020年からの取り組みにつながる、イーオンのこれまでのDXの実績として、アプリとレッスンの連動学習が挙げられる。イーオンでは、TOEICやiELTSなどの試験に合格するための英語ではなく、実際の生活で役に立つ英会話を重視していることが特徴。

これまで行ってきたDXの事例。AI Study Designは2020年4月スタート

 同社の英語習得のプロセスでは、インプットからアウトプットまでに段階を踏んで習得する仕組みになっている。レッスン日に学校に来て学習するだけでは効率が悪く、なかなか生徒の力に結びつかない。

 従来は、生徒にワークブックや学習用CDなどを渡し、学習の仕組みを形作ってきた。しかし、現在ではそれらはすべてアプリに置き換えられた。生徒はすきま時間でも学習ができ、結果としてさらに効率を上げることが可能となったという。

 2つ目の実績として、学習停滞期からの早期救出がある。生徒が英会話を習得する過程として、必ず学習意欲停滞期(プラトー期)が訪れるという。生徒は、頑張っても身につかない状況に陥ってしまうと、次第に学習意欲を無くし途中で学習を放棄してしまう可能性もある。

 イーオンでは、レッスンへの取組状況やレッスン中の様子など多面的なデータから生徒がプラトー期にあることを早期に認識し、カウンセリングなどを実施して必要に応じて学習方法の変更などを行うという。これにより生徒の学習意欲を励起し、プラトー期からの抜け出しをサポートするシステムとなっている。

 アプリの学習だけで、英語を覚えられるのなら教室は不要ではないか、という捉え方もできるが、向井氏によるとしっかり英語を習得するには実際に通じるかの検証や集団の中でも通じる会話力が重要で、アプリだけで学習を完結させることは困難であるという。

 イーオンでは、DXを「人とITの絶妙なブレンド」としている。テクノロジーと人の介入を組み合わせて、「生徒がくじけない仕組み」を作り出す。イーオンのDXが目指す将来像は、生徒の特性、学習内容、成果のデータを備蓄し、それらの関係性を検証することにより、それぞれの生徒に最適な「上達ロードマップ」を示すこととしている。