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日本食の歴史を世界に発信、オンライン美術館「Google Arts & Culture」に新コンテンツ

 「Google Arts & Culture」は、スマートフォンアプリまたはWebサイト上で、世界各国の美術館などに収蔵されている芸術作品を高解像度画像で鑑賞したり、あるいはストリートビューのように館内を歩き回りながら疑似体験したりできるサービスだ。

 2011年の開始当初はGoogle アートプロジェクトと呼ばれていたが、後に「Arts & Culture」にリニューアル。その名の通り、今や芸術作品が並ぶオンライン美術館に留まらず、世界各国の文化を伝えるコンテンツの拡充にも注力している。

 このGoogle Arts & Cultureの新コンテンツとして、日本食の歴史と魅力を伝える「Flavor of Japan - 奥深き日本の食文化を召し上がれ」が9月10日に公開された。

さまざまな切り口で日本食を学べるオンライン展示

アミット・スード氏

 Google Arts & Cultureを統括するアミット・スード氏は、「芸術は制限のあるものではいけない、高度な文化と大衆の文化を切り分けてはいけないと考えている」とコメント。Google Arts & Cultureは非営利のプロジェクトで、機械学習を活用した絵画のデジタル化などGoogleが持つ技術を活かし、美術館や博物館に足を運べなくても、より多くの人が芸術や文化に触れられる機会を提供している。

 日本食をテーマにした理由としては、訪日客を中心とした海外での人気の高さはもちろん、食事はその国の文化そのものだと説明。

 3000以上の画像と動画、ストリートビューを使い、100以上のオンライン展示が用意された「Flavor of Japan」では、寿司や精進料理などの伝統的な日本食ばかりではなく、飲み屋が軒を連ねる新宿ゴールデン街、大阪の屋台など庶民的なものまで、幅広く日本の食文化を取り上げている。

 その切り口もさまざまで、たとえば海外でも知名度の高い「寿司」の歴史を伝えるコンテンツもあれば、日本特有の味覚「うま味」についての解説、職人の包丁さばきや飾り切りなどのテクニックを紹介するコンテンツもある。

 現代における日本食だけではなく、過去、未来についてのオンライン展示もあり、浮世絵やマンガを通じて日本の食文化を学べるほか、JAXAの「宇宙日本食」の取り組みまで紹介されている。

文化を知れば観光の質も高まる

 これらの多岐に渡るオンライン展示は、農林水産省や自治体、大学など20のパートナー団体・企業の協力を得て制作された。国内では唯一の「ユネスコ食文化創造都市」に認定されている山形県鶴岡市もパートナーのひとつ。

 公開記念イベントには、鶴岡市の「羽黒山斎館」の料理長を務める伊藤新吉氏も登壇。出羽三山神社の境内にある羽黒山斎館は、修行を積む山伏の食事をルーツとする精進料理を供している。

 2011年の東日本大震災を境に一度は客足が遠のいたものの、海外での知名度もあり、近年では震災前以上に多くの訪日客が訪れる。そして、訪日客の傾向にある変化があったと伊藤氏。

 箸を使う人が増えたというのは分かりやすい変化だが、時には残された料理を見ても、見た目で判断せず一口は手を付けられていることが多くなったという。また、朝食前にお参りをしていたりと、ただ食事をするだけではなく、その背景にある文化にまで関心を持つ観光客の姿が見える。今回のGoogleの取り組みを通じて日本の食文化が広く発信され、理解がより深まることには大きな意義があると期待を寄せた。