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KDDI、auのオペレーションセンターを初公開

通信品質を維持するヒミツ、緊急時への備えとは

 KDDIは22日、同社のモバイルネットワークに関する設備を報道陣向けに公開した。

 公開された設備は、新宿にある「KDDIビル」内に設置されているモバイルオペレーションセンター、非常用自家発電設備、新型の車載型基地局、洞道など。モバイルオペレーションセンターへ報道関係者が入るのは初という。

新宿 KDDIビルの設備

モバイルオペレーションセンター

 モバイルオペレーションセンターは、KDDIのモバイルネットワークの状態を監視する設備。24時間365日、有人で監視されている。

 監視には「MAPSTAR(MAPping Status of Traffic Au Realtime system)」というシステムを利用し、現在その基地局からネットワークに接続している人数、機器の故障状況などを視覚的に把握できる。

接続数が多いと赤く変化する。鉄道の沿線沿いにユーザーが多いことがわかる

 接続しているユーザーの多い基地局は黄色から赤色に変化し、機能を停止した基地局は赤丸で強調表示される。

 こうした常時監視に加えてKDDIでは、自衛隊や自治体と共同で災害対策訓練を行うと共に、災害発生時には陸路での到達が困難な場合、自衛隊のヘリで人員と通信設備を移送する協定を締結し、災害時の体制を整えている。

被災地で提供される充電器
被災地の状況確認などに使われるドローン
「人間Wi-Fi」用の装備品とそれらを詰めるリュック

 花火などのイベント会場では、大量のトラフィックが発生するが、イベントのためだけに基地局を建設はできない。そうした場合は、車載型基地局を派遣したり、人が通信設備を背負って会場内を移動する「人間Wi-Fi」という手段も用いられる。

車載型基地局

 車載型基地局は、市販の自動車を改造し、移動できる基地局としての機能をもたせた車両。

ベース車両はトヨタ・エスティマ ハイブリッド。乗用車サイズのほうが隘路などで便利という
アンテナがついている以外は普通の乗用車と変わらない
アンテナは電動で伸長する
ハイエースよりもコンパクト
パラボラアンテナは自動的に衛星を検索する
車内の様子。後部座席はない
搭載される基地局の機器。対応する通信は4G通信

 従来の車両の場合、現地に到着してからサービスの開始まで時間がかかることが多かった。今年導入されたばかりというトヨタ・エスティマ ハイブリッドをベースにした移動基地局では、最大で3時間かかっていたサービス開始までの時間を、およそ30分と大幅に短縮した。また、鉄塔局やビル設置型なども含め、基地局の耐用年数は5~10年程度という。

非常用自家発電設備

 KDDIのネットワークの安定、安心を守るKDDIビルでは、停電時に使用する自家発電設備を備えている。

川崎重工製ガスタービンエンジン
毎分2万回転前後で回るタービンを発電機に合わせて2000回転ほどへ減速する
別室の操作パネル。起動や停止はここで操作する

 通常は、一般企業と同じように電力会社から電気を供給されているが、災害など何らかの理由で停電が起きた場合のために、8基のガスタービンエンジンを自家発電用の設備として備えている。

 災害が発生しなくとも、1年に1回、保守点検のためにガスタービンエンジンで発電する日があり、1カ月に1度は、発電はせずに無負荷の状態でエンジンを回す日を設けているという。

通信ケーブルを設置している洞道

 KDDIビルには通信ケーブルが設置されている洞道が存在する。比較的新しいケーブルもある一方で、設置されてから何十年と経過したケーブルも未だに存在し続けており、そうしたケーブルには出火防止のために、カバーがかけられていた。

洞道内は撮影禁止。洞道は地図内の黄色い箇所

携帯電話はなぜつながる?

KDDI 技術統括本部 運用本部 運用管理部 副部長 土生由希子氏
KDDI 技術統括本部 技術企画本部 技術企画部 副部長 野口孝幸氏

 固定電話の場合、音声を電気信号に変換して電話線を通すことでつながる。糸電話の糸を伝わる振動が、電話でいうところの電気信号になる。

 しかし、世界中のすべての電話を電話線でつなぐことはできないため、「交換器」と電話をつなぐ。これで電話から伸びる電話線は1本になり、効率の良い電話環境を実現している。

 一方の携帯電話は、無線で通信するため電話線の代わりに「無線基地局」が必要になる。
 ユーザーが電波を発信すると、無線基地局が電波をキャッチし、「基地局制御装置」へデータが送られ、通話の場合は「音声交換設備」へデータ通信の場合は「データ通信設備」へそれぞれの通信が送信される。

 携帯電話は、固定電話と違いユーザーの「位置情報」が重要になる。携帯電話は固定電話と異なり、ユーザーが自由に移動できるため、位置情報がないと交換器がどの基地局へ電波を送ればいいかが分からないからだ。

 そこで、交換機がどこに通信を送り届ければよいのか、すべてのユーザーの位置情報を管理するデーターベースがあり、位置情報が交換機に送信され、最終的に通話がつながるということになる。

高速通信LTEの時代へ

 LTEとは「Long Term Evolution」の略語であり、3Gを長期的に改良したものだった。通信速度は、3Gの8倍の75Mbpsから始まり、当時は3Gから革新的に進化されると期待されていた。

 LTEの特筆すべき点は、新しいサービスを生み出すことができたことにある。事業者はビットあたりのコストが下がるので今までにない新たなサービスを提供できることとなった。Facebookが動画広告などを始めたのが好例で、今では珍しくはなくなったが当時は画期的なできごとだった。

高品質な音声通話を実現するVoLTE

 VoLTEは、「Voice Over LTE」の略称。LTEの通信で音声通話をする仕組みのことだ。これにより従来よりも音声通話の品質が大幅に向上した。

 Skype、LINEなども同じくLTEの通信で音声通話を可能にしているが、VoLTEは専用の帯域が確保されているところが異なる。Skypeなどは、メールやバックグラウンドの通信と一緒にデータを流しているが、VoLTEの場合は、VoLTEだけの帯域を確保しているため、安定した通話を可能にしている。

まもなく5Gも登場予定

 時代は、4Gから5Gへ移行しようとしている。電波には周波数が高くなればなるほど遠距離に届きにくくなる性質がある。5Gで使用される3.7GHz帯や28GHz帯といった電波は従来よりも周波数が高い分、広範囲へ届きにくくなる。

 5Gでは、より多くの基地局の設置や、5Gで使用される帯域の指向性の高さを利用し、「ビームフォーミング」という技術を用いて、ユーザーのいる場所に向けて電波の発射方向を調整し、電波を届ける工夫などが検討されているという。

 増設が必要な基地局についても、地方の鉄塔局であれば比較的設置は容易なものの、都市部によく見られるビルの屋上に設置するビル局や、商業施設内部の屋内エリアの基地局は、設置に適したビルの検索や設置場所の確保、ビルオーナーとの交渉が難航することが多いという。

 KDDIの5Gのロードマップは、2020年春より、4Gとの共存体制でスタートし、2021年ごろからは5Gだけのサービスを提供する予定としており、4G LTEのネットワークをベースに段階的に5Gインフラを整えていく構想としている。