ニュース
「KDDI∞Labo DemoDay」で見えた5G時代の新たな価値とは
2019年3月26日 21:13
大手企業とスタートアップを結びつけ、新たなビジネスの創出を目指すKDDIの取り組みを披露するイベント「KDDI∞Labo DemoDay」が開催された。
育成プログラムに参加した企業は、5G時代に向けたAIやIoT、VRといった先端テクノロジーを活用するサービスのほか、農家と消費者を直接繋ぐECサービス、オフィス向けの機密回収ボックスを無料で提供する広告サービス、スマートフォン向けの登山アプリなど、そのジャンルは幅広い。
KDDI∞Labo賞は「エッジデバイス×AI」のアラヤ
そうした中で、大賞と言えるKDDI∞Labo賞に選ばれたのは、アラヤというスタートアップ企業。そのアラヤが提案するのは、エッジデバイス上におけるディープラーニングの活用だ。
その例のひとつが、全身で表現するVTuber。これは、リアルタイムで人の動きをカメラで捉え、バーチャルキャラクターへ反映できるというもの。ディープラーニングで人の動きを高い精度かつ複雑な機材を用いずに実現しているというのが大きな特徴だ。
そしてディープラーニング技術の演算量を圧縮できるという点もアラヤの持ち味。スマートフォンやドローンのような、処理リソースが限られるデバイスでも実行できるとうたっており、たとえばドローンに搭載することで、俯瞰で全域を警戒するドローンが不審者を見つければ、追尾するドローンが、その情報をもとに不審者を追跡する……といった動きも実現できるという。
オーディエンス賞は農家と消費者を繋げる「食べチョク」
2018年は7社のスタートアップが参加したKDDI∞Labo。それぞれのプレゼンテーションを終えて、来場者からの評価を集めオーディエンス賞に選ばれたのは「食べチョク」というサービスだ。
ビビッドガーデン社が提供する「食べチョク」は、農家と消費者を直接繋げ、野菜の詰め合わせなどを購入できる。農家生まれという代表取締役CEOの秋元里奈氏は、今の農業の課題は流通にあり、農家の得る利益が低いことにあると指摘。サービス開始から1年半で300の農家が参加するようになり、消費者とダイレクトに繋がることで中間マージンの支払いがなくなった農家の中には、売上が2倍になったところもある。
これまで66社を採択し、育成してきたKDDI∞Labo。ビデオメッセージで登場したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、5G向けの免許が4月上旬に付与され、秋からサービス開始できると見通しを示した上で、「5G時代ではお客様との繋がり方が変わるのではないか。たとえば1つ1つの物を販売して終わっていたものが、通信が入ることで、継続・循環するリカーリングモデルになるのではないか」と分析する。
5G時代には、ビジネスモデルが変化することが予測される中で、体力のある大企業と、スタートアップがともに歩むことで、新たな化学変化をもたらそうするKDDI∞Laboは、この春、KDDI社内で社長直轄の組織のもとで運営されることになった。
KDDI∞Labo長の中馬和彦氏は「リアルとの繋がりが深まると語る。久々にパラダイムシフトが起きる。5Gが触媒となって、スタートアップと大企業が融合する」と予言。今回のイベントで、新たに「5Gプログラム」をスタートすると発表し、これまでは1対1で連携してきたスタートアップや大企業が、5G時代のプラットフォームでは、マルチ対マルチ、複数企業同士の連携を進められるようにしていく方針が明らかにされた。