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オンキヨーとドコモが「ウェアラブル×AI」でタッグ

 オンキヨーとNTTドコモは、ウェアラブルデバイスとAIエージェントを組み合わせた、法人向けサービスを開発する。18日、報道関係者向けの説明会が開催された。

オンキヨーのウェアラブルデバイス
デモンストレーション時の様子

 両社の取り組みでは、オンキヨーの首掛け型ウェアラブルデバイスから、ドコモのAIエージェントAPIにアクセスできるようにして、対話で人を支援するようなソリューションの実現を目指す。

 百貨店で導入されれば、来店客に向けて、時間や店内にいる場所に応じたリコメンド情報を音声で案内する。たとえばランチタイムになれば店内のレストランを、タイムセールの開催が間近であれば会場を紹介するといった形だ。

「首掛け型」に見いだした未来

 オンキヨーの首掛け型ウェアラブルデバイスは、2018年1月、米国の展示会「CES」で参考出品されたもの。オンキヨーB2B本部AI・IoT事業推進室の宮崎武雄室長は「参考出品したところ、人手不足の解消や、業務効率の改善といった視点から、ビジネスで使いたいという提案を多くいただいた」と語る。

 企業がウェアラブルデバイスに関心を示した背景には、いわゆる少子高齢化がある。2050年には人口が9708万人(1995年比23%減)、生産年齢人口が5001万人(同43%減)になる予測のもと、人手不足の解消策として「AIがひとつの答えになる」(宮崎氏)というわけだ。

人口予測
人手不足が懸念されている

 AIの具体的な活用シーンとしては、現在、自動運転、画像認識などが挙げられるが、宮崎氏は「もっと身近なところで活用したい。ウェアラブルデバイスは、設置場所にとらわれず、ハンズフリーで使える」とそのメリットを語る。オンキヨーが開発する首掛け型デバイスは、小型軽量で邪魔にならず、周囲の音が聞こえたり、他の人とのコミュニケーションを妨げることもない。

AIの活用例
ウェアラブルデバイスのメリット
首に掛けるだけ

 良いことずくめのように思えるが、課題になるのが周囲の騒音。AI側で、人間の発した言葉を解釈するエンジンは年々進歩してきたが、宮崎氏は「ノイズのなかで正確に音を拾うことが重要」と指摘する。ノイズの中から声をきちんと拾うためのマイク技術として、マイクアレーを使ったビームフォーミング、事故再生音を消すエコーキャンセルといった技術が用いられる。クリアに音を集音できるのはオンキヨーの強みであり、そこへAIを組み合わせていく。

2012年から日本語対話エージェントを提供してきたドコモ

 ドコモAIエージェントAPIに対応した理由について「しゃべってコンシェルの日本語実績が非常に重要」とオンキヨーの宮崎氏は語る。

 そのドコモでは、2012年に自然対話エンジンを商用化。「しゃべってコンシェル」を皮切りに、玩具のロボット、オペレーター支援などで活用されてきたが、1社ごとにカスタマイズする必要があり、年間1000万円ほどの費用がかかっていたのだという。

 その一方で、iPhoneの「Siri」のようにスマートフォン側で音声操作できるエージェントサービスが搭載されるようになった。音声対話システムの需要が高まってきたとみたドコモは、2016年、「PROJECT:SEBASTIEN(プロジェクト セバスチャン)」と題した対話型AIシステムの刷新計画を実施。この計画はその後、2017年に「ドコモAIエージェントAPI」、2018年春に「my daiz」として整備されてきた。

今後のドコモ側のスケジュール
AI Geeksがサポートする

 2019年春にはパートナー企業向けのプラットフォームとして提供される予定で、そのプラットフォーム、オンキヨーのデバイスを繋げ、法人向けに幅広いサービスを展開する考え。ドコモの法人営業部隊には、導入企業によって異なる導入環境や、支援対象にあわせたカスタマイズをサポートするため「AI Geeks」と名付けられたチームが存在するとのことで、そこもまた強みのひとつ。

 またオンキヨーのウェアラブルデバイスもまた、導入企業にあわせた作り込みが必要とのことだが、これまでオンキヨーではAmazonのAlexa、グーグルのGoogleアシスタント、iPhoneのSiriなど複数のAIに対応した製品を手がけており、それぞれの特徴を把握していることを強みに打ち出す。ドコモ側が来春を意識して動きつつ、オンキヨーもまた採用に向けた開発を進めていくことになる。