【CES 2018】

iPhoneをスマートスピーカーに、オンキヨー&パイオニアがCESで見せたプロトタイプ

 オンキヨー&パイオニアは、オンキヨーとパイオニア両ブランドのさまざまな製品を展示している。老舗オーディオメーカーながら、スマートスピーカーやLightning接続の「RAYZ」シリーズなど、他社とも連携しつつスマートオーディオ機器を展開。今回のCESではオンキヨーならではの、ユニークなプロトタイプも紹介されていた。

音声アシスタントを使いやすくするVC-NX01

VC-NX01の展示

 「VC-NX01」は音声に特化したウェアラブルデバイス、いわゆる“ヒアラブルデバイス”だ。ネックバンド型で、首にかけるようにして装着する。どちらかというと音声アシスタントを活用するためのデバイスで、耳を塞がず、常時装着しやすいようなデザインとなっている。

 「VC-NX01」はまだプロトタイプ。「とりあえず試作し、ニーズや技術を模索しながら製品化を目指す」というスタンスだ。それだけにユニークな仕上がりで、特に「音声アシスタントのウェイクワードを常時待受する」という、この種のヒアラブル製品としては珍しい機能を持つ。

こんな感じで首にかけるので、常時装着しやすい。が、このデザインも「試しに作ってみた」的なものだという

 ウェイクワードとは、iPhoneにおける「Hey Siri」のような言葉のこと。デバイスに触れずに音声アシスタントを起動するためのキーワードだ。ウェイクワードを実現するには、マイクと音声処理系統を常時起動し、入ってきた音声がウェイクワードかどうかを常に識別し続ける必要がある。そのためバッテリーに制約のあるモバイル機器への実装は難しい面もかつてはあったのだが、ハードウェアの進化により、スマートフォンでは実現するようになった。

 ただし、スマートフォンよりもバッテリーの制約が厳しいBluetoothヘッドセットでは、ウェイクワードに対応するのはまだ難しい。ヒアラブルとも呼ばれる高機能なBluetoothヘッドセットも、音声アシスタントを起動するには、いったんタッチする、といった操作が必要になることがほとんどだ。

ONKYO AIについて

 そうした中で「VC-NX01」は事前の操作をすることなく、常にウェイクワードを待ち受けるという、数少ないヒアラブルデバイスを目指している。ただし、今のところは、さらなる省電力化に成功したといった仕組みではなく、マイクと音声処理系統を常に起動し続けているという形。今回のCESでは、クアルコムから発表されたBluetoothイヤホン向けチップセットで、ウェイクワード待受の省電力化が案内されるなど、技術的な向上も見られている。オンキヨーとしてもそういった技術動向を見ながら、「VC-NX01」の製品化を進めていくという。

 また、「VC-NX01」はHOUNDIFY社の音声アシスタント技術などを用い、独自の「ONKYO AI」を実装している。しかしこれは他社のAIを閉め出すというものではなく、GoogleアシスタントやAlexa、Siriのよいところは利用しつつ、そこで実現できないようなことを実装するための試みとのことだ。

iPhoneをスマートスピーカーにするドック

Lightning Speaker Dockのプロトタイプ。上部手前にボリュームキーとSiriのアイコンがある

 同ブースではプロトタイプとして、iPhone充電用のLightning接続のスピーカードックも展示されていた。「スピーカードック」と名乗りつつ、Siriが利用できることが特徴のひとつ。音声コマンドをきちんと認識できるよう、ドック部にマイクも内蔵している。iOSデバイスではもともと、「Hey Siri」で音声アシスタントのSiriを起動する機能が備わっているので、それを使うことで、iPhoneをスマートスピーカー化してしまおうというコンセプトだ。

 このようにオンキヨーでは、新しい機能や新しい利用スタイルに対し、自社だけで対応するのではなく、積極的に他社と連携していくスタンスを取っている。そのためスマートスピーカー製品についても、いち早くGoogleアシスタント対応製品とAmazon Alexa対応製品の両方を投入している。

 たとえば日本でも発売済みの「VC-GX30」(G3)は、Googleアシスタント対応のスマートスピーカーだ。しかし音響メーカーらしく音にはこだわっていて、大きめの音を鳴らしていてもユーザーの音声コマンドを聞き漏らさないようなチューニングもなされている。ちなみにこのG3、スマートスピーカーとしては珍しく、前方に指向性を持ったスピーカーデザインで、ACアダプターではなくAC電源を直結する構造となっている。これは内部のユニットが構造的にパワフル過ぎて、ACアダプターでは駆動できないからだという。

スピーカーっぽいデザインのVC-GX30(G3)
円筒型のVA-FW40(F4)

 「VA-FW40」(F4)は、AmazonのAlexaに対応するスマートスピーカーだ。日本では「P3」としてオンキヨーブランドで販売されているスマートスピーカーだが、米国ではパイオニアブランドとなり、連動アプリも違っているという。ハードウェアは基本的に共通だが、米国向けにややチューニングが異なるとのこと。こちらの製品は一見するとよくある全方位型だが、中にはスピーカーユニットが2つ入っていて、前方に向けてステレオ音声を出力しているという。背後でも音はしっかり聞こえるが、壁際に置いてもらうことを想定しているとのことだ。

日本未発売のVC-FLX1

 「VC-FLX1」は日本未発売のAmazon Alexa対応スマートスピーカーだ。発表自体はこのモデルが一番先だったが、先のG3/F4/P3とほぼ同時期となる昨年末に発売された。リモート監視できるカメラやスマートホームIoT機器につながるZigbee通信機能を搭載している。こちらの製品は現在米国で発売中だが、日本での展開についてはニーズ次第とのこと。日本とドイツは家庭内にカメラを設置することがあまり好まれないため国内展開は難しいかもしれない、といった意見があるという。

Lightning接続のRAYSシリーズのノイズキャンセリングイヤホン。発売からしばらくたつが、アップデートで機能追加され続けている
RAYZシリーズのスピーカーホンユニット。こちらもLightning電源供給なので充電不要で使える