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LINE Payが目指す「決済革命」、鍵はユーザー体験と手数料

 LINEが手がける決済サービス「LINE Pay」が2018年中に加盟店を100万店舗にする計画だ。そのために、LINE側では、ユーザーへのポイント還元率をアップさせること、そして店舗側の手数料を3年間無料にすることといった施策を打ち出した。その真の狙いは何か、30日、日本国内でLINE Payの展開をリードする、LINE Pay社COOの長福久弘氏が語った。

長福氏

これから大きく変化するスマホ決済/キャッシュレス

 長福氏は、現在のスマホ決済周辺の環境が「LINEがコミュニケーションアプリになった頃と、今の決済周辺の事情は似ている」と指摘する。

 かつてのコミュニケーションツールは、パソコンではEメール、携帯電話ではキャリアメールやSMSが主流だった。ところがスマートフォン時代になって、より手軽に使えるメッセージングアプリが主役に躍り出た。

 これに対し、いわゆるスマホ決済やキャッシュレス化の事情を見ると、たとえば日本のキャッシュレス率は18.4%(2015年)で、グローバルの中でも低い水準。これに政府は2025年までに40%を目指すという方針を示しており、キャッシュレス市場がまさに変化する時代を迎えつつある、という面で、コミュニケーションアプリがかつて経験した動きと重ね合わせた視点だ。

LINE Payが目指すペイメントレボリューション(決済革命)とは

 LINEが6月28日に開催した事業戦略説明会「LINE CONFERENCE 2018」では、LINE Payの普及を加速するため、「Payment Revolution(ペイメントレボリューション)」、すなわち決済革命というキーワードを打ち出した。

 具体的には、ユーザーがLINE Payで支払ったときのポイント還元率に関する取り組みと、店舗が導入しやすいよう手数料を3年間0%にするというものだ。

マイカラー制度でお得感を演出

 LINEでは、ユーザーと加盟店の双方に対して、赤字覚悟で積極的な働き方をするフェーズと見ており、長福氏は「モバイルでの決済を当たり前に使うには、インセンティブや体験が非常に重要。得と感じてもらい、便利さを体験してもらえれば飛躍的にキャッシュレス化していく」と語る。

 たとえば「マイカラー」と名付けた制度では、ユーザーの支払額に応じて、ステージが変わる形。より多くLINE Payで決済する人ほど、ポイント還元率も高くなる。またQRコードを使った決済であれば、常に3%のポイント還元が追加される。マイカラーで人によって0.5%~2%のポイント還元、そしてコード決済(QRコード/バーコード)で3%還元と、最大5%の還元になる形。この施策は8月1日から導入され、ユーザーへのお得感を訴求していく。

10円ピンポンが成功、今後も類似キャンペーン

 「体験」を促進するためLINE Payが実施したのが「10円ピンポン」と名付けたキャンペーン。10円分を友人へ送るだけで、ローソンやマクドナルドのクーポンがもらえるというもので、友人へ送った10円を送り返してもらえれば、実質的に無料でクーポンを獲得できる。これによりLINE Payのアクティブユーザーは270%増を記録。

 また月末の7日間に実施する「Payトク」というキャンペーンでは、期間中LINE Payをすると、初めて使った人には20%、2回目以降の人は10%分、還元される。たとえば1万円分の買い物を初めてLINE Payで支払えば2000円分還元されることになる。6月末~7月上旬に実施した同キャンペーンではコード決済の決済額が70%増えた。

 これらの取り組みを通じて、LINEが狙うのは、ユーザー層の拡大やLINE Payの習慣化だ。さらに今後は、LINEが手がけるショッピングやミュージックなどの利用と、LINE Payを組み合わせて、よりお得感を感じられることを目指す。

店舗向けアプリの特徴は

 2018年に、LINE Payが利用できる加盟店を100万カ所にするという目標を掲げる中、現在はまだ9万4000カ所に留まっている。近く、非接触タイプの決済サービスであるQUICPayとの連携により、その加盟店72万カ所がLINE Payの加盟店としてカウントされるようになるが、それでもまだ100万カ所には届かない。

 そこでLINEが狙うのは中小規模の店舗。SMB(Small and Medium Business)とも呼ぶ店舗は、国内小売店の99%を占める(2014年7月、中小企業庁調査)とのことで、長福氏は「日本でキャッシュレス化が進まないのは、SMBが導入しなかったため」と指摘。その背景には、導入コストなどがあり、そこを乗り越える施策として、LINE Payでは店舗向けアプリを提供する。

特徴は「メッセージング機能

 無料アプリとして提供され、来店客のスマートフォンで示されたコードを読み取る機能を持つほか、一度、決済してもらえれば、店舗のアカウントがその来店客とLINE上で「友だち」になれるという特徴も持つ。

 コスト面については、アプリの提供で導入費用を削減できることをアピールし、さらに2018年8月1日~2021年7月末までの3年間、決済手数料を無料にする方針だが、長福氏は「注目して欲しいのはメッセージング機能」と説明。先述したように、来店客が一度決済すれば店舗アカウントと友だちになれば、店舗側はその後、キャンペーンやクーポン発行などのメッセージを届けられるようになる。

 長福氏は、コスト増とみなされてきたキャッシュレス化を、ユーザーとの接点、そして継続した関係性の構築と、“資産”に変化させたいと意気込む。

 将来的には、店舗独自のクーポン用カードなど、店舗が課題と感じる部分を解決する機能を、より安価に提供する方針だ。

 そうした中で、さらに将来を見据えた展開として、今回新たにLINE Pay専用の店舗向けオリジナルデバイスを発表。店舗スタッフが金額を入力するだけで、QRコードが毎回表示され、来店客は読み取るだけ。価格や手数料は検討中とのことだが、中小規模の店舗にとっては、スタッフ個人が持つスマートフォンやタブレットを使うことも手間に感じられることがあり、ただ置くだけでLINE Payに対応できる手軽さをアピールする形になる。

 長福氏は、LINE Payの利用者数について目標などは決めていないものの、継続して拡大したいと意欲を見せる。100万店舗という利用できる場の拡大が、さらにユーザー数の拡大にも繋がる格好で、シンプルな目標を掲げて、まずはLINE Payの赤字になるような施策であっても積極的に取り組むことで、キャッシュレス化を推進したいと語っていた。