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Appleに独禁法違反の疑い、審査中にキャリアとの契約改定で調査は終了

 公正取引委員会は、AppleがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク(MNO3社)それぞれとの契約により、MNO3社の事業活動を制限している疑いがあったとして、Appleを独占禁止法違反の疑いで2016年10月から調査していたことを公表した。同時に、調査の過程でAppleから公取に対し、MNOとの契約を改定すると申し出があり、調査が終了したことも明らかにしている。

 公取は、AppleがMNO3社の事業活動を制限している点として、(1)MNO3社がApple Japanに注文するiPhoneの数量、(2)MNO3社がiPhoneの利用者に提供する電気通信役務の料金プラン、(3)MNO3社がiPhoneの利用者から下取りしたiPhone、(4)MNO3社等がiPhoneを購入する利用者に提供する端末購入補助、の4点を挙げている。

明らかになったキャリアとのiPhone販売契約「iPhone Agreement」

 公取が公表している内容によれば、AppleはMNO3社との間で「iPhone Agreement」と称する契約を締結した上で、MNOにiPhoneを提供(販売)している。

年によっては注文数量を定めていた

 「iPhone Agreement」には、MNOが1年ごとにApple Japanに注文するiPhoneの数量が、一部の年について、あらかじめ具体的に定められていた。一方、“定められていた注文数”に達していなかった場合、不利益は課されていなかった。

公取の審査開始後

 Apple Japanは、注文数量が当該1社の目標にとどまり、それが達成されなくても契約違反にならない旨を定めた。

 公取は、独禁法上の考え方として、iPhoneの注文数量を義務付けて、ほかのスマートフォンメーカーの販売機会を減少させることは、独禁法上で問題になりうるとするが、この「iPhone Agreement」では限られた年を除いて具体的な注文数量が定められていなかったこと、注文数量を義務付けるものだったとはみられなかったことから、MNOの事業活動を拘束していたとは認められなかったと結論づけている。

料金プランの金額を指定

 「iPhone Agreement」には、MNO各社がユーザーに提供する料金プランについて、基本料金、通話料金、データ通信料などの金額が定められていた。

 MNO1社では、このiPhone用プランは、iPhone以外でも契約可能とし、遅くとも2014年9月以降は提供されていなかった。

公取の審査開始後

 Apple Japanは「iPhone Agreement」を改定し、iPhone用の料金プランに係る規定を廃止した。

 公取は、独禁法上の考え方として、Apple JapanがMNOに対してiPhone用料金プランのみの提供を義務付けることは、MNO間の料金プランに係る競争を減殺するなどの場合に独禁法上問題となりうるとする。しかし、「iPhone Agreement」ではAppleが指定したiPhone用料金プラン以外も提供可能としていたこと、すでに当該の料金プランが提供されていなかったことなどから、事業活動を拘束していたとは認められなかったと結論づけた。

下取りしたiPhoneの用途を指定

 「iPhone Agreement」には、MNOがiPhoneユーザーから下取りしたiPhoneの用途が定められていた。

 MNOの1社とは、下取りしたiPhoneを端末補償サービスのみに用いるよう定められていた。一方、2社とは下取りしたiPhoneに係る規定は設けられていなかった。

公取の審査開始後

 Apple Japanは、下取りしたiPhoneに係る規定を廃止した。

 公取は、独禁法上の考え方として、下取りしたiPhoneの国内販売を制限し、新品のiPhoneの販売を促進、Appleの地位を維持・強化して価格を維持するなどした場合には、独禁法上問題となりうるとする。しかし、MNO1社に対して国内での用途を定めるにとどまっていたことなどから、下取りしたiPhoneの国内での流通を制限していたとは認められなかったと結論づけた。

端末購入補助の金額を定め、MNOと合意

 「iPhone Agreement」には、MNOまたは販売代理店などが、iPhoneを購入するユーザーに対して「補助金」を提供する旨が定められていた。

 MNO3社との「iPhone Agreement」では、ユーザーが長期契約の場合、ユーザーに補助金を提供する必要があるとしていた。補助金の金額は、AppleからMNOへの卸値とユーザーの負担額の差額とし、MNO3社と具体的な最低額が合意されていた。その上で、AppleとMNOは、通信料から割り引く「月々サポート」(NTTドコモ)、「毎月割」(KDDI)、「月月割」(ソフトバンク)が、「iPhone Agreement」にある補助金に該当すると認識していた。

独禁法上の問題

 公取では、独禁法上の考え方として、AppleがMNOに対して端末購入補助の提供を義務付けることは、端末と料金プランが一体となって販売されている現状では、料金プランの引き下げなどを制限し、低廉化や、多様なプランによる競争を滅殺する場合、独禁法上の問題になるとした。

 公取の指摘を受け、AppleはMNO3社と「iPhone Agreement」の内容を改定して合意、公取に改定したことを申し出た。改定された内容は、ユーザーが長期契約(定期契約)の場合でも、「月々サポート」などが無いプランについて、MNOが十分な情報を明確・公平に提示することを条件に、これら「補助金」がないプランを提供できるよう改定したというもの。

公取の評価

 公取は、端末購入補助に関連した「iPhone Agreement」の改定の後も、補助金の提供義務は一部に残ることになると指摘する。しかし、補助金の提供義務が無い料金プランが「iPhone Agreement上の疑義なく可能」とし、従来プランと双方を、公平に提示できることから、「独禁法違反の疑いを解消するものと認められる」と結論づけた。