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EMA事業終了、スマホ時代にキャリアの協力を得られず

 既報の通り、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は、各社のフィルタリングサービスに第三者機関として独自の“ホワイトリスト”を提供する認定・監視制度、「モバイルコンテンツ運用管理体制認定制度」の受付を4月13日で終了する。認定したサービス・アプリの運用監視についても、1年後の2019年4月末で終了する予定。EMAの事業が終了することになり、組織の解散も検討されている。

 3キャリアのサービスを代表例に、現在のフィルタリングサービスの概要や課題、EMAの役割、今後の動きをまとめた。

EMAの運用監視が終了するとどうなるか

 キャリア各社に問い合わせたところ、2019年4月末でEMAの運用監視が終了すると、フィルタリングサービスにおいて、「EMA認定サービス・アプリは制限の対象外」という仕組みが無くなるとしている。フィルタリングを適用した初期設定のままでは、各社が採用しているネットスターやデジタルアーツのフィルター情報やアプリ評価情報が適用されるだけの状態になる。

 例えば「あんしんフィルター for au」では、SNSアプリは「高校生プラス」以外は制限され利用できないという初期設定になっているが、現在、EMA認定アプリである「LINE」や「SNOW」は、「中学生」以上ならフィルタリングから除外され利用できる。EMA認定アプリの仕組みが終了すると、(高校生プラス以外では)個別にアプリを指定して制限を解除しない限り、「LINE」が使えないということになる。

 各キャリアでは、EMAの事業終了までに、関連する情報を周知していく方針。フィルタリングを申し込む窓口でも関連する情報を案内していくとしている。

背景

 EMAが発足した2008年当時は、フィーチャーフォンで利用するコミュニティサイト・出会い系サイトなどに対して青少年保護の取り組みが求められ、フィルタリングサービスが頻繁に拡充された時期。EMAは認定だけでなく、継続的な監視を行うのも特徴だった。発足からしばらくは、フィーチャーフォン向けとしてWebサイトで提供されるサービスが大半だったため、キャリアはWebサイトにアクセス制限するだけで済み、現在と比較すればフィルタリングサービス自体が単純な仕組みで機能していた。

 しかしスマートフォンが普及すると、フィルタリングサービスはWebサイトだけでなく、コミュニティ機能を持つアプリにも適用が求められるようになった。また、フィーチャーフォン時代とは違い、Apple、Googleというグローバルの大企業がOSを開発・提供することで、OS独自の機能制限や、そこに適用されるグローバル基準の考えも加わった。

 最近ではキャリアやMVNOも独自に、日本の基準に照らし合わせたフィルタリングサービスをスマートフォン向けに提供、フィルタリングサービスそのものが複雑化する一方、サービス名称を3キャリアで「あんしんフィルター」に統一するなど連携した取り組みも進められている。

 現在のキャリアのフィルタリングサービスの仕組みは、ネットスター(ドコモ、auが利用)やデジタルアーツ(ソフトバンクが利用)から提供される情報を基にしたフィルタリングを学齢別に適用すると、Webサイトやアプリに対しアクセス制限が有効になるというもの。ただし、EMAが認定したサービス・アプリについては、このアクセス制限の対象外になるという形になっている。EMAの認定は、いわゆるホワイトリストのような形で機能していた。

課題

 EMAの担当者は、フィルタリングサービスの今後の方向性として、保護者に対してより分かりやすく簡単なサービスにしていかなければならないという方向性があると語る。

 一口にフィルタリングサービスといっても、キャリア以外のサービス・アプリも含めるとさまざまなものが登場しているが、現在の保護者世代は、必ずしも幼少からデジタルデバイスに慣れ親しんできたわけでもなく、どれを選べばよいか分からないことが多いからだ。またフィルタリングの制限に対し個別にアプリを指定して許可するカスタマイズについても、多くの保護者は判断基準や必要な情報に乏しいのが実際だ。

模索していた取り組み

 EMAでは、今後のキャリアとの新たな取り組みとして、アプリを許可するカスタマイズ機能で適切な判断ができるような、中立で有効な情報を、保護者に対して提供できると考えていたという。

 担当者によれば、これまで3キャリアは、第三者機関であるEMAの事業のコスト負担には関わっていなかったとのこと。一方、新たなスマートフォン・アプリ時代の取り組みに関連して、EMAは事業のコスト負担を含めて3キャリアと協議を行っていたというが、1年間交渉しても回答がなく、さらに1年の交渉を重ねたものの、やはり回答が得られなかったという。こうしたことから、EMA側では3キャリアにコスト負担の意思がないと判断、事業の終了を決断するに至ったようだ。

 なお、EMAでは認定サイト・アプリの運用監視は今後1年継続するが、その間に事業の引き継ぎなどを模索していくとしている。