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EMA解散、現在のフィルタリングの課題を提起

 モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は、5月31日で同機構が解散したと発表した。認定したコンテンツの運用監視については、2019年4月末で終了する。

 EMAがその事業を終了することは2018年4月3日に発表されていた。同時にEMAの解散も示唆されていたが、定時会員総会で解散が決定した。

 EMAは、事業の終了にあたって聴取した関係事業者・団体の意見や、EMAが確認した課題を取りまとめて、現状の課題として提起している。

「保護者の力量」に頼らないよう改善を

 EMAは、フィルタリングの重要性への理解や保護者の認知が進む一方で、フィルタリング自体が難しいという声が、多くの保護者から聞かれると指摘している。初期設定でいくつもIDやパスワードを必要とするサービスもあり、結果として保護者が設定を完了できないケースがあるという。

 また、EMA無き後、今後はフィルタリングサービス上でのカスタマイズ機能の活用が期待されるとする一方で、フィルタリング自体が保護者にとって難解であること、保護者がフィルタリング用として判断するための情報が整備されていないことなどを課題として挙げている。

 さらに、それらは公平な立場で情報が提供される必要があること、移り変わりが早い業界で適時的に情報が提供される必要があるとも指摘し、こうした環境が整備されない状態では「保護者にとって責任過多になってしまう」と懸念を表明している。

 EMAでは「保護者の力量に頼ることなく、より利用しやすいフィルタリングに向けて継続的な改善が必要」としている。

iOS版「あんしんフィルター for au」は「早急な改善が必要」

 また、KDDIが提供する、iOS版「あんしんフィルター for au」については具体的に問題点を指摘、「早急な改善が必要な状態」と警鐘を鳴らしている。

 EMAが報告するところによれば、iOS版「あんしんフィルター for au」は、フィルタリング対象の端末を利用する子どもが、パスワード無しで設定を自由に解除できるという。

 設定を解除すると保護者に通知されるが、通知先の保護者のIDまたは連絡先を端末に設定する必要があること、保護者がIDを持っているとは限らないこと、保護者の登録が確保される仕組みになっていないこと、保護者への通知は事後的かつ1週間間隔になっていることなどが問題点として挙げられており、(事後の通知では)「有害情報の閲覧防止というフィルタリングの機能を全うできない」と処断している。

 加えてEMAでは、保護者は初期設定で複数の手順が必要な一方で、子どもはフィルタリングを簡単に解除できる状態についても「機能構造的に非常に矛盾している」と厳しく批判している。

「+メッセージ」はフィルタリング対象外、理由の周知を

 第三者機関として活動してきたEMAは、上記の例を含め、キャリア自身が関係するサービスについて、公平な判断を下せるかどうかについても警鐘を鳴らす。

 例えば先般3キャリアから提供が開始された「+メッセージ」について、キャリアは「基本アプリ」に分類し、フィルタリングサービスの対象外となっているが、既存のSNSを踏襲している内容も多く、「青少年の利用上問題がないのか」「商業的公平性の観点から問題がないのか」といった点について、(問題がないのであれば)「十分に周知される必要がある」としている。