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ソフトバンク今井副社長が語る「1兆個のIoT」がもたらす未来とは

 「次世代ビルはロボット、AI、IoTで常に維持管理していく」――8日に開催された英Arm社のイベント「Arm Tech Symposia 2017」でそう語ったのは、ソフトバンク代表取締役副社長COOの今井康之氏だ。

ソフトバンクの今井氏
ロボット、AI、IoTを駆使する

 2016年夏、英Armを傘下に収めたソフトバンクは、Armの将来を支える柱としてIoT分野を挙げている。過去20年間にArmが手がけたチップ数と、今後3~4年に向けて発注されたチップ数が同等になった、と語る今井氏は、「2035年にIoTデバイスが1兆個に達する」と語った孫正義社長の言葉も夢ではないと説明。

 AIを駆使してIoTを実際に取り込みつつある具体的な分野・事例として、温度・湿度などで22毛作という高い生産性を実現する野菜工場や、スマートフォンをルームキー代わりにしつつ観光情報などもあわせて提供する宿泊施設などを紹介する。

 またつい先頃、提携に合意した日建設計との取り組みをあらためて紹介し「オフィスビルは日々、清掃、警備、設備管理でコストがかかる。その運用費は建設費の約5倍。コストは主に人件費で、最初から運用コストを下げられるよう日建設計とともにロボットが働きやすいビルの開発に向けて検討を始めた」と説明する。人間が定期的に点検、作業をするのではなく、ロボットによるフロア清掃や24時間の警備のほか、防犯カメラ、温湿度計といったセンサーによるデータと、AIによるデータ活用を進め、運用コストを下げていく。これが冒頭に消化した「IoTやAI、ロボットで――」で表現された未来像だ。

 少子高齢化による影響のひとつに挙げられるのが、日本全国の公共インフラのメンテナンス。ここもIoTとAIで解決できると今井氏。たとえば路面を撮影してAIによる画像解析からその状態を判断、GPS情報と組み合わせれば、点検作業を減らしつつ、補修が必要な場所がピンポイントでわかるという仕組みになるという。

増えるIoTデバイスに安全を

 一方で、今後爆発的にIoTデバイスが増えれば、懸念されるのはセキュリティ。Armのバイスプレジデントであるノエル・ハーレイ(Noel Hurley)氏は、セキュリティ侵害が発生すると考えた上で適応しなければならない、と語り、その対策の一例としてコンパートメント化を挙げる。これは機能を分離して、仮に何かしらの損害が発生したとしてもシステム全体に広げず、限定的なものにするというコンセプト。OSレベルではなく、チップレベルで対策すべくArmでも取り組みを進めている。

ハーレイ氏
コンパートメント化を紹介
サイバー免疫システムも

 またセキュリティ対策は出荷段階だけではなく、製品が利用される間、継続していくことが重要とも指摘。数多くのデバイスを管理してリモートでファームウェアのアップデートできるようにするなど、分散型システムで脅威へ柔軟に対応する「サイバー免疫システム」を展開していくと語っていた。

Snapdragon 845で採用される「DynamIQ」

 米クアルコムがついに発表した次世代のハイエンドチップセット「Snapdragon 845」には、これまで、英ArmのCPUコアや技術が採用されている。そのひとつが「DynamIQ(ダイナミック)」と呼ばれるもの。

 「DynamIQ」では、AI・マシンラーニング向けに行列演算などで新たな命令が組み込まれるほか、big.LITTLE(ハイパワーと省パワーのCPUを組み合わせる構成)のCPUコアを、用途にあわせて柔軟に構成を変更できることが大きな特徴という。たとえばいよいよ登場するWindows on Snapdragonのようにラップトップパソコンに近いパワーを求めれば、4つのbig(高性能)コア、4つのLITTLE(省パワー)コアというフルセットの組み合わせ。ミッドレンジのスマートフォンであれば1つのbigコアに7つのLITTLEコアにすると、現在のオクタコアCPUよりもシングルスレッド(1つずつ命令を処理すること)の処理能力は倍になるという。

 「Snapdragon 845」のCPU「Kryo 385」では、高性能コアに「Cortex-A75」を、低電力コアは「Cortex-A55」をベースにしている。どちらものCPUコアもArmが今年5月に発表したもので、A75は、先代モデルのA73よりも50%処理能力がアップ、A55は先代モデルのA53よりも省エネ性能が2.5倍になった。

 またファーウェイのMate 10 Proで採用されたGPU「Mali G72」は先代の「G71」よりも機械学習のアルゴリズムが17%効率化し、面積は20%小さくなっているという。