ニュース

iPhone X、iPhone 8/8 Plusの現地レポート&ファーストインプレッション

iPhone Xはスマートフォンの次の10年を示す

iPhone X

 9月12日(現地時間)、アップルは米国・サンノゼの新社屋キャンパス内に建てられた「Steve Jobs Theater」において、Apple Special Eventを開催し、新モデル「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」、GPS+セルラーモデルがラインアップに加わった「Apple Watch Series 3」、4Kに対応したSTB「Apple TV4K」、有機ELディスプレイを搭載した新デザインの「iPhone X(テン)」を発表した。

 本誌ではすでに速報記事をお伝えしているが、ここではSpecial Eventの内容と現地の様子などを紹介しよう。後半では「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「iPhone X」の注目機能を中心に、実機をひと足早く試した印象をお伝えする。

想いが込められたシアター

 アップルの創業者であり、iPhoneの生みの親である故 スティーブ・ジョブズ。2011年に亡くなってから、早6年が経とうとしている。今回のApple Special Eventはそんなスティーブ・ジョブズの名を冠した「Steve Jobs Theater」において催された。現在、アップルはサンノゼに新しい社屋(キャンパス)「Apple Park」を建設中で、その敷地内に建てられたのがSteve Jobs Theaterであり、今回のApple Special Eventはそのこけら落としとして、開催されたわけだ。

新社屋となるApple Park。巨大な円形の建物。まだ建築中。
Special Eventが行なわれたスティーブ・ジョブズ・シアター。ここも円形でデザインされている。周囲はガラス張りで、地下にシアターがある。
Appleのもうひとりの創業者、スティーブ・ウォズニアック氏も出席。さまざまなメディアから取材を受けていた。
ソフトバンクの宮内謙社長も来場
ワクワク感いっぱいのKDDIの田中孝司社長
NTTドコモの吉澤和弘社長は関係者と歓談していた
ウェイティングホールから地下に降りたシアターの入口には「STEVE JOBS THEATER」の刻印

 イベントの冒頭、スティーブ・ジョブズの過去のスピーチが流された後、壇上に立ったティム・クックCEOは、神妙な面持ちで、生前、スティーブ・ジョブズと新しいキャンパスを建てる計画を話していたことに触れ、優れたエンジニアやデザイナーがいっしょになって、協力しながら、次の世代のアップル製品を創り出す場所を作ろう、世界を変えようと考えていたこと、そして、このApple Parkにはその多くの想いが込められていることを紹介した。

イベントの冒頭、神妙な面持ちで、このシアター、このイベントに対する想いを語るティム・クックCEO
スティーブ・ジョブズ・シアターは円形でガラス張りの建物の地下に作られている。

 今回、Apple Special Eventに参加したパートナー企業や筆者のようなメディア関係者にとっては、アップルの製品が発表されるイベント、Steve Jobs Theaterのこけら落としという位置付けだが、アップルの社員にとってはそれ以上の想いが込められた場所であり、イベントであることを強く感じさせる内容だった。

 ティム・クック氏に続いて、アップルのリテール担当役員のアンジェラ・アーレンツ氏が壇上に立ち、現在、世界各国にあるストアの新しいデザインや動向についての説明が行なわれた。ストアは単に製品を販売するところではなく、製品を使った新しい体験や次世代のアップルユーザーのための場としても活用されており、各地のストアも順次、新しいデザインのものにリニューアルしていることが紹介された。その多くに、Steve Jobs Theaterと同じようなガラス張りのデザインが採用されており、現在、改装中で縮小営業中のニューヨーク・マンハッタンのフィフスアベニューのストアも来年、再オープンすることが明らかにされた。

アップルの各地のストアでの取り組みを説明するリテール担当役員のアンジェラ・アーレンツ氏

GPS+Cellularモデルが追加されたApple Watch Series 3

 再び、ティム・クックCEOが壇上に戻り、Apple Watchの動向が紹介された。Apple Watchは2015年に発表されて以来、順調に売り上げを伸ばしており、毎年50%の成長を遂げているという。そして、昨年は世界の時計の売り上げランキングでロレックスに次ぐ2位だったが、今年はついにロレックスを越えて、1位を記録し顧客満足度も97%に達したことが明らかにされた。

 続いて、Apple Watchを愛用する世界中のユーザーからの声が「手紙の朗読ムービー」という形で紹介されたが、そこには働く人、スポーツをする人、ハンディキャップを持つ人、年老いた人、糖尿病の人など、さまざまな人たちが登場し、Apple Watchを運動や健康、生活に活用しているエピソードが紹介された。

 そして、今回のApple Watchの新製品へ向けたプレゼンテーションが同社COOのジェフ・ウィリアムズ氏から行なわれた。

 まず、今年6月に開催されたWWDCでも予告されたwatchOS 4では、ムービーで紹介されたような多様なニーズに応えられるように、機能が拡張される。たとえば、もっとも広く利用されているワークアウトについては、インターバルトレーニングに対応したり、gymKitによって、スポーツジムに設置されているマシンとの連携が実現される。

 また、Apple Watchの背面に備えられている心拍センサーを使い、トレーニングによって高くなった心拍数がクールダウン時にどのように落ちていくのかを記録したり、平静時も心拍数のカウントだけでなく、周期などを見て、不整脈があるようであれば、警告を出すといった機能も実装される。

Apple Watchは昨年の2位から、世界でもっとも売れている時計になった
ワークアウトなど、さまざまな運動や健康に関する情報を取得できるApple Watch
心拍計のモニターはトレーニング後のクールダウン時に心拍数もカウント可能

 そして、これまでのApple Watchを超える次世代のモデルとして、今回の新製品「Apple Watch Series 3」が発表された。

 Apple Watch 3を紹介するムービーでは、サーフィンをする人の腕に付けられたApple Watchに音声通話の着信があるという内容で、会場からは大きな歓声が上がった。

新しいApple Watchのムービーではサーフィン中の人の腕に着けられたApple Watchに着信するシーンが流された

 これまでのApple WatchがiPhoneとBluetoothなどで連携することで、さまざまな情報を表示したり、アプリを活用したりできるようにしていたのに対し、今回のApple Watch Series 3には携帯電話機能を搭載した「GPS+Cellularモデル」がラインアップされる。ちなみに、従来通りの携帯電話機能を搭載しないモデルは「GPSモデル」として販売される。

 Apple Watchでは従来モデルでもSiriなどで音声を使うことができたが、Apple Watch Series 3のGPS+Cellularモデルでは、電話の発着信、アプリの音声機能などが利用できるようになる。これに加え、AirPodsやBluetoothヘッドセットなどを接続し、Apple Musicのサービスを利用することにより、約4000万曲に及ぶ楽曲をストリーミングで楽しむことができる。たとえば、ランニングなどではiPhoneを持たなくてもApple Watch Series 3を腕に着け、AirPodsを装着すれば、いつでも自由に好きなだけ音楽を聴きながら、走ることができるわけだ。

 ハードウェアについては、Apple Watch Series 2に採用されていたS2プロセッサがデュアルコアのS3プロセッサに進化を遂げ、約70%の高速化を実現している。省電力性能も約50%、改善している。Apple Watchの小さな筐体で携帯電話通信を実現するため、ケース前面をアンテナとして活用し、契約情報を格納するSIMカードについてはeSIMを内蔵する。実際の使い方としては、iPhoneの携帯電話番号と紐付ける形でeSIMに必要な情報を書き込んでおくことで、iPhoneでもApple Watch Seris 3でも着信に応答したり、電話をかけたりできるようになる。

 また、これまでは音声の利用がSiriなどに限られていたが、携帯電話機能を搭載したことで、マイクとスピーカーも改良され、以前ほど、口や耳にApple Watchを近づけなくても自然な形で通話ができるように作り込まれている。日本のユーザーに分かりやすく説明するとすれば、ウルトラセブンのウルトラ警備隊が身に着けていたビデオレシーバーのようなスタイルで通話が可能になるというわけだ(※編集部注:ウルトラセブンは1967年放映)。

 時計のケースについてはApple Watch Series 2の流れを継承し、アルミニウム(3色)、ステンレススチール(2色)、セラミック(2色)がラインアップされており、ステンレススチールはGPS+Celluarモデルに限られたり、Editionはセラミックのみなど、モデルごとにいくつか選択肢が限られる構成となっている。Nike+モデルやHermesモデルもラインアップされる。バンドについては新たに「スポーツループ」と呼ばれるナイロン製のものなどが追加されている。従来のモデルのバンドをそのまま、継続して利用することも可能だ。

 価格はGPSモデルが329ドルから、GPS+Cellularモデルが399ドルからとなっている。GPS+Cellularモデルは別途、各携帯電話会社との契約が必要で、国内はNTTドコモ、au、ソフトバンクが対応する。従来モデルの内、Apple Watch Series 1については販売が継続される。

GPS+CellularモデルではApple Watchのみで携帯電話の通話や通信が利用可能
AirPodsやBluetoothヘッドセットと接続すれば、Apple Musicの約4000万曲の音楽を楽しながら、走ることが可能
Apple Watch Series 3にも人気のNIKE+モデルがラインアップされる
革ベルトとオリジナル文字盤が人気のHERMESモデルもラインアップされる
Apple Watch Series 3は329ドルから。Series 1も併売される。
GPS+Cellularモデルは日本でも販売され、au、NTTドコモ、ソフトバンクのネットワークで利用可能

新しいテレビ体験を可能にするApple TV 4K

 テレビに接続するSTB(セットトップボックス)として、着実に拡がりを見せつつあるApple TV。国内でもNetflixやHulu、Amazonプライム、DAZNなどのサービスが拡大してきたことで、今まで以上に注目が集まっている。

 今回のApple Special EventではApple Watchに続いて、Apple TVが取り上げられた。ティム・クックCEOは「Apple TVによって、テレビは大きく変わった。ニュースやスポーツ中継、映画、ゲーム、アプリなど、さまざまなシーンで楽しむことができる」とアピールし、Apple TVが2つめのエミー賞(米国のテレビ芸術アカデミーの賞)を受賞したことを紹介した。そして、これまでのテレビの進化がモノクロからカラー、ブラウン管からフラットTV、大画面化と進化を遂げてきたことを振り返りながら、新しい「Apple TV 4K」を発表した。

 Apple TV 4Kのプレゼンテーションは同社のSenior Vice Presidentのエディ・キュー氏が担当した。Apple TV 4Kはその名の通り、4Kテレビに対応したSTBだが、単純に解像度が4Kに対応しただけでなく、HDRにも対応しているため、一般的な4K対応に比べ、色やディテールが違う、より美しい映像が楽しめるという。業界標準のHDR10をサポートし、ドルビーの音響技術にも対応する。Apple TV 4KではこれまでのApple TVに搭載されていたスクリーンセーバーなども更新され、ユーザーインターフェイスも4K対応のものがプリセットされる。

 ハードウェアについては、プロセッサにiPad Proと同じA10Xを搭載し、従来モデルに比べ、CPUは2倍、グラフィックも4倍のパフォーマンスを実現している。

 コンテンツについては、20世紀フォックスやLIONSGATE、ワーナー・ブラザース、パラマウント、ユニバーサル、ソニーといったハリウッドの大手スタジオと連携し、iTunesで最新の映画などを楽しめるようにするが、4K+HDR版はHDと同じ価格で購入できるという。また、iTunesで購入したHDコンテンツについては、自動的に追加料金なしに4K+HDR対応にアップグレードされる。

 この他にもNetflixやAmazonプライムの4Kコンテンツへの対応をはじめ、ライブスポーツ中継などにも対応する予定だ。ライブスポーツ中継では中継が始まる時間に通知をしたり、スコアの表示を隠したりといった細かい設定も可能になる。価格は32GBモデルが179ドル、64GBモデルが199ドルで、従来のAppleTVも149ドルで併売される。発売は9月15日を予定している。

Apple TV4KのプレゼンテーションはSenior Vice Presidentのエディ・キュー氏が担当した
4K HDRに対応したApple TV4K。一般的な4Kよりも美しい映像を楽しむことができる
Apple TV4Kの価格は179ドルから。従来のApple TVも併売される

両面ガラスで進化を遂げたiPhone 8/8 Plus

10年前に発売された初代iPhoneはマルチタッチのディスプレイを採用
iPhoneのプレゼンテーションはSenior Vice Presidentのフィル・シラー氏が担当

 続いて、いよいよiPhoneについてのプレゼンテーションがスタートする。再びステージに登壇したティム・クックCEOは、10年前に米国で発売された初代iPhoneから振り返りながら、iPhoneがさまざまなイノベーションを起こしてきたことを説明した。

 初代モデルではマルチタッチスクリーンを採用し、アプリをタップして起動するという新しい使い方を実現した。2010年発売のiPhone 4では初めて「Retinaディスプレイ」と名付けられた高解像度かつ高画質のディスプレイを搭載し、FaceTimeによって、相手の顔を見ながら話す新しいコミュニケーションを実現した。また、Siriでは音声入力によるAIアシスタントを実現し、指紋認証センサーのTouchIDではよりセキュアでプライバシーを守る環境を実現している。さらに、カメラについても瞬間をより美しく切り取る環境を実現してきた。iPhoneはイノベーションに次ぐイノベーションをくり返しながら、人々がより便利に、よりかしこく、進化を遂げてきているとした。

 そして、スクリーンには新モデル「iPhone 8/iPhone 8 Plus」のムービーが流され、ステージには同社Senior Vice Presidentのフィル・シラー氏が登壇し、製品の説明を行なった。まず、今回発表する新しい世代の「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」は、本体の前面と背面にガラスをレイアウトしたボディデザインで、アルミニウム製フレームと綺麗にマッチしている。カラーはシルバー、スペースグレーに加え、新しい仕上がりのゴールドがラインアップされる。

 ボディは航空機素材グレードのアルミニウム7000を採用し、7層のカラープロセスで仕上げられている。ガラスは従来のものに比べ、50%も強度がアップしており、スマートフォンのガラスとしては世界でもっとも耐久性があるものだという。また、iPhone 8とiPhone 8 Plusは従来のiPhone 7とiPhone 7 Plusに続き、防水防塵に対応する。

 ディスプレイは従来モデルに引き続き、iPhone 8には4.7インチ、iPhone 8 Plusには5.5インチのRetinaHDディスプレイがそれぞれ搭載される。正確なカラー、映画クラスの広色域、3D Touchなどがサポートされ、iPad Proにも採用されたTrue Tone Displayに対応する。本体を横向きにして映像コンテンツなどを楽しむときのために、ステレオスピーカーを搭載し、iPhone 7に比べ25%増加した大音量を実現するほか、低音も強化されている。

 チップセットは新開発の「A11 BIONIC」チップが搭載される。A11 BIONICチップはもっともパワフルかつスマートなチップとなり、6つのコアと64bitの設計で、43億個のトランジスタで構成される。A11 BIONICチップはパフォーマンスコアが2つ搭載され、従来のA10チップに比べて25%の高速化、4つの高効率コアはA10チップに比べ、70%の高速化がそれぞれ図られている。さらに第二世代のパフォーマンスコントローラーにより、70%も高速にマルチスレッドの処理が可能になるという。

 また、A11 BIONICチップには初めてアップルがデザインしたGPUが内蔵され、A10チップよりも30%高速でありながら、半分の電力で実現できるとした。GPUは3DゲームやアップルのAPI「Metal2」を快適に動作させることができる。画像処理などに使われるISP(Image Signal Processor)もアップルが設計したものが搭載されており、暗い環境でのより高速なフォーカスを可能にし、ハードウェアでのマルチバンドのノイズリダクションも搭載される。

iPad Proに続き、TrueToneディスプレイを搭載
チップセットは新開発のA11 BIONICチップを採用
iPhone 8の背面のカメラは新設計の12MPのイメージセンサーが採用される。光学手ぶれ補正にも対応
iPhone 8 Plusの背面のカメラは、新開発の12MPイメージセンサーを2つ搭載したデュアルカメラを採用。光学手ぶれ補正にも対応する

 カメラについては、iPhone 8には新開発のセンサーを採用した12Mピクセルのカメラが搭載される。新しいカラーフィルターが採用され、光学手ぶれ補正にも対応する。iPhone 8 Plusは従来のiPhone 7 Plusに引き続き、デュアルカメラを搭載するが、これも新開発の12Mピクセルのセンサーが採用されており、F1.8とF2.4のレンズを組み合わせ、光学手ぶれ補正にも対応する。

 プレゼンテーションではスクリーンにiPhone 8とiPhone 8 Plusで撮影した写真が投影されたが、いずれも非常に自然な色合いで、被写体を自然に写しているという印象だ。iPhone 8 Plusのデュアルカメラによる作例では、人物にフォーカスを合わせ、自然な色合いで仕上げながら、背景をぼかした写真に仕上げられていた。

 そして、iPhone 8 Plusのカメラ機能では、新しい取り組みとして、ポートレート撮影時のライティング(照明)をカスタマイズする機能が追加されている。スタジオで撮影したようなライティング、輪郭を際立たせるライティングなど、複数の設定を選んで撮影することができる。

 ビデオについてはA11 BIONICチップにアップルがデザインしたビデオエンハンサーが搭載され、より高いフレームレートでの撮影を可能にし、リアルタイムでの映像解析も実現。これにより、4K 60fpsでのビデオ撮影を可能にしている。

 カメラの新しい用途のひとつであるAR(拡張現実)にも対応する。iPhone 8 PlusはARのためのカメラキャリブレーションが行なわれ、新しいジャイロセンサーとモーショントラッキングにより、より正確なARの環境が実現される。こうしたAR環境は、A11 BIONICチップに搭載されたCPUによるワールドトラッキング、GPUによるリアルなグラフィックのレンダリング、ISPによるリアルタイムのライティングによって可能になる。

 たとえば、現実世界の広場にロボットを出現させたり、野球のスタジアムではどこにどの選手がいるのかをポップアップで表示させたり、星座アプリでは晴れた昼間の空でもどこにどの星座があるのかを重ねて表示することができる。

新たに搭載されたPortrait Lightingモードではさまざまな照明の効果を加えることが可能
AR(拡張現実)では現実の世界にこんなロボットを出現させることができる。
ARの技術をスポーツ観戦に活かし、どこにどの選手が居るのかをポップアップのような形で表示できる

 充電環境として、Qi(チー)準拠のワイヤレス充電に対応する。iPhoneも、カフェやレストラン、空港、クルマの中など、さまざまな環境において、端末を置くだけで充電できるようになる。Qi対応のワイヤレスチャージャーについては、すでに多くのメーカーが対応製品を販売しており、アップルのストアでも販売していくという。

 最後に、価格については、iPhone 8が699ドルから、iPhone 8 Plusが799ドルからで、いずれも64GBと256GBのモデルがラインアップされる。予約開始は9月15日からで、販売は9月22日からになる。また、iPhone 8/8 PlusにプリインストールされるiOS 11については、9月19日から順次、対象モデル向けに配信される予定だ。

iPhone 8は3色がラインアップされ、価格は699ドルから
iPhone 8 Plusも3色がラインアップされ、価格は799ドルから

未来のスマートフォンを指し示す「iPhone X」

 ステージには再びティム・クックCEOが登壇し、スクリーンにはスティーブ・ジョブズのおなじみのセリフ「One more thing……」が映し出されると、会場からは大きな歓声があがる。

故 スティーブ・ジョブズCEOのおなじみの言葉が……

 その歓声を受け、ティム・クックCEOは「この言葉は簡単に使う言葉ではないと思うのですが……」と前置きしたうえで、「何年もの時間をかけて、開発を進めてきた」「スマートフォンの将来、これからの10年を反映するような新たな製品です」と語り、「iPhone X(テン)」を発表した。iPhone Xのムービーが流れた後、ティム・クックCEOは「初代のiPhoneからもっとも大きな飛躍を遂げたiPhoneです」と話し、プレゼンテーションを再びフィル・シラー氏にバトンタッチした。

スマートフォンの将来を指し示す「iPhone X(テン)」を発表

 フィル・シラー氏はスクリーンに投影された本体を指しながら、「とてもきれいな大型のディスプレイは、本体のエッジからエッジまでを覆い、各コーナーもきれいな曲線でデザインされています」と紹介する。

 iPhone Xは本体の前面と背面をiPhone 8と同じ高耐久性のガラスで使い、側面のバンド(フレーム)部分は医療機器グレードのステンレススチールを採用しており、ガラスとステンレススチールのつなぎ目をシームレスに美しく仕上げている。ボディは防水防塵に対応し、カラーバリエーションはスペースグレーとシルバーが用意される。

 ディスプレイはこれまでのiPhoneで採用されてきたRetinaディスプレイを上回る「Super Retinaディスプレイ」を採用する。対角サイズは5.8インチで、解像度は2436×1125ピクセルとなり、これまでのiPhoneで最高の458ppiを実現している。これだけ大きなディスプレイを搭載しながら、非常に持ちやすいボディサイズにまとめられており、手にすっぽりと収まる大きさとなっている。

 このSuper Retinaディスプレイは、iPhone初となるOLED(有機EL)を採用したものになる。一般的な有機ELディスプレイは高コントラストやバックライトがないことによる薄さなどのアドバンテージがある一方、他のディスプレイと比較して、明るさや幅広い色域のサポート、色の正確さなどが十分ではないとされてきたが、iPhone Xに搭載される有機ELディスプレイはこれらの課題をクリアしているという。Dolby VisionやHDR10規格のコンテンツに対応し、正確なカラーや100万:1の高コントラストも実現している。iPad ProやiPhone 8で採用されているTrueToneディスプレイにも対応し、3D Touchにも対応する。

本体前面のほとんどを覆うような有機ELディスプレイを搭載

 iPhone Xは本体前面のほぼすべてをディスプレイが覆っているため、本体前面にホームボタンが搭載されていない。そこで、本体を待機状態から起こすときは、ディスプレイをタップするだけで、簡単に画面をオンにできるようにしている。また、ロック画面からホーム画面に遷移するときも画面をスワイプするだけで、表示することが可能だ。アプリのアイコンをタップすれば、すぐに起動でき、再び画面をスワイプすれば、アプリを終了し、ホーム画面に戻ることができる。

 また、マルチタスクの操作については、画面下から中央部分へ向かって、スワイプして、中央付近で一瞬、指の動きを止めると、マルチタスクの切り替え画面が表示されるので、切り替えたいアプリの画面をタップすれば、すぐに切り替えることができる。Siriについては「Hey! Siri」と話しかけるほかに、側面のボタンを押して起動することも可能だ。

「Face ID」を採用

 アンロック(画面ロックの解除)については、初期のiPhoneでは画面内でスライドスイッチを操作していたが、iPhone 5sからは指紋認証センサーによるTouchIDが搭載され、より簡単かつ高速にロックを解除できるようにしていた。これに対し、iPhone XではユーザーがiPhone Xを見るだけで認識する、顔認証の「Face ID」を採用する。Face IDにより、スマートフォンに保存されているさまざまな情報を安全に守ることができる。

 このFace IDは、本体前面上部の小さなエリアに内蔵されている「TrueDepth Camera System」によって実現されている。この小さなエリアには、フロントカメラの他に、Face IDのためのシステムとして赤外線カメラや投光イルミネーター、ドットプロジェクターなどが搭載されており、これらを使い、ユーザーの顔を認識する。暗いところでは赤外線カメラを使い、3万カ所の顔の特徴点を認識し、その情報を端末のチップセット内で演算することで、登録されているユーザーかどうかをリアルタイムで判別するという。

 この機能を実現するため、アップルでは世界中の何千という人の、何十億という顔情報を集め、そこからニューラルネットワークを構築し、Face IDの技術を確立したという。このニューラルエンジンはアップルが初めて取り組むもので、A11 Bionic neural engineとして、チップセットに実装されている。このニューラルエンジンはデュアルコアのデザインで、毎秒6000億の処理が可能で、リアルタイム処理を行なうことができる。Face IDの登録は、顔を画面に向けて、上下左右に動かすだけで簡単に登録することが可能だ。

 また、このFace IDで登録された情報は、ユーザーの髪型の違いをはじめ、メガネやヒゲの有無、帽子を被っているか、昼間か、夜かといったことに影響されずに認識できるとしている。一般的な顔認証は、写真などで突破されてしまう場合があるが、Face IDは顔を立体的に捉えているため、写真では突破できないうえ、ハリウッドのフェイスマスクのメーカーが製作した本人そっくりのマスクなども活用しながら、顔情報を盗まれないように、開発を進めたという。Face IDで記録される顔の情報は、端末内のセキュアなエリアに格納され、サーバーなどには送られない仕様となっている。

 これまでのiPhoneに搭載されてきたTouch IDに比べ、安全性がどうなのかという点については、Touch IDは5万回に1回、正しくない認証を行なってしまうことがあるが、これに対し、Face IDは100万回に1回というレベルに抑えられており、より安全かつセキュアに使うことができる。Face IDはApple Payによる決済サービスなどにも利用できるほか、サードパーティのアプリが認証などに使うことも可能としている。

本体前面の上部にはさまざまなセンサーと共にTrueDepthカメラを搭載
ロック解除はiPhone Xが顔を認識するFace IDを採用
Face IDでは3万にも及ぶ顔の特徴点を認識して、判別する
Face IDの登録は専用画面で、上下左右に顔を動かして認識させる

 そして、このFace IDを実現するTrueDepthカメラは、認証以外の機能にも応用されている。そのひとつが絵文字を発展させた「アニ文字」だ。アニ文字は12種類のキャラクターによる、アニメーションが可能な絵文字のことで、その動きをユーザーの顔の動きによって、実現している。たとえば、ユーザーが口を開ければ、キャラクターも口を開け、首を傾ければ、同じようにキャラクターも首を傾ける。こうした顔や頭部の動きをキャラクターに連動させ、ユーザーの音声を録音して、相手にメッセージで送ることができる。

Face IDの特徴点を認識する技術を応用し、キャラクターを動かすことができるアニ文字。顔の表情だけでなく、頭の動きも連動する
同じように、顔認識で自分の顔にテクスチャーを貼り付けることも可能

 続いて、カメラについては、本体背面にはiPhone 8 Plusと同じように、12Mピクセルのデュアルカメラが搭載される。新開発のカラーフィルターを採用し、F1.8とF2.4のレンズを組み合わせているが、2つのカメラ共に、光学手ぶれ補正が搭載されており、手ぶれを抑えた写真を撮影できるようにしている。2つのカメラの間にはQuad LEDによるTrue Tone Flashが備えられている。

 インカメラについてはアウトカメラと同じように、ボケ味の利いた写真が撮影できるポートレートモードをサポートする。ポートレートライティングモードもサポートされており、多彩なポートレート写真を楽しむことが可能だ。

iPhone Xの背面には新開発の12MPイメージセンサーのデュアルカメラを搭載

 ハードウェアのスペックとしては、チップセットにA11 BIONICチップを搭載する。気になるバッテリーライフもiPhone 7に比べ、2時間も長く使うことができる。iPhone 8同様、ワイヤレス充電にも対応してする。AirPowerと呼ばれる新しい充電パッドを利用すれば、iPhone X本体だけでなく、AirPodsやApple Watch(いずれも対象機種のみ)もいっしょに充電することが可能だ。

 ストレージは64GBと256GBがラインアップされ、価格は999ドルからと発表された。10月27日から予約が開始され、11月3日から出荷が開始される。

iPhone Xの価格は999ドルから
今回発表されたiPhone X、iPhone 8、iPhone 8 Plusに加え、従来のiPhone 7、iPhone 6s、iPhone SEがそれぞれ併売される

ハンズオンで試した新製品

 プレゼンテーション終了後、Steve Jobs Theaterの展示スペースにおいて、発表された製品の内、iPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone X、Apple Watch Series 3のハンズオンが行なわれた。世界中から多数のパートナー企業やメディア関係者が来場していたため、実機を試すことができた時間は限られていたが、その印象をお伝えしよう。

 まず、iPhone 8とiPhone 8 Plusについては、正面から見た印象がiPhone 7やiPhone 7 Plusとほぼ同じであるため、一見、あまり変わらないような印象を受けてしまう。しかし、実際に端末を手に取ってみると、背面がガラスになったため、印象が異なる。手に直接触れる部分はなめらかで、非常に持ちやすく、手になじみやすい印象。カタログスペック上は両機種共に、従来モデルから重量が増えているが、これはワイヤレス充電に対応するため、背面側にコイルが内蔵されたことが影響していると考えられる。ただ、実際には十数g程度の違いで、普段はケースなどを装着して利用するユーザーが多いことから、それほど大きな違いはないという見方もできる。

 iPhone 7とiPhone 7 PlusではジェットブラックやPRODUCT REDなどの特徴的なカラーがラインアップされていたが、今回はゴールド、シルバー、スペースグレイというシンプルな3色構成で、いずれもガラスの効果もあってか、落ち着いた印象にまとめられている。

 カメラについてはポートレートモードが注目されるが、なかでも照明の雰囲気を変更できるポートレートライティングは視覚的にも変化が大きいため、人物の写真を撮ることが楽しくなりそうだ。

 ちなみに、完全な確定情報というわけではないが、今回、ハンズオンで試用していたところ、米国版のiPhone 8 Plusに、FeliCaを利用する「モバイルSuica」がインストールできるようになっていることが明らかになった。最終的には製品版で確認し、関係各社のアナウンスを待つ必要があるだろうが、訪日外国人がiPhone 8やiPhone 8 Plusで国内の決済サービスを利用するシーンを見かけることになるかもしれない。

iPhone 8 Plusの前面。正面から見ると、iPhone 7 Plusとほぼ同じ印象
左側面にはスイッチ、音量キーが並ぶ。従来モデルのレイアウトを継承している
右側面には電源ボタンとSIMトレイを備える
背面はガラスが貼られ、非常に美しい仕上がり。耐久性の高いガラスが採用されている
背面のデュアルカメラはわずかに突起する形状。この部分のデザインも基本的にはiPhone 7 Plusと共通
トップ部分には何も備えられていない。この角度で見ると、カメラ部の突起がよくわかる
底面はLightning端子を備える。従来同様、3.5mmのイヤホン端子はない
iPhone 8 Plus(左)とiPhone 7 Plusの前面。基本的にはほぼ同じ。
iPhone 8 Plus(左)とiPhone 7 Plusの背面。カメラなどのレイアウトは共通だが、ガラスが貼られたことで質感は大きく変わった
iPhone 8の前面。基本的にはiPhone 7のデザインを継承している
左側面にはスイッチ、音量キーが並ぶ。従来モデルのレイアウトを継承している
右側面には電源ボタンとSIMトレイを備える
背面はガラスが貼られたことで、光沢感のある美しい仕上がり。iPhone 8 Plusとは大きさだけでなく、カメラ部分が異なる
iPhone 8の先端部は何もないキレイな仕上がり。カメラの左側にはアンテナのためか、樹脂のつなぎ目が内蔵されている
底面はLightning端子を備える。3.5mmステレオイヤホン端子はない
iPhone 8(左)とiPhone 8 Plusの比較。
iPhone 8とiPhone 8 Plus、iPhone Xはワイヤレス充電に対応

 次に、注目のiPhone Xだが、こちらは有機ELの美しいディスプレイが目を引く。これまでも大画面ディスプレイや狭額縁の端末をいくつも見てきたが、それらとは異なる印象の仕上がりで、独特の存在感を持つ。発色やコントラストも非常に美しく、映像コンテンツを楽しむことが増えそうだ。ボディはiPhone 8とiPhone 8 Plusの中間的なサイズで、持ちやすく手にフィットする印象だ。

iPhone Xの本体前面。有機ELディスプレイが前面のほぼすべてを覆っている

 iPhone Xの機能面で注目されるのは、やはり、TrueDepthカメラだろう。Face IDについてはデモ機への登録が必要になるため、自分自身の顔で試すことはできなかったが、説明するスタッフが画面ロックを解除する流れを見たところ、端末と顔の距離感やアングルなども含め、非常に自然なスタイルでロックを解除できていた。虹彩認証を搭載する他のスマートフォンのように、端末と顔の位置関係を気にするようなことはあまりなさそうだ。

 TrueDepthカメラを利用した機能の内、もうひとつユニークなのがアニ文字だ。これはFace IDと違い、登録の必要がなく、ハンズオンでも試すことができたが、顔の動きに対するキャラクターの追従も非常に早く、かなり面白いという印象を持った。やり取りする環境がiOSのMessageアプリのみだったが、他の環境へも応用が拡がれば、一気にブレイクすることになるかもしれない。

 iPhone Xでひとつ気になるのはユーザビリティだろう。前述のように、iPhone Xはホームボタンを廃したことで、さまざまなユーザーインターフェイスが変更されている。

 たとえば、起動中のアプリからホーム画面に戻るにはスワイプしたり、タスク切り替えは下からスワイプして、中央付近で止めて表示したりするといった具合だ。コントロールセンターも、下方向からのスワイプが使えないため、画面右上のピクト付近から下方向にスワイプして表示する。iPhoneは異なる機種でも統一された操作方法が魅力であり、初心者にとっては何かあれば、ホームボタンで最初の画面に戻るというわかりやすさが評価されていたが、iPhone Xではそういったアドバンテージを切り離して使いはじめる必要がありそうだ。

左側面にはスイッチ、音量キーが並ぶ。レイアウトは他機種と共通だが、フレーム部分は光沢感のある仕上がり
右側面には電源ボタンとSIMトレイを備える
先端部は何もない美しい仕上がり
背面はガラスを貼り付けたデザイン。カメラはデュアルカメラだが、iPhone 8 Plusとは並びが異なる

 Apple Watch Series 3については、基本的に従来のApple Watch Series 2と同じ印象だが、GPS+Cellularモデルで発信などの操作を試してみたところ、思いのほか、小さな画面でも簡単に操作することができた。ダイヤルボタンで電話番号を入力することもできるが、基本的には着信に対応するシーンが中心で、連絡先に登録されている相手にときどき発信するくらいの使い方になりそうだ。ただ、通話はそのままだとスピーカーホンの状態になり、通話相手の声も周囲に聞こえてしまう。やはり、AirPodsやBluetoothヘッドセットを併用する方がスマートに使うことができそうだ。

Apple WatchのGPS+Cellularモデルには連絡先や履歴、キーパットを表示する画面が用意される。まさに電話

 最後に、今回のApple Special Eventの印象について、触れておきたい。

 アップルはこれまでもiPhoneをはじめ、同社製品の発表イベントを行なってきたが、冒頭でも触れたように、今回のイベントは同社の創業者である故 スティーブ・ジョブズCEOの名を冠したシアターを使った初のイベントであり、キャンパスの一部を望めるエリアのお披露目という意味合いも含まれていたため、社員をはじめとする関係者の並々ならぬ意気込みが感じられた。

 スマートフォンをはじめとするデジタルな製品は、さまざまな部品によって構成されるものだと考えられがちだが、それぞれの製品には開発やデザインに携わる人たちの意気込みや想いが込められており、今回のイベントではその一端もいっしょに感じ取ることができた。今回の発表を経て、これからアップルがどのように製品やサービスを生み出していくのかも含め、今後の展開が楽しみになってきたイベントと言えそうだ。

SoftBankオンラインショップ
iPhoneの情報をチェック