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「UQ mobile」でau顧客引き留め&他社ユーザー獲得、株主総会で語られたKDDIの戦略

KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏

 KDDIが21日に実施した株主総会にて、代表取締役社長の田中孝司氏ら同社経営陣が経営方針を説明した。国内通信市場の成長が限界を迎えるなか、海外進出や「au経済圏」の確立といった方針が紹介された。

「UQ mobile」と「J:COM mobile」で流出阻止・他社から獲得

 国内通信事業では、MVNOが新規参入で“格安スマホ”へのユーザー流出が続く中、KDDIグループのMVNO「UQ mobile」「J:COM mobile」「BIGLOBE」により他社ユーザーを獲得し、グループ全体での成長を目指す考えが明らかにされた。

 これに対し株主からは、昨年(2016年)8月の投資家向け説明会にて田中社長が「Y!mobileへのユーザーの流出が続いているが、UQ mobileに出て行ってくれれば痛みが少ないのではないか」と発言したことについて、その後の実績について問われた。

KDDI 代表取締役 執行役員 副社長 石川雄三氏

 副社長の石川雄三氏が質問に答え、「昨年8月以降、急激にUQの認知度が急激に上がって、大分リクープ(回収)できている。リクープだけだと増えないので、他社のお客さまに入っていただく取り組みを進めている」と回答。その上で、auユーザーの流出阻止と他社ユーザーの獲得について、「UQ mobile」と「J:COM mobile」という2つのMVNOを活用する方針を示した。

 また、MVNOの拡大戦略にいては、「KDDIグループのMVNOだけでなく、mineoやIIJといった他社にも拡大していくのか」という質問がなされた。田中氏は「mineoやIIJは当社のネットワークをお使いのMVNOだが、連結子会社のUQ、J:COM、BIGLOBEとはそもそも違う存在。ユーザー拡大戦略については、それぞれの事業者が独自に行っていく、ということで頑張っていただきたい」とコメントした。

3Gサービス「2020年終了とは発表していない」

 LTEへの移行を積極的に進めるKDDIだが、3Gの通信サービスも継続して提供している。この3Gサービスについて「インターネット上に2020年終了という噂があるが、実際はどうなのか」と問われた。

 田中氏は、「全体のトラフィックの中では3Gのトラフィックはかなり減っている」としつつも、「ご存じの通りまだまだ3Gのユーザーもいる。適切な時期を見て判断したい」と回答。「2020年終了」という噂については、「決して当社が発表したものではないのでご理解いただきたい」と否定した。

「ライフデザイン戦略」への疑問

 一方で、auブランドでは「ライフデザイン戦略」を掲げ、物販、金融、エネルギー、保険といった分野へ多角的に展開している。この多角化についてある株主は「通信分野とは関係がない事業展開ではないか」という疑問を呈した。

 田中氏は、「auの通信事業で蓄積した強力な顧客基盤やビッグデータ、決済プラットフォームをアセット(資産)として活用している」と答え、今後はIoT時代へとテクノロジーが進化していくことで、通信とライフデザインを掛け合わせた新たな価値を提供できるという見方を示した。

 一方、田中社長が「ライフデザイン戦略の中核を占めるサービス」としたショッピングサイト「Wowma!」については、株主から「auからのメールで案内が届いているが、メールだけでは浸透しないのでは」という指摘も。「au WALLET」についても、「コンビニで使おうとしたが使えなかった」という声もあり、個々のサービスについて認知度の向上が必要だという意見が目立った。

「シニアには説明が早口で聞き取りづらい」

 「ガラケーを使っていて、そろそろスマートフォンにしたいと思っている」と切り出したシニア世代の株主は、「ショップやサポートセンターの方は早口で聞き取りづらいので、もう少しゆっくりとしゃべっていただけたら」という要望も。

 別の株主の「スマートフォンを使い慣れていないシニア世代向けの浸透策はあるのか」という問いには、石川副社長はシニア向けの料金プランやスマートフォン「BASIO」、auスマートサポートといったサービスを紹介した。

「三太郎CM」は好評、過労死事件の電通に「出稿を取りやめたら?」という意見も

 KDDIが継続している「三太郎」のCMシリーズは複数の株主から「楽しい」といった感想があり、「今後4~5年続けていただきたい」という声もあった。

 一方でCMの代理店の電通が2016年に起こした過労死事件について、「ステークホルダーの社会的責任として1カ月、2カ月でもいいのでCMを停止しても良かったのでは」という意見も。田中氏は「テレビコマーシャルは電通さんにお願いしていますが、事件後は当局の調査もあり、しっかり対応していると認識している」と答えた。

株主優待の「au端末割引クーポン」は廃止

 今期より個人投資家向けの株主優待制度が改定され、au WALLET Marketの商品から選べるカタログギフトになった。前年まで提供されていたau携帯電話の割引クーポンは、総務省による是正指導を踏まえて、廃止とされた。

株主優待のカタログギフトと、株主総会参加者に配られたお土産(右)