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KDDIが2016年度の業績を上方修正、田中社長「ガイドラインの影響分はわからない」
2017年2月2日 20:14
KDDIは2月2日、2016年度第3四半期の業績を発表した。あわせて2016年度通期の業績予想を上方修正し、営業利益が250億円増えて9100億円になることも明らかにした。田中孝司代表取締役社長は、「250億円のうち、ガイドラインの影響分だけは分析しておらず抜き出しにくい」とコメントした。
第3四半期までの業績は、売上高が3兆5222億円(前年同期比6.8%増)、営業利益が7757億円(同15.4%増)だった。
ガイドラインで3社間の流動が減った
営業利益が増えた要因として、通信料収入と端末販売の奨励金削減が紹介される一方、「ガイドラインによるマイナスの影響は?」という質問に田中氏は「ガイドラインの影響がどれくらいあったかは算出しづらい」と回答。
これは定量的な分析を行っていないため、だそうだが、その一方で「ガイドラインが出てから何が起きているかというと、大手3社間で(ユーザーの乗り換えという)流動が止まりつつある」と説明する。
さらに田中氏は「(大手三社である)MNOから顧客流出が起きている要は販売に対する影響がある。販売奨励金で端末価格を下げて、その後の通信利用料でリカバーするモデルだったが、端末が売れないと奨励金が減る。お金を使わず250億に繋がっていったが、そのうち、ガイドラインの影響だけは抜き出しにくい」と補足する。その一方で、1年間で最大の商戦期とされる春商戦については、新たに導入する学割キャンペーンによって端末販売の増加になればいい、と期待感を示す。
「au STAR」で数百億円レベルの還元へ
2016年8月にスタートした会員制プログラム「au STAR」に関して、田中社長は「今期、50億円程度の還元だと思う」としつつ、2017年度については「数百億円レベルで還元していく」とする。
これは、au STARに加入するユーザーが増えれば増えるほど、還元総額が増えていくため。au STARでは、定期的に通信量やコンテンツがプレゼントされたり、長期契約者向けにau WALLETポイントがプレゼントされたりする。
新たに「モバイルID」導入、BIGLOBEはどうする?
コンテンツやサービスの利用動向を示す指標として、かねてよりKDDIでは回線契約数に加えて「au ID」という概念を導入していた。
今回の決算では、そうした指標に加えて、新たに「モバイルID」が追加されることになった。これは、auの契約数とUQ mobile、J:COM mobileの契約数を合算したもの。今後は、1月末をもって傘下に加わったBIGLOBEのMVNOサービスの契約数もモバイルIDに合算されることになる。第3四半期(2016年12月末)時点でのモバイルIDは2566万件で、2016年度は第1四半期の2574万件、第2四半期の2570万件から徐々に減少傾向にある。KDDIでは、auとMVNO合算で今後モバイルIDの成長を目指す方針。
成長にいたる根拠として、MVNO契約数が第3四半期だけで10万件の純増を獲得し、35.7万件になったことを挙げる。このうちJ:COMについては2月1日に累計契約数が10万件に達したことが明らかにされている。つまり残りの約25.7万件はUQ mobileの契約数と見られる。
今後はここにBIGLOBEのMVNOサービスが合算されることになるが、その大半はauの競合であるNTTドコモの回線を利用したものだ。その契約数は第3四半期時点で40万件に達している。田中社長は「第4四半期からBIGLOBEが入ってくる。(固定もあわせて)ユーザーとのタッチポイントが増え、あわせてauのライフデザインの商品(生命保険など)を販売してもらう。またネットワーク設備の効率化によるプラスの影響が今後期待できる」と説明。
囲み取材でも今後、BIGLOBEでau回線のMVNOサービスが販売される見込みである一方、ドコモ回線であってもKDDIグループとユーザーの接点であることに変わりないこと、ドコモの「dマガジン」の販売は継続することなどが明らかにされた。
au経済圏、流通額は8970億円に
au WALLETポイントやクレジットカードなど、「au経済圏」という構想を進める同社。その規模は流通額で説明されており、第1四半期の2660億円、第2四半期の5560億円から、第3四半期は8970億円と順調に増加していることが紹介された。
増加の要因としてau WALLETによる決済があったと語る田中社長は、au WALLETクレジットカードの発行枚数が200万枚、au WALLETプリペイドカードをあわせると2040万枚に達したことを明らかにする。その効果の一環として、通信回線だけを使うユーザーと比べて、au WALLETとauスマートバリューを使うユーザーの解約率は低く、囲い込みに繋がっているとアピールする。具体的な解約率の違いは明らかにされなかったが、au回線全体の解約率は今期、0.78%(前年同期0.91%)だった。
田中社長囲み取材一問一答
――モバイルIDにBIGLOBEを入れるとドコモの回線もカウントするということか。
田中氏
そうなる。IDはユーザーとのタッチポイントを示す指標。ケイ・オプティコムさんとは資本関係がないため、モバイルIDには含みません。WiMAXは含んでいませんが、連結子会社でモバイル事業をやっていて、MNOとMVNOのIDを足している。SIMを変えようが何しようが、タッチポイントがあることに変わりはないという考え方です。
――数十万規模のMVNO事業者を買収するとモバイルIDが増えるということに?
田中氏
それはそうですが、だからといって利益に寄与するかというとボトム(最終損益)の数字を見ていただければいいのであって。
――au IDの拡大にも繋がりますか?
田中氏
MVNOに加入された方がauに戻ってくださればいいのかもしれませんが、UQに行くかもしれない。BIGLOBEさんもこれからau回線を取り扱うことになると思いますが、そのあたりはこれからの話です。
――au経済圏の中で、あまりMVNO(ユーザー)は考慮していない?
田中氏
MVNOであっても通信だけでは(業績面で)厳しくて、セルアップしていくことが非常に重要。通信回線がどこであろうと、タッチポイントを持っていればセルアップできる。
――BIGLOBEはドコモの「dマガジン」の販売も行っているが、それを辞めさせて……。
田中氏
そんなこと、ぜんぜん思っていなくて(笑)。設備を作って設備を売るという通信事業から、お客さまとのタッチポイントを高めていろんな商売をしていくという発想の方向。ライフデザイン事業というのはそういうものなんです。
――BIGLOBEを通じてauのビデオパスなどを売ってほしいと考えていますか?
田中氏
(auのサービスを)売っていただければいいですし、ドコモさんのサービスを売り続けても別になんとも……。
――BIGLOBEだけではなくUQに対しても……。
田中氏
そうですね、そうですね、それはそうですね……(と言いながら、背広の内ポケットから、INFOBARから変形するトランスフォーマーを出してきて話題を変える)こんなん持ってきたんです。昨日、発表したらネットで結構話題になって(と言いつつ、ひとしきり報道陣に変形機構を実際に見せようとする)。
これね、光るんです。Bluetoothで。クラウドファンディング出したら希望が多くて。
――学割、始まりましたがどうですか?
田中氏
意外といい。結構制限があるので厳しいかと思ったけど少なくとも計画を上回っています。ただ、学割商戦が前倒しになったのか、うちの内容が良かったからなのかはまだわからない。一般的に学割は2月からで、まだ始まったばかり。社内的には結構いいかなと。親御さんも一緒に乗り換えています。
――他社も学割を始めています。ソフトバンクは追従し、ドコモは違う形です。
田中氏
他社さんの動向はわからないが、ソフトバンクさんは追いかけてくるだろう、ドコモさんはそうじゃないと思っていた。予想通りです。
――端末割引の新ガイドラインの影響は?
田中氏
端末の値段が上がるんでしょうね。決まったことを粛々やっていく、というしかないですね。
――端末代金を最初に割引して通信料で回収するモデルは、ガイドラインの影響を踏まえて、新しい手法は?
田中氏
いわゆるレバレッジモデルで、影響は出るでしょう。いろんなところの蓋が閉まっていて自由度はないけど、スマートフォンや携帯電話がこれだけ拡がっているので、新たなことをやっていかないといけないと思っている。
――学割で料金システムにも相当手を入れたと思うが、キャンペーンだけで終わらせるのか。
田中氏
それは皆さんの応援次第。昔の「ダブル定額」っぽい雰囲気がありますよね(笑)。歴史は繰り返す……。
――auからUQへの乗り換えが進むと、ID数は維持しても売上は下がりますよね。
田中氏
明らかに月額料金が違うため、全てauという場合に比べると減収になる。そこは新たな差別化、商材で埋めていかないといけない。
――UQはMVNO事業へ注力する一方で、WiMAX事業との組み合わせについてはどうか。
田中氏
WiMAXも、(大手キャリアから)20GB、30GBというプランが出て、若干ルーターの販売は若干落ちている。ではどこまで落ちるのかというと、意外とそこまでではない。これは固定回線のように使う方が多いためではないかと考えている。