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LINEモバイルは脅威? イオンやOCN、BIGLOBE、mineoが語る

国内格安SIM市場、1000万契約に必要なことは?

 「LINEモバイル」の新規参入は脅威となるのか、MVNOのユーザー層を広げていく方策は――MMD研究所が開催したイベントで、MVNOのイオンモバイル、OCN モバイル ONE、BIGLOBE SIM、mineo(マイネオ)のサービス担当者が考えを披露した。

 登壇者は、イオンリテールの河野充宏氏(イオンモバイル)、NTTコミュニケーションズの岡本健太郎氏(OCN モバイル ONE)、ビッグローブの大谷雅己氏(BIGLOBE SIM)、ケイ・オプティコムの森隆規氏(mineo)。モデレーターはMMD研究所 所長の吉本浩司氏。

イオンリテールの河野充宏氏
NTTコミュニケーションズの岡本健太郎氏
ビッグローブの大谷雅己氏
ケイ・オプティコムの森隆規氏

強力なサービスを持つ「LINEモバイル」は脅威となるか

 LINEが今夏、提供を開始するMVNOサービス「LINEモバイル」。月額500円~で、LINEやFacebook、Twitterのデータ通信料が無料と予告されている。

 MMD研究所の調査によると、スマートフォンユーザーに限れば、コミュニケーションアプリの「LINE」の利用率は全年齢層で80%超えるという。

 強力なライバルの登場だが、LINEの参入によりMVNO市場全体が盛り上がることから、4社は歓迎の意向。その上で、ビッグローブの大谷氏は、どのように差別化していくが重要と指摘する。

 OCNの岡本氏は、LINEモバイルの認知率調査に「ショックを受けた」と話した。LINEモバイルというサービス自体の認知率は3割で、興味があると答えたユーザーはその中の更に3割。強力なブランド力を持つLINEにしてもユーザーの関心度が低いことについて「MVNO市場の縮図があらわれている」と語った。

「格安SIM」1000万契約に向けて、ユーザー層をどう拡大していく?

MMD研究所 所長の吉本 浩司氏

 MMD研究所の吉本所長は、継続的に実施しているアンケート調査の結果に基づいて、2016年のMVNO市場の現状を紹介した。

 総務省が6月に発表した四半期調査では、SIMカード型のMVNOサービスは651万回線とされる。大手キャリアの「キャッシュバック販売」が息を潜め、SIMロックフリーのスマートフォンが注目されるなど、市場環境が変化しつつある2016年の上半期。「格安SIM」に対する認識にも変化が起きつつある。

 MMD研究所が実施した2016年5月に実施した意識調査によると、「格安SIM」というジャンルを知っているだけでなく、OCN モバイル ONEやmineoといった個別のサービス名称を知っていると答えたユーザーが、前年の37.3%から45.7%に拡大している。一方で、サービスについて知っていると答えたユーザーは1.2%程度の増加にとどまる。吉本氏は、次の課題はサービスの名を知ってもらうことではなく、サービス内容を知ってもらうことだと強調した。

 吉本氏は、市場シェアが順調に拡大し、市場全体で1000万契約も視野に入ってきていると説明。今後各サービスがシェアを伸ばすには、認知拡大ではなく、複数のサービスを検討する段階のユーザーに自社のサービスを訴求する必要があると語った。

 これに対し、イオンモバイルの河野氏は、端末自体のラインナップを強化する必要があるとし、特にシニア層には大手キャリアが販売しているようなシニア向けスマートフォンのような端末が必要だと述べた。また、「日本人の半数が利用しているiPhoneを、MVNOでも扱えるような業界が一体となった働きかけも必要だ」と話した。

 OCNの岡本氏は、お得感が見えるような取り組みが必要として、通信料が2カ月無料になるキャンペーンなど、契約の最後の一押しとなる仕掛けを強化していく方針を示した。

 ビッグローブの大谷氏は、通信品質の向上、MNPなどの手続きの手軽さ、iPhoneの取り扱いの3点を挙げ、同社の取り組みを紹介した。

 mineoの森氏は、「格安スマホと思われているうちは、サービスが伸びても限界がある」とし、大手キャリアにはできない小回りの効いたサービスを展開していく方向性を強調した。

市場調査結果から見る「格安SIM」の現状

 2016年の調査では、スマートフォンの所有率は約65%で拡大が鈍化している。高年齢層が中心のフィーチャーフォンユーザーがどこまでスマートフォンに移行するかが、今後のMVNOの普及に影響していく。

 2016年の1月と5月に実施された調査の比較では、比較的少なかった10代男性と20~30代の女性が顕著に増加している。その分、大きなウエイトを占めていた40代男性の比率が低下している。

 直近では、メインの回線として格安SIMを契約するユーザーも増加。2016年契約のユーザーでは、音声通話付きSIMが選択する割合が増え、データ通信専用SIMに2倍の差をつけている。

 格安SIMカードでは8割がスマートフォンで利用されており、そのうちの22%がiPhoneシリーズだ。次いで2位が16.5%のXperiaシリーズで、SIMロックフリー端末で積極的に展開しているZenFoneシリーズは3位で、13.4%となっている。

 格安SIMサービスのブランド別シェアでは、OCN モバイル ONE、楽天モバイル、IIJmio、mineo、BIGLOBEの順となっている。

 格安SIMを契約したユーザーが直前に使っていたキャリアは、今年の調査ではNTTドコモが最多となったが、Y!mobileや格安SIMから格安SIMへの乗り換えというケースも増加している。

イオンモバイル、OCN モバイル ONE、BIGLOBE SIM、mineoの取り組み

 イオンモバイルは、イオンリテールが2016年2月にサービスを開始したMVNO。流通大手イオンの全国213店舗に窓口を構える実店舗展開が強みだ。

 イオンの店頭でサービスを料金プランの説明や修理対応、契約変更を受け付けているだけあり、ユーザーの3割が50代以上という、シニア層に強い格安SIMブランドとなっている。

 OCN モバイル ONEは、NTTコミュニケーションズが2013年に開始したサービス。日次で通信容量を設定したコースを提供しているのが特徴。

 端末の取り扱いは行っていないが、パートナー各社の端末に同梱する商品としてSIMカードを提供しており、OCN モバイル ONE契約者は新品のスマートフォン購入を契機に契約するユーザーがもっとも多いという。

 オンライン販売が中心としているが、2016年には量販店での展開も加速し、全国122店舗にSIMカードの即日受渡カウンターを設置している。

 ビッグローブが提供するBIGLOBE SIMは、大容量も選べるプランや、データ容量を共有できるシェアSIMを提供している。大容量プランを選択する契約者が多く、動画配信サービスなども積極的に利用されている傾向にあるという。

 グループのポイント交換サイト「Gポイント」を活用し、AppleオンラインストアでiPhoneを購入したユーザー向けのキャンペーンを展開している。27日には、他社で購入した端末も対象の持ち込み保証サービスの提供を開始した。新規ユーザーだけでなく、既存のユーザーも申し込み可能で、BIGLOBEが登録している機種であれば、中古購入でも利用できる。

 ケイ・オプティコムが運営するmineoは、自社でコミュティサービスを運営し、ユーザーの声をサービス展開に積極的に取り入れる、他のサービスとは若干異なるアプローチが特徴だ。

 現状はオンライン販売が中心だが、既存ユーザーからの口コミがきっかけとして20代男性や女性ユーザーも増加しているという。今後はトライアル中の優先通信オプション「プレミアムコース」の提供や、渋谷へのアンテナショップ2号店の出店を予定している。